『生誕100年 清水九兵衞/六兵衞』 千葉市美術館

千葉市美術館
『生誕100年 清水九兵衞/六兵衞』
2022/4/13~7/3



千葉市美術館で開催中の『生誕100年 清水九兵衞/六兵衞』を見てきました。

1922年に生まれた清水(幼名は廣。後に洋、裕詞)は、元は陶芸の道を歩むも、1966年に彫刻作品を発表すると、彫刻家としても精力的に活動しました。

その清水の立体造形作家としての生涯を振り返るのが『生誕100年 清水九兵衞/六兵衞』で、会場には陶芸と彫刻作品を中心に、自ら撮影した写真や彫刻制作のための図案やマケット、約180件の作品が展示されていました。

まず冒頭は清水が洋と名乗っていた頃の初期の陶芸で、モダンな『白釉カップ&ソーサー』や幾何学的な造形を見せた『花器』、はたまたフォンタナとの関連も指摘される切れ目の入った『切容壺』などに魅せられました。

清水は戦争からの復員後、東京藝術大学工芸科鋳金部などで学び、1951年に京焼を代表する六代清水六兵衞の養嗣子となると陶芸の道へと進むと、1950 年代から60年代にかけては、日展にて特選を受賞するなどして評価を得ました。


清水九兵衞『FIGURE I』 1984年 愛知県美術館

一方で清水はものや空間に対する関心を高めると、1968年には「九兵衞」を名乗っては、彫刻家として活動するようになりました。そして清水が一貫して用いた素材がアルミニウムで、パイプ状のオブジェが機関のように並ぶ彫刻などを制作しました。

この彫刻の代表的なシリーズとして知られるのが『AFFINITY』で、いずれもアルミニウムを素材とし、工場のコンビナートをイメージさせるメカニズム的な作品を作り出していきました。


清水九兵衞『FIGURE 15』 1988年 大阪府20世紀美術コレクション

一連の抽象彫刻は、清水が拠点として関西だけでなく、全国各地にパブリック・アートとして展開していて、会場ではいくつかの野外彫刻をモニターや図面にて紹介していました。千葉県内としてはDIC川村記念美術館に設置された『朱甲面』もよく知られているかもしれません。


清水九兵衞『FIGURE E』 1989年 大阪府20世紀美術コレクション

また1984年から発表された『FIGURE』シリーズなど、あたかも鳥居の色を連想させるような、耐候性を目的に朱色に着彩された彫刻も目立っていました。


清水九兵衞『PACK 13』 1997年 個人蔵

1980年に六代六兵衞の急逝を受けて七代六兵衞を襲名した清水は、土の素材やゆがみなどを意図的に用いた作陶を手がけるつつも、彫刻家としての経験を盛り込み、最晩年のクリスタスガラスの作品群といった新たな造形世界を展開していきました。


清水九兵衞『京空間 A B』 1994年 大阪府20世紀美術コレクション

ラストを飾るのは、1994年に清水がフジテレビギャラリーでの個展にて発表した大作の『京空間』のシリーズで、3点のうち2点の彫刻が展示されていました。


清水九兵衞『京空間B』 1994年 大阪府20世紀美術コレクション

これは京都に見られる狭い路地た町屋の坪庭への関心から名付けられたもので、壁のような平板のアルミや半円筒、また曲面などからなり、建築的とも呼べるような空間を築き上げていました。鑑賞者が入り込むことで景色が大きく変化するような、インスタレーションとしても面白いかもしれません。


清水九兵衞『CORRESPOND』 2000年 岐阜県現代陶芸美術館

洋、それに裕詞といった九兵衞以前の陶芸作品、および九兵衞としての彫刻作品、さらには七代六兵衞としての陶芸作品など、名前を変えていくごとに変化する作風も興味深いのではないでしょうか。



また清水がヨーロッパ旅行などで撮影した写真も魅惑的で、そこからは住宅などの建築への関心も垣間見られるような気がしました。


さや堂ホール展示風景

1階のさや堂ホールにて行われている関連展示『清水宏章 朱』においても、清水九兵衞の孫で陶芸作家の清水宏章の作品とともに、九兵衞の彫刻もあわせて展示されていました。



ネオ・ルネサンス様式の重厚な空間にて展開した、2人の清水の作品の響き合いも見どころと言えそうです。*『清水宏章 朱』は5月19日まで。



さや堂の展示、および会場内の後半の展示室のみ撮影が可能でした。


7月3日まで開催されています。

『生誕100年 清水九兵衞/六兵衞』 千葉市美術館@ccma_jp
会期:2022年4月13日(水)~7月3日(日)
休室:5月2日(月)、5月23日(月)、6月6日(月)、6月20日(月)。
時間:10:00~18:00。
 *入場受付は閉館の30分前まで
 *毎週金・土曜は20時まで開館。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
 *常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
 *ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は共通チケットが半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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