○藤森照信、山口晃『探検!東京国立博物館』 淡交社 2015.12
東博のミュージアムショップで、何度か本書は見かけていたけれど、雑誌掲載時(『なごみ』2014年10月号)に読んだものだ、と思って、買い控えていた。そうしたら、先月、友人がこの本の「出版記念トークイベントとサイン会がありますよ!」と教えてくれた。東博のホームページを見たら、「出版記念トークイベント『藤森照信×山口 晃 探検! 東京国立博物館』反省会」(2016年5月29日、平成館・大講堂)という告知が、小さく地味に載っていた。
トークイベントは14:00開演で先着370名。書籍販売は13:30からで「先着100名にサイン会整理券配布」とある。何時に行けばいいだろう?と悩んだ末、私は11:00到着を目指して家を出た。そんなに早くから並ぶ人がいるのか?と疑っていたが、行ってみるとすでに50人ほどの列。友人が10:30頃から並んでいてくれたので、列の途中に入れてもらった。それから、もう一人の友人も合流して三人で待つ。整理券配らないのかね~という声があちこちから洩れていたが、淡交社のネーム入りジャンパーの係員は、列を整理したり人数を数えたりするばかり。列はどんどん伸びて、あっという前に100名は超過してしまった。13時頃には「370名に達しました」の貼り紙が出たようだ。
そして、ようやく前方から番号の入った「サイン会整理券」が配られ始めた。われわれ三人は33~35番をゲット。13時半から(サイン希望者への)書籍販売が始まり、講堂に入って座席をキープした。もうちょっと考えた運営をすればいいのに、と思ったが、若冲展のことを思うと何も言えない。
定刻になると、舞台の上手側に藤森先生、下手側に山口画伯が登場。さらに下手の演台前には淡交社の女性が立って、いちおう進行役の予定だったのかもしれないが、自由人の藤森先生、思いつくままに話題を決めていく。進行役の女性は、東博の所蔵品や建築の写真をたくさん用意していたようだが、ほとんど役に立っていなかった(笑)。山口さんの席のそばにはホワイトボードが置かれていて、即興で藤森先生の似顔絵を描いたり、美術品の見方を絵で説明してくれたりもした。「芸大出身ですから」と会場の笑いを取ったり、サービス精神旺盛で、ほんとにいい方。
一方の藤森先生は、相変わらず、全く空気を読まないのが素敵だった。「山口さん、若冲はどう?」と聞いて、画伯が「さっき、僕はああいう絵はちょっと、という会話を裏でしていたのに、それをここで聞きますかね…」と、しどろもどろになるところとか笑った。あと藤森先生が、子供の頃は全く美術品に興味がなかったという話から「小学生や中学生が仏像をうっとり眺めているようだったらヘンでしょ」と語っていたのに、質疑応答で最初に当てられた質問者が純朴な口調で「僕は中学生で、仏像が大好きなんですけど…」と発言をしたときは、会場中が爆笑で拍手。
トークイベント終了後は、再びサイン会整理券の順に並ばされて、舞台上のおふたりにサインをいただいた。画伯は黒のサインペンで「山愚痴屋」の下に赤のサインペンで花押(?)を入れてくれる。慣れたもので、二本のサインペンを片手に持って使っていらした。
その後、読んでみた本書の内容だが、けっこう当日のトークの内容と重なっていた。そして、意外と雑誌とは異なる、新しい内容が多いように感じた。奥付には、雑誌記事をもとに「加筆・写真を増補・再編集してまとめたもの」という注記がある。これは、あらためて購入して正解だったと思う。山口さんのマンガで笑ったのは「表慶館・屋根裏のひみつ」。ドームの屋根裏の写真と構造図解には感激したが、これ雑誌にはあったかなあ。記憶にない。藤森先生の茶室解説も勉強になる。閉鎖的な利休の茶室と、広がりのある遠州好みの茶室。
東博は「帝室博物館」として多くの美術品を蒐集したが、「茶の湯」関係は弱くて、実業家などの寄贈によって、ようやく充実してきた。つまり、われわれが見ている美術品には、「帝室博物館」のコレクション的なもの(正統性が強い)と「茶の湯」的なものがある、というのは、本書の内容ではなく、トークイベントで語られたこと。非常に面白かった。
サイン会のあとは、めったに寄らない「日本の考古」で、藤森先生おすすめの「家形埴輪」を見る。本書によると、埴輪の出現は、筒形→家形→器物→人物→動物の順だという。古代人は、そんなに「家」を作りたかったのかあ、面白いなあ。ついでに『平成27年度新収品展I』(2016年5月17日~5月29日)と特別公開『新発見!天正遣欧少年使節 伊東マンショの肖像』(2016年5月17日~7月10日)も見て帰った。
東博のミュージアムショップで、何度か本書は見かけていたけれど、雑誌掲載時(『なごみ』2014年10月号)に読んだものだ、と思って、買い控えていた。そうしたら、先月、友人がこの本の「出版記念トークイベントとサイン会がありますよ!」と教えてくれた。東博のホームページを見たら、「出版記念トークイベント『藤森照信×山口 晃 探検! 東京国立博物館』反省会」(2016年5月29日、平成館・大講堂)という告知が、小さく地味に載っていた。
トークイベントは14:00開演で先着370名。書籍販売は13:30からで「先着100名にサイン会整理券配布」とある。何時に行けばいいだろう?と悩んだ末、私は11:00到着を目指して家を出た。そんなに早くから並ぶ人がいるのか?と疑っていたが、行ってみるとすでに50人ほどの列。友人が10:30頃から並んでいてくれたので、列の途中に入れてもらった。それから、もう一人の友人も合流して三人で待つ。整理券配らないのかね~という声があちこちから洩れていたが、淡交社のネーム入りジャンパーの係員は、列を整理したり人数を数えたりするばかり。列はどんどん伸びて、あっという前に100名は超過してしまった。13時頃には「370名に達しました」の貼り紙が出たようだ。
そして、ようやく前方から番号の入った「サイン会整理券」が配られ始めた。われわれ三人は33~35番をゲット。13時半から(サイン希望者への)書籍販売が始まり、講堂に入って座席をキープした。もうちょっと考えた運営をすればいいのに、と思ったが、若冲展のことを思うと何も言えない。
定刻になると、舞台の上手側に藤森先生、下手側に山口画伯が登場。さらに下手の演台前には淡交社の女性が立って、いちおう進行役の予定だったのかもしれないが、自由人の藤森先生、思いつくままに話題を決めていく。進行役の女性は、東博の所蔵品や建築の写真をたくさん用意していたようだが、ほとんど役に立っていなかった(笑)。山口さんの席のそばにはホワイトボードが置かれていて、即興で藤森先生の似顔絵を描いたり、美術品の見方を絵で説明してくれたりもした。「芸大出身ですから」と会場の笑いを取ったり、サービス精神旺盛で、ほんとにいい方。
一方の藤森先生は、相変わらず、全く空気を読まないのが素敵だった。「山口さん、若冲はどう?」と聞いて、画伯が「さっき、僕はああいう絵はちょっと、という会話を裏でしていたのに、それをここで聞きますかね…」と、しどろもどろになるところとか笑った。あと藤森先生が、子供の頃は全く美術品に興味がなかったという話から「小学生や中学生が仏像をうっとり眺めているようだったらヘンでしょ」と語っていたのに、質疑応答で最初に当てられた質問者が純朴な口調で「僕は中学生で、仏像が大好きなんですけど…」と発言をしたときは、会場中が爆笑で拍手。
トークイベント終了後は、再びサイン会整理券の順に並ばされて、舞台上のおふたりにサインをいただいた。画伯は黒のサインペンで「山愚痴屋」の下に赤のサインペンで花押(?)を入れてくれる。慣れたもので、二本のサインペンを片手に持って使っていらした。
その後、読んでみた本書の内容だが、けっこう当日のトークの内容と重なっていた。そして、意外と雑誌とは異なる、新しい内容が多いように感じた。奥付には、雑誌記事をもとに「加筆・写真を増補・再編集してまとめたもの」という注記がある。これは、あらためて購入して正解だったと思う。山口さんのマンガで笑ったのは「表慶館・屋根裏のひみつ」。ドームの屋根裏の写真と構造図解には感激したが、これ雑誌にはあったかなあ。記憶にない。藤森先生の茶室解説も勉強になる。閉鎖的な利休の茶室と、広がりのある遠州好みの茶室。
東博は「帝室博物館」として多くの美術品を蒐集したが、「茶の湯」関係は弱くて、実業家などの寄贈によって、ようやく充実してきた。つまり、われわれが見ている美術品には、「帝室博物館」のコレクション的なもの(正統性が強い)と「茶の湯」的なものがある、というのは、本書の内容ではなく、トークイベントで語られたこと。非常に面白かった。
サイン会のあとは、めったに寄らない「日本の考古」で、藤森先生おすすめの「家形埴輪」を見る。本書によると、埴輪の出現は、筒形→家形→器物→人物→動物の順だという。古代人は、そんなに「家」を作りたかったのかあ、面白いなあ。ついでに『平成27年度新収品展I』(2016年5月17日~5月29日)と特別公開『新発見!天正遣欧少年使節 伊東マンショの肖像』(2016年5月17日~7月10日)も見て帰った。