○札幌市教育文化会館 『人形浄瑠璃2015 さっぽろ 人形浄瑠璃芝居あしり座二十周年記念公演』(2月22日、13:30~)
札幌で時々人形浄瑠璃のワークショップを開いている団体があることは、なんとなく気づいていたが、どうせ地方の素人集団だろうとタカをくくっていた。今回は20周年記念公演ということで、「新口村」など本格的な演目も混じっていたので、初めて見に行ってみた。
土日の2回公演の日曜日。大ホール(1,100席)の少なくとも1階席は完全な満席。北海道の人形浄瑠璃公演にこんなに人が集まるということにびっくりした。まずは『寿式三番叟』。前半は二人の三番叟が舞い、後半はもう三人が加わって、五人で舞う。人形遣いの下半身を隠す「手摺」がなくて、広い舞台を上手く使って舞う(五人が縦一列に並んだり)のが面白かった。舞台の奥に太夫さんと三味線、鳴り物がずらりと並んだ。人形遣いや音曲に女性の姿が混じるのも新鮮。
場面転換の間に、八王子車人形の西川古柳氏が幕前に出て、三人遣いの人形の遣い方についてレクチャー。それから、落語家・入船亭扇治氏が高座ならぬ床にあがり、『紺屋高尾』の一席。落語と人形芝居のコラボレーションである。最近、大阪でも似たようなことをやっていたが、これは悪くない試みだと思う。同じ語り物でも、落語のほうが浄瑠璃より、現代人にはずっと分かりやすい。ただ、私は(文楽)人形浄瑠璃に「江戸ことば」のミスマッチ感が、なかなか受け入れられなかった。でも本格的な落語を久しぶりに聞けたのは嬉しかった。主人公の久蔵の主遣い、若いのに上手かったなあ。
休憩をはさんで『傾城恋飛脚 新口村の段』。語りは竹本信乃太夫。ちょっと苦しそうだったけどよかった。1月に大阪で『冥途の飛脚』を見たばかりだったこともあって、じわじわ感動。言いたいことを言えない、内心と全く違うことを言葉にする、っていう芝居、日本人は好きだよねえ。三味線は鶴澤弥栄さん(女性)。お二人の前にはマイクが置かれていた。あれは録音用なのか、会場内に流すためなのか、よく分からなかったが、会場が広すぎたり、演者の調子が悪いときは、補助的に使ってもいいと思うな、文楽でも。
最後の『御祝儀 祝い唄』はオリジナルで、神楽のように四方を踏み固め、チャリ場のように笑いを取りながら、今日の会場、観客、あしり座、そして北海道と札幌の町を言祝ぐ。楽しかった。ううむ、私の愛する文楽人形浄瑠璃がさらなる活性化のために学ばなければならないのは、こういう手法なんじゃないかな。やっぱり大阪を言祝ぐ芸能であり続けないと。東京に寄り過ぎちゃ駄目なのかもしれない。
アンコールで、小・中・高校生の若いメンバー(ユースクラス、ジュニアチーム)が勢ぞろいしたのも素晴らしかった。子供時代に先入観なく古典の世界を体験した彼らから、ずっと人形芝居を続けていく者も生まれ、実演を離れても、観客として戻ってきてくれる者もいるという。それから『御祝儀 祝い唄』で太夫をつとめた田中碩人君は、4月から国立文楽劇場の研修生になることが決まっているそうだ。ええ!覚えておこう。応援するぞ。10年先、20年先に舞台で見ることができたら嬉しい。私も長生きしなくては。
※人形芸能、夢へ一歩 19歳田中さん(朝日新聞デジタル 2015/2/20)
札幌で時々人形浄瑠璃のワークショップを開いている団体があることは、なんとなく気づいていたが、どうせ地方の素人集団だろうとタカをくくっていた。今回は20周年記念公演ということで、「新口村」など本格的な演目も混じっていたので、初めて見に行ってみた。
土日の2回公演の日曜日。大ホール(1,100席)の少なくとも1階席は完全な満席。北海道の人形浄瑠璃公演にこんなに人が集まるということにびっくりした。まずは『寿式三番叟』。前半は二人の三番叟が舞い、後半はもう三人が加わって、五人で舞う。人形遣いの下半身を隠す「手摺」がなくて、広い舞台を上手く使って舞う(五人が縦一列に並んだり)のが面白かった。舞台の奥に太夫さんと三味線、鳴り物がずらりと並んだ。人形遣いや音曲に女性の姿が混じるのも新鮮。
場面転換の間に、八王子車人形の西川古柳氏が幕前に出て、三人遣いの人形の遣い方についてレクチャー。それから、落語家・入船亭扇治氏が高座ならぬ床にあがり、『紺屋高尾』の一席。落語と人形芝居のコラボレーションである。最近、大阪でも似たようなことをやっていたが、これは悪くない試みだと思う。同じ語り物でも、落語のほうが浄瑠璃より、現代人にはずっと分かりやすい。ただ、私は(文楽)人形浄瑠璃に「江戸ことば」のミスマッチ感が、なかなか受け入れられなかった。でも本格的な落語を久しぶりに聞けたのは嬉しかった。主人公の久蔵の主遣い、若いのに上手かったなあ。
休憩をはさんで『傾城恋飛脚 新口村の段』。語りは竹本信乃太夫。ちょっと苦しそうだったけどよかった。1月に大阪で『冥途の飛脚』を見たばかりだったこともあって、じわじわ感動。言いたいことを言えない、内心と全く違うことを言葉にする、っていう芝居、日本人は好きだよねえ。三味線は鶴澤弥栄さん(女性)。お二人の前にはマイクが置かれていた。あれは録音用なのか、会場内に流すためなのか、よく分からなかったが、会場が広すぎたり、演者の調子が悪いときは、補助的に使ってもいいと思うな、文楽でも。
最後の『御祝儀 祝い唄』はオリジナルで、神楽のように四方を踏み固め、チャリ場のように笑いを取りながら、今日の会場、観客、あしり座、そして北海道と札幌の町を言祝ぐ。楽しかった。ううむ、私の愛する文楽人形浄瑠璃がさらなる活性化のために学ばなければならないのは、こういう手法なんじゃないかな。やっぱり大阪を言祝ぐ芸能であり続けないと。東京に寄り過ぎちゃ駄目なのかもしれない。
アンコールで、小・中・高校生の若いメンバー(ユースクラス、ジュニアチーム)が勢ぞろいしたのも素晴らしかった。子供時代に先入観なく古典の世界を体験した彼らから、ずっと人形芝居を続けていく者も生まれ、実演を離れても、観客として戻ってきてくれる者もいるという。それから『御祝儀 祝い唄』で太夫をつとめた田中碩人君は、4月から国立文楽劇場の研修生になることが決まっているそうだ。ええ!覚えておこう。応援するぞ。10年先、20年先に舞台で見ることができたら嬉しい。私も長生きしなくては。
※人形芸能、夢へ一歩 19歳田中さん(朝日新聞デジタル 2015/2/20)