映画「チケット・トゥ・パラダイス」を観た。
ジョージ・クルーニーは監督作品を2本観た。2017年製作の映画「サバービコン」と2020年製作の映画「ミッドナイト・スカイ」の2本である。いずれも、現代社会に対する危機感が製作のモチーフとなっている。
クルーニーは難民問題やLGBTや差別などの問題解決や災害の被災者支援のために積極的に活動する人道主義者でもある。ブラッド・ピットやマット・デイモンもしばしば彼とともに活動する人道主義者である。マット・デイモンはシリアス演技中心だが、クルーニーとブラピはすっとぼけたコミカルな演技をすることが多い。いずれも好感の持てる俳優だ。
さて本作品では、クルーニーのコメディアンとしての才能が存分に発揮されている。演じたデイヴィッドが真面目な顔をして素っ頓狂なことをするのがいい。頭の回転が速くてエスプリの効いた役だ。クルーニーにぴったりである。
相手役のジュリア・ロバーツも好演だったが、娘役のケイトリン・ディーヴァーが小柄なだけに体格が違いすぎて母娘に見えなかったのがちょっと残念。
ストーリーは予告編を見ればおおよそ予測できるし、結末も大体の見当がつく。こういう作品はディテールをどれだけ面白くするかにかかっているが、本作品はクルーニーとロバーツの好演もあって、悪くなかったと思う。機内では面倒くさそうなおばちゃんを避けるためにイタリア人の振りをするが、テキトーなイタリアンがケッサクだ。当方も、見知らぬ人とのかかわりを避けるために中国人のふりをしてテキトーな中国語でまくし立てたことがあるが、相手が中国人で逆にまくし立て返されて難儀したことを思い出した。
バリ島に着いてからのひと悶着、若かりし頃の思い出が結末への伏線になっていることなど、よく作り込まれている。バリ島の風習を積極的に肯定するところもいい。平和は習慣と文化を認め合うところからはじまる。そんなクルーニーの哲学や覚悟がうまく生かされた、とても楽しい物語である。