東京国立博物館にて『特別展「琉球」』が開催されています

今年復帰50年を迎え、琉球と沖縄の文化を紹介する『特別展「琉球」』が、東京国立博物館にて行われています。



『特別展「琉球」』の見どころについてWEBメディア「イロハニアート」へ寄稿しました。

海に囲まれた沖縄の豊かな文化と未来へつなぐ取り組み。『特別展「琉球」』 | イロハニアート

まず充実しているのは、琉球王国の活況を伝える記録や交易でもたらされた品々などで、とりわけ首里城の聖域とされる京の内より出土した中国の元時代の陶磁器に目を引かれました。

これに続くのが、琉球を長く治めた国王尚氏に由来する宝物や書画の展示で、王府の祭祀儀礼に使われた漆器や色とりどりのガラス小玉を麻糸で綴ってかぶせた『御玉貫』と呼ばれる酒器などに心を奪われました。



また琉球を代表する紅型も数多く出展されていて、赤から黄色、さらに青系統と色とりどりの紋様が広がるすがたを見ることができました。



ハイライトと言えるのが、尚家に伝わる宝物のうち、2006年に一括して国宝に指定された「尚家宝物」と呼ばれる一連の文化財でした。ここでは王家のみが着用が許された黄色の紅型、また螺鈿を施した刀剣、さらにる東道盆と呼ばれる蓋つきの容器などが並んでいて、琉球の高い美意識と工芸技術を伺うことができました。



琉球列島の先史文化や、島々に暮らす人々の信仰についても見るべき点が多いかもしれません。いわゆる「貝の文化」における貝を用いた道具のほか、島に根ざした独自の信仰のあり方についても資料を交えて紹介していました。



さて今回の琉球展で特に印象に深かったのは、失われた文化財を復元する取り組みについてでした。琉球はいわゆる明治の近代化において沖縄となりましたが、その際も古来の文化や風習は日本と異なるとして、変えるべきものと位置付けられることがありました。

そして第二次世界大戦においては凄惨な地上戦が行われると、実に当時の人口の4人に1人とも言われる12万名の県民が亡くなっただけでなく、首里城をはじめとする多くの文化財が失われました。

戦争で破壊された文化財は生き残った人々によって拾い集められ、残欠として沖縄県立博物館・美術館の収蔵庫に保管されてきましたが、2015年度から「琉球王国文化遺産集積・再興事業」として約65件の文化財復元模造製作が行われました。


そうした復元模造された文化財、および損傷した文化財なども公開されていて、琉球や沖縄の文化を未来につなげる取り組みについて知ることができました。戦争で失われた文化財の数を考えれば、まだまだ少ないかもしれませんが、今後も継続していくためにも重要な試みといえるのではないでしょうか。



なお会期中、第2会場の「国宝 尚家宝物コーナー」の撮影が可能です。(本エントリ掲載写真も撮影OKコーナーより)



事前予約は不要です。6月26日まで開催されています。なお東京での展示を終えると、九州国立博物館(2022年7月16日~9月4日)へと巡回します。

『沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」』@ryukyu2022) 東京国立博物館 平成館(@TNM_PR
会期:2022年5月3日(火) ~ 2022年6月26日(日)
休館:月曜日
時間:9:30~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般2100円、大学生1300円、高校生900円、中学生以下無料。
 *当日に限り総合文化展も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR線上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分。
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