hokutoのきまぐれ散歩

ブログも12年目、4000日に到達。ネタ探しはきついけどまだまだ毎日更新を続けるつもりです。

白木蓮と辛夷

2021-03-16 05:00:00 | 日記
コロナ禍であっても春は確実にやって来る。正月を過ぎるとウメの花がほころび、ウメが終わるとオカメザクラや緋寒桜などが一斉に花をつけ始める。

次に咲く花はというとソメイヨシノと行ってしまいがちだが、その前に久我山ではハクモクレン(白木蓮)とコブシ(辛夷)が咲き誇っている。両方ともモクレン科の樹木だが、そのためか、区別がつきにくい。それではトップに置いた花はどちらかわかりますか?

(ハクモクレン)
花の色はいずれも純白、さらに葉が出る前に花が咲き、木全体を花が覆う、咲く時期もほぼ同じ(同じモクレン科の紫木蓮は少し遅い)ため、中々区別がしづらい。



(ハクモクレン)

町を歩いていてどちらかわからない時に思い出して頂きたいのが3つのポイントである。①花の向き・ハクモクレンは上に向いて咲くが、コブシはさまざま、前を向いて咲くことが多い、②花弁のつき方・ハクモクレンは花の根元がチューリップのようにまとまっているが、コブシは花弁の切れ込みが深く、雄蕊や雌蕊が見える。



(コブシ)

③花弁の厚さ・ハクモクレンは厚みのある乳白色に近い花弁に対し、コブシは薄く、風が吹いている時はひらひらと揺れる。また、花弁の枚数はハクモクレンが9枚(うち3枚は萼だが、花弁のように見える)に対し、コブシは6枚である。


(コブシ)

ところでコブシを漢字で書くと『辛夷』となるが、これは中国語でモクレンを表す。というのはモクレン族の蕾を乾燥させて作る生薬(鎮痛薬、鎮静薬、鼻づまり、花粉症などに薬効がある)の名前が辛夷(しんい)であるためで、日本原産のコブシは中国では日本辛夷と表記される。


(コブシ)


(ハクモクレン)

堀辰雄の小品に『辛夷の花』というのがある。奈良に向かう途中、中央本線の木曽川沿いの車窓から辛夷の花が見えたと小耳に挟んだ作者が車窓から花を探すが見つけられない。このことを本を読んでいたはずの妻に話すと『あら、ごらんにならなかったの』と言われ、さらに車窓から見るが、結果見ることができない。



(コブシ)

諦めて春最初に咲く真っ白な辛夷の花を心の中に思い描くという筋で堀辰雄の負け惜しみも含む心情が面白い作品である。私は辛夷と聞くと高校の教科書で読んだことを今になっても思い出してしまう。
コブシもハクモクレンもいずれの花も美しく、木全体に花のみが咲くためか鮮やかで足を思わず止めてしまう。



(紫木蓮)
☆ちなみに最初の写メはコブシです。