映画「ザリガニの鳴くところ」を観た。
「言葉って深いのね」という言葉が口をついて出たときから、カイアの世界は大きく広がった。読み書きを教えたテイトはそれを聞いて「もう君は何でも読める」と大喜びするが、言い方を変えれば「これで世界は君のものだ」とも言えたかもしれない。
湿地で暮らすことでカイアは自然に生物への造詣が深くなり、言葉を覚えることで思索が深まって、生物が生きていることの本質を理解するようになる。そして出版社の人間にホタルの生態を説明しながら、生物は道徳と無関係に生きていると断言するまでになる。実はこのことが本作品のストーリーに大きく関係している。
湿地帯にひとりで暮らす少女という設定から、サバイバル術を身に着けた少女がスクエアな人々と対決するアクションものかと予想していたが、実際はロシア民謡の「山のロザリア」みたいに孤独な乙女が、訪れた若者に恋をする純愛物語を織り交ぜた、法廷が基本舞台のスリラーだった。導入からラストまで、中身の濃いストーリーで、否応なしに惹き込まれた。
そして終わってみると、物語全体が、カイアによる壮大なサバイバルであったことに気がつく。魔法のようなプロットだ。思わず唸ってしまった。見事である。
エンドロールのカロライナ〜♫という歌がとても心地のいい歌で、テイラー・スウィフトの声に似ていると思っていたら、クレジットの最後の方にその名前があった。流石だ。