1月29日(土) 吉野・金峯山寺蔵王堂。
10:30頃。秘仏の拝観を終えて外に出てみると、巨大な木製コンテナの上蓋が外されたところだった。蔵王堂の正面階段に組まれた足場の上で見守る人々。ええ、これってもしや?もしや!?
続いて側面が外されると、仏像の腕と思しきものが出現する。まわりで囁き交わす人々の話を総合すると、巡回美術展『祈りの道―吉野・熊野・高野の名宝』に出品されていた仏像が帰って来たのだという。あの世田谷美術館の大ホールで、周囲を睥睨していた蔵王権現立像に間違いない。
※美術展『祈りの道』と、この像を搬入するにあたっての世田谷美術館の苦労話(毎日新聞)は2004年1月4日のブログ参照。
四方の板が外されると、クレーンが進み出て、内箱に収まった仏像を吊り上げた。このまま、堂内に運び上げるのかと思いきや、底板を外したところで小休止。
「上げるのは2時頃だな」「早いけど食事行こか」などと言って、作業員たちが散っていく。このとき、時計は11:00過ぎ。今日は奥千本の西行庵まで行くぞ!と思っていたのだが...とりあえず私も蔵王堂を離れて、近くの名所旧跡をぶらぶら見てまわる。しかし、西行庵にはまた行くこともできるが、これほどのイベントにめぐり合うことは二度とないだろうと思い、昼食を済ませ、再び蔵王堂に戻る。
1:00過ぎ。仏像はまだ地面に横たわっていた。木枠の不要な部分を切り落とし、新たな補強部材を追加するなど、吊り上げ準備に余念がない。
茶色の法被姿のスタッフ(文化財修復の専門家集団)が、慎重に仏像を固定したベルトを確認し、何度も木枠のボルトを締め直す。クレーンによる搬入を担当するのは日本通運さん。堂内でそれを受け取るのは、また別の業者さんらしい。金峯山寺のお坊さんたちも集まってくるが、「なかなか上がらへんなあ」の声が漏れる。
2:00過ぎ。いよいよ本格的にクレーンが出動。
まず、仏像を横向きに起こし、すばやくベルトをかけ直す。足場の上では、あわただしく金属製の「コロ」が並べられる。
あっという間に仏像は吊り上げられ、ぐんぐんお堂に近づく。
台上の作業員が慎重に受け取る。同じ目線まで上がってくると、あらためて仏像の巨大さが感じられる。
青い作業着の日本通運さんの仕事はここまで。お堂の中で待っていた別の会社の作業員さんたちが、コロを使って、仏像を堂内に押し入れる。
ここからがまた一苦労。いったん横倒しにした仏像を、滑車で吊り上げ、狭い堂内で再び90度回転させる。滑車を回転させる鎖のシャーシャーという摩擦音が、善男善女のまわす、百万遍念仏の数珠のようだ。
ふだん堂内は「撮影禁止」なのだが、このときばかりはお坊さんたちも、自前のカメラや携帯で熱心に撮影中だったので、私も見逃していただいた。本日の作業はここまで。時間は既に3:00をまわった。
内陣に運び入れ、立たせる作業は明日になるというので、名残を惜しみながら、蔵王堂を後にした。次に来たときは、内陣に佇立する蔵王権現像を見ることができるだろう。
(おしまい)
10:30頃。秘仏の拝観を終えて外に出てみると、巨大な木製コンテナの上蓋が外されたところだった。蔵王堂の正面階段に組まれた足場の上で見守る人々。ええ、これってもしや?もしや!?
続いて側面が外されると、仏像の腕と思しきものが出現する。まわりで囁き交わす人々の話を総合すると、巡回美術展『祈りの道―吉野・熊野・高野の名宝』に出品されていた仏像が帰って来たのだという。あの世田谷美術館の大ホールで、周囲を睥睨していた蔵王権現立像に間違いない。
※美術展『祈りの道』と、この像を搬入するにあたっての世田谷美術館の苦労話(毎日新聞)は2004年1月4日のブログ参照。
四方の板が外されると、クレーンが進み出て、内箱に収まった仏像を吊り上げた。このまま、堂内に運び上げるのかと思いきや、底板を外したところで小休止。
「上げるのは2時頃だな」「早いけど食事行こか」などと言って、作業員たちが散っていく。このとき、時計は11:00過ぎ。今日は奥千本の西行庵まで行くぞ!と思っていたのだが...とりあえず私も蔵王堂を離れて、近くの名所旧跡をぶらぶら見てまわる。しかし、西行庵にはまた行くこともできるが、これほどのイベントにめぐり合うことは二度とないだろうと思い、昼食を済ませ、再び蔵王堂に戻る。
1:00過ぎ。仏像はまだ地面に横たわっていた。木枠の不要な部分を切り落とし、新たな補強部材を追加するなど、吊り上げ準備に余念がない。
茶色の法被姿のスタッフ(文化財修復の専門家集団)が、慎重に仏像を固定したベルトを確認し、何度も木枠のボルトを締め直す。クレーンによる搬入を担当するのは日本通運さん。堂内でそれを受け取るのは、また別の業者さんらしい。金峯山寺のお坊さんたちも集まってくるが、「なかなか上がらへんなあ」の声が漏れる。
2:00過ぎ。いよいよ本格的にクレーンが出動。
まず、仏像を横向きに起こし、すばやくベルトをかけ直す。足場の上では、あわただしく金属製の「コロ」が並べられる。
あっという間に仏像は吊り上げられ、ぐんぐんお堂に近づく。
台上の作業員が慎重に受け取る。同じ目線まで上がってくると、あらためて仏像の巨大さが感じられる。
青い作業着の日本通運さんの仕事はここまで。お堂の中で待っていた別の会社の作業員さんたちが、コロを使って、仏像を堂内に押し入れる。
ここからがまた一苦労。いったん横倒しにした仏像を、滑車で吊り上げ、狭い堂内で再び90度回転させる。滑車を回転させる鎖のシャーシャーという摩擦音が、善男善女のまわす、百万遍念仏の数珠のようだ。
ふだん堂内は「撮影禁止」なのだが、このときばかりはお坊さんたちも、自前のカメラや携帯で熱心に撮影中だったので、私も見逃していただいた。本日の作業はここまで。時間は既に3:00をまわった。
内陣に運び入れ、立たせる作業は明日になるというので、名残を惜しみながら、蔵王堂を後にした。次に来たときは、内陣に佇立する蔵王権現像を見ることができるだろう。
(おしまい)