今週の土日は出勤予定なので、私にとって、先週が、この夏最後の週末となった。そこで、可能な限り、夏休みの宿題(!?)をクリアすべく、以下のように行動。
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三井記念美術館 特別展『道教の美術』(2009年7月11日~9月6日)
7月に続く再訪なので、展示替え作品を中心にチェック。明代の版本、正統道蔵『太上三五正一盟威籙』は、剣を携え、袖を翻す道士の姿が、諸星大二郎っぽくて好き。岩佐又兵衛の『老子出関図』は、布袋さんのように腹の突き出た老子がユーモラス。お、重いと言いたげに踏んばる黒牛の姿に、思わず笑みがこぼれる。
そして、今期の白眉(だと私が思う)雪村の『琴高・群仙図』3幅(鯉のロデオ図、取り巻く仙人たちの、抽象化されかかった形態もいい)にボー然と見入っていたら、思わぬ知り合いが隣りに。「展示替えだけを目当てに、毎週来てるんです」と真顔でおっしゃる。まあ、そちらは専門家だから…。私は、東京会場は2回に留めて大阪にも行こうと思っていると申し上げたら、「駄目ですよ、長崎だけというのが50点くらいあるし」と言う。全く困りものの大規模展覧会である。最後の展示室は、前回、わりと科学的な「星図」「天文図」が目についたのに対して、今回は、信仰に基づく「星曼荼羅図」が多かった。十二宮には右回りと左回りがあるみたい。
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松濤美術館 『江戸の幟旗 』(2009年7月28日~9月13日)
座談会を目的に再訪。そのあと、夕方の新幹線で、2週連続の関西へ。うう、こんなに遊び歩いて…ごめんなさい。
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奈良国立博物館 特別展『聖地寧波』(2009年7月18日~8月30日)
翌日(日曜日)3回目の参観。これで、大徳寺の「五百羅漢図」82幅を全て見ることができて、満足々々。風呂敷包みを抱えて、これからひと風呂浴びようという「浴室」が可笑しかった。羅漢さんは、縫物や洗濯は自分でするのに、食事とお茶の支度は他人任せのようだ。ほかの展示品は先週と変わっていなかったが、別れを惜しんで、じっくり眺める。
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大和文華館 特別企画展『物語と絵画-文学と美術の出会い-』(2009年8月21日~9月27日)
せっかく奈良まで行ったので、始まったばかりのこの展覧会にも寄る。入ってすぐの展示ケースに、伝・俵屋宗達筆の『伊勢物語図色紙・芥川』。私の大好きな作品だ。愛の至福を思わせる黄金の雲の中で、はかなげな表情の男女が顔を見合わせている。ふと画面に添えられた詞章を読んで、ハッとした。「女のえうまじかりけるを、としをへてよばひわたりけるを、からうじてぬすみいでて、いとくらきにきけり」。ああ、そうか、このまばゆいばかりの金色の画面、実際は、お互いの顔も見分けられないような「いとくらき」闇夜を表しているのだ。
国宝『寝覚物語絵巻』は、贅沢に4場面のうち3場面を公開。伝・岩佐又兵衛筆の『源氏物語屏風』は、描かれた人物が、男も女もしっかりした肉体の厚みを持っていて、大人っぽい。初めて見たのは『宇津保物語図屏風』(特別出品、個人蔵、江戸期)。宇津保物語は、文学史では必ず習う長編物語の嚆矢だが、絵画化された現存例は少ないのだそうだ。桜の花の下、たくさんの琴を並べて、もの憂い表情の貴公子。空中には楽を奏する豊満な天女。場面変わって、孔雀(?)に乗った貴公子が訪ねていく先は、波斯国(ペルシャ)だという。
※msn産経:大和文華館が「宇津保物語」屏風現存を確認、初公開(2009/8/20)
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090821/trd0908210002000-n1.htm
でも、やっぱり一番よかったのは仏教説話・縁起の三作品。『病草紙断簡』(鍼療治の場面)のリアリティ。『過去現在絵因果経断簡』のはっきりした色使いが醸し出す、マンガのような軽妙さ。『善財童子絵巻断簡』の、南画のようにほんわかした雰囲気。どれも捨てがたい。
※以下「夏休み最後の週末旅行:見仏編」に続く。