三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「サイレント・ナイト」

2022年11月26日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「サイレント・ナイト」を観た。
映画『サイレント・ナイト』公式サイト

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映画『サイレント・ナイト』11/18(金)公開。主演:キーラ・ナイトレイ 出演:ローマン・グリフィン・デイヴィス、マシュー・グード、アナベル・ウォーリス、リリー・ロー...

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 不思議な設定だ。人間には正常性バイアスがあって、自分だけは大丈夫だと思いがちである。しかも登場人物は「ダイアナ妃を殺した」政府をまったく信じていない。にもかかわらず、登場人物の誰もが政府の発表を信じて、得体のしれない毒ガスで死ぬと思っている。マスコミとネットを使ったプロパガンダ恐るべしだ。

 感心したのは、長男のアート君の発言が示唆に富んでいたことだ。「ピル」が貧乏人や移民には配布されないことに疑問をいだいたり、大人たちや両親を簡単に論破したりする。
 序盤でアート君が人参を切っているときに手を怪我するのが最後のシーンの伏線になっている。血が出ている手で顔をこすれば、顔が血まみれに見えるのは当然だが、手の傷を唾をかけて直そうとした無教養な両親には、そのことが思い及ばない。
 この兄弟は頭がよくて、双子の弟たちも、このガスはロシアからではなく、地球に甘えすぎた人類がしっぺ返しを食らっているのだと、迫力のある説を披露する。本当に子供なのか。

 自殺薬の名前が「ピル」というのも皮肉だが、本作品の大人たちは、人類の滅亡が迫っているときにパーティで紛らわそうとして食べて飲んで踊る。かと思えば泣いたり喚いたり、言えなかった真実を暴露したりと、右往左往して混乱するみっともない姿を披露する。そんなシーンを連続させることで、人間そのものを皮肉っていると思う。イギリス人らしい皮肉だ。

 地球温暖化とコロナ禍で人類が危機に瀕しているこの時期に本作品が製作されたのは頷ける話だ。キーラ・ナイトレイをはじめ、俳優陣が、最後の夜を迎えた人間の恐怖と焦りと絶望と混乱を上手に楽しそうに演じていたのは、それぞれの想像力で演技していたからだろう。アドリブもたくさんあったに違いない。アメリカ人並みにFuckingを連発するのが面白かった。GoddamnとStupidが出てこなかったのが、逆にちょっと残念だった。