■真言宗御室派総本山仁和寺(右京区御室)観音堂修復落慶 秋季特別内拝(2019年9月7日〜11月24日)
三連休2日目は京都へ。保存修理事業が完了した観音堂を拝観する。2018年の東博の特別展『仁和寺と御室派のみほとけ』でも、この観音堂の再現コーナーが設けられていたが、やはり現地で見ると感慨深い。もともと修行の場だったので、あまり公開されてこなかったのだそうだ。仁和寺は明治に至るまで門跡寺院として重んじられてきたが、応仁の乱で衰退し、徳川幕府によって寛政年間に多くの建物が再建された。ところが、一気に再建したので、一気に建て替えの時期が来てしまったとのこと。「ぼちぼちやっていれば」と嘆くお坊さんの語り口に味があった。
■蜂岡山広隆寺(右京区太秦)
思い立って、ついでに広隆寺に寄った。この夏、大宰府の観世音寺で巨大な不空羂索観音立像を参拝してきたので、広隆寺の不空羂索観音立像にもお会いしたくなったのだ。山門を入ると、ほかの京都のお寺では一般的になった、カラフルな幟や立て看板が一切なくて、森閑として愛想のない雰囲気。それでもパラパラと参拝客の姿はある。御朱印が手書きでなくスタンプなのも、30年くらい前から変わっていない。霊宝殿の主役は木造弥勒菩薩半跏像だろうが、私はその向かいにいらっしゃる三躯の巨像、不空羂索観音立像、木造千手観音坐像、木造千手観音立像が好き。まわりを囲む、木造十二神将立像や複数の吉祥天立像、秦河勝と秦河勝夫人像と呼ばれる男神・女神像も好きで、この空間には何時間でもいられる。
■泉屋博古館 住友財団修復助成30周年記念特別展『文化財よ、永遠に』(2019年9月6日~10月14日)
住友財団による、美術工芸品や歴史資料の修復助成事業30周年を記念する特別展。この秋、泉屋博古館(京都・東京)、東博、九博の4箇所で開催される。助成対象は2017年度まで1063件(国内745件、海外318件)に達するという。この会場は、特に京都ゆかりの展示となっており、仏像(彫刻)が多くて、いつもと雰囲気が違うことに少し驚いた。
浄瑠璃寺の大日如来坐像(慶派らしい若々しさ)、元慶寺の伝・梵天立像と帝釈天立像(京博寄託、実はどちらも帝釈天像か)、八瀬・妙傳寺の毘沙門天立像など、どれもよい。京都・大覚寺の大威徳明王像は、納入品しか展示されていなかったが、これも住友財団の修復助成を受けているのだな。同館の『水月観音像』は以前にも特集展示があったが、正伝寺の『猛虎図』(若冲が模写した原画)や神護寺の『山水屏風』もここで見られるとは思わなかった。修復前後の比較や修復方法の解説も添えられていて興味深かった。同館の『是害坊絵巻』は、汚れ除去の結果。天狗たちの肌色が健康的になったとあって微笑ましかった。
■京都文化博物館 ICOM京都大会開催記念・東京富士美術館所蔵『百花繚乱 ニッポン×ビジュツ展』(2019年8月25日〜9月29日)
東京富士美術館(八王子市)が所蔵する日本美術の名品を展観。東京富士美術館は遠くてなかなか行く機会がないので、京都で見ておくのもいいだろうと思った。冒頭の伊藤若冲筆『象図』など、見たことのある作品もいくつかあった。ICOM(国際博物館会議)京都大会記念を意識してか、海外のお客さんにも分かりやすい日本美術のイメージが選ばれており、そのことが、日本人のライトな客層にも受けている感じがした。確かほぼ全て撮影OK。VRは混んでいて体験できなかった。
総合展示『京の歴史をつなぐ』(2019年8月29日〜9月29日)は、羅生門をめぐる探求が面白かった。『祇園祭-長刀鉾の名宝-』(2019年8月10日〜10月20日)は、やはりこのシリーズでも群を抜く豪華さ。「天井囲板 星板鍍金二十八宿図」は今でも使われているのだろうか。見たいけど、女性は乗れない鉾なんだなあ。