三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「貞子DX」

2022年11月03日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「貞子DX」を観た。
 映画『貞子DX』公式サイト|大ヒット上映中

映画『貞子DX』公式サイト|大ヒット上映中

世界を震撼させた最恐ホラー最新作 主演:小芝風花×監督:木村ひさし シリーズ新機軸できっと来る―。

映画『貞子DX』公式サイト|大ヒット上映中

 作品としては全体的にチープでストーリーはグダグダだが、そんな中で主演の小芝風花がひとり気を吐いていた。
 IQ200は必ずしも科学を盲信することにはならない。むしろIQ200という設定が本作品をつまらなくした原因のひとつだ。それに耳の横で手のひらを動かす謎のルーティンもあまり意味がない。自称占い師の若者が鼻をこする動きも同様。こういう無駄なシーンを入れるくらいなら、主人公文華の人となりがもっと分かるシーンを入れたほうがよかった。
 食べるシーンで意味があったのは、喫茶店でピーマンがたくさん入ったナポリタンをピーマンを避けて食べるシーンだけだ。自称占い師が「どんだけメンタル強いんだよ」という台詞に、そういえばそうだなと感心した。
 何かにぶつかりそうになったり、突然誰かが目の前に現れるたびにビビっている文華だが、貞子の呪いに関してはまったく動じない。ジタバタするのではなく、ひたすら考える。全編を通じて少しも怖くないが、主人公のメンタルの強さに感化されて、観ているこちらもメンタルが強くなりそうな作品である。

 小芝風花はCMで見るだけで、何がいいのかちっともわからなかったが、本作品では声といい、キリッとした演技といい、彼女のポテンシャルが存分に発揮されているように思えた。作品に恵まれさえすれば、もっといい演技をしそうな予感がする。

映画「アムステルダム」

2022年11月03日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「アムステルダム」を観た。
アムステルダム|映画|20世紀スタジオ公式

アムステルダム|映画|20世紀スタジオ公式

『アムステルダム』公式サイト。本年度アカデミー賞有力候補!デヴィッド・O・ラッセル監督×豪華キャストが贈る、ほぼ実話!世界の歴史を変えた衝撃的な陰謀とは?|映画の...

20th Century Studios JP

 エラリー・クイーンのミステリーのような作品であるが、いくつか予備知識がないと解りにくいシーンがあった。以下、当方が気づいた事例を挙げておく。

 クリスチャン・ベールの演じた主人公バート・ベレンセンが妻ベアトリスと読んだと発言するエミリ・ディキンスンは19世紀のアメリカの天才詩人で、映画「静かなる情熱 エミリ・ディキンスン」でその生涯が描かれている。生と死、人生の瞬間を、美しい言葉で切り取って見せた稀有の女性だ。
 イギリスのスパイたちがカッコウが托卵することを非難するシーンがある。カッコウの雌は他の鳥の巣に素早く卵を産み付ける。そして鷹の鳴き真似をして、怖がらせて、他人の卵だと気づきにくくする。映画「ビバリウム」でも登場人物を怖がらせるシーンがある。
 フランクリン・ルーズベルトは史上最長の在任期間の米大統領で、第二次世界大戦に対しては、最初は不参戦の立場であった。本作品でラミ・マレックの演じた財界のフィクサーであるトム・ヴォーズがルーズベルトを忌み嫌ったのはそのためだ。代わりに参戦してくれる人間を大統領に就けようとした。

 戦争は人間の強欲と不寛容が引き起こすものだ。その元凶となるのが、ロバート・デ・ニーロの演じる将軍が演説の中で非難する「ひとりの人間の命よりも国家が大事と考える者たち」である。日本で言えばアベシンゾーとその一派みたいな人間たちである。そしてそういう人間たちをうまく使って一儲けしようとするのが軍需産業だ。軍需産業のおこぼれに群がるのがマスコミの人間たちである。原子力ムラみたいな強欲集団だ。映画は、こういう人間たちではなく、国家でなくひとりの人間の命を大事にする人間が国を統べるようにならなければ戦争はなくならないと、暗に主張している。アメリカだけの話ではない。

 ロバート・デ・ニーロは流石の存在感で、マーゴット・ロビーの美しさはとても際立っていたが、本作品の一番の立役者はやはりクリスチャン・ベールである。主演とモノローグの両方を担当し、ミステリーを見事に収めてみせた。

 ケッサクだったのは主人公の友人のハロルドの初登場のシーンだ。クリスチャン・ベールに向かって「ハイ、バート」と呼びかける声がセサミストリートのアーニーが「ハイ、バート」と言うのにそっくりで、思わず吹き出しそうになってしまった。

映画「ウンチク/うんこが地球を救う」

2022年11月03日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「ウンチク/うんこが地球を救う」を観た。
映画『ウンチク/うんこが地球を救う』公式サイト

映画『ウンチク/うんこが地球を救う』公式サイト

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 話があちこち飛んでいるかのような構成だが、鑑賞後に振り返ると、実によく纏まっていることが解る。
 最初にグロスの話をする。人間が一年間に排泄する糞(ふん)の重さ。各動物のそれ。全部のトータル。そこに時間軸が加わって、排泄される糞の総量が膨大であることを説明する。
 それから人間の生活。トイレの歴史が200年しかないこと。糞に含まれる病原菌による疫病の蔓延。トイレと下水処理の向上で衛生環境が飛躍的によくなったこと。そういえば、日本でも田中角栄の日本列島改造で上下水道が整備されて、寿命が大幅に伸びた事例がある。しかし世界ではまだ、衛生的なトイレに恵まれない人が47億人もいることも示されている。
 最後が糞の様々な利用法の紹介だ。医者たちの話では、糞にはその人間の健康状態の情報のほぼすべてがあるらしい。自分の糞や親の糞を食べる動物はたくさんいるし、他人の糞を体内に注射して腸内環境を整えるという技術もある。
 糞をエネルギーに変える。糞から貴金属を取り出す。糞を原料にした紙を漉く。ビル・ゲイツは排泄物から飲料水を作る技術の開発をしていて、テレビの司会者と一緒にゴクゴク飲んでいた。マット・デイモンが主演した映画「The Martian」(邦題「オデッセイ」)では、火星にひとりで取り残された主人公が自分の糞尿を最大限に利用して生き延びる。

 とはいえ、糞は病原菌を大量に内包しているし、悪臭を放つものでもあるから、取り扱いには装備や設備が不可欠だ。ビル・ゲイツみたいな金持ちを除けば、共同体の予算規模で行なう必要がある。衛生環境を壊さないで、糞尿を最大限に利用する。そこに思い切って税金をたくさん投入するのだ。未来に希望が持てるような気になる作品である。