○三菱一号館美術館 『画鬼・暁斎-KYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル』(2015年6月27日~9月6日)
幕末明治に「画鬼」と称され、絶大な人気を博した絵師、河鍋暁斎(かわなべ きょうさい、1831-1889)の展覧会。だと思って行ったら、副題が「幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」となっていて、建築家ジョサイア・コンドル(1852-1920)の扱いがかなり重い。まあ三菱一号館はコンドルの設計だからな。そして、コンドルが暁斎に弟子入りして暁英の号を授かっていたことは、あまりも有名である。私はコンドル先生も好きなので、東大建築学科所蔵の鹿鳴館の階段の断片や、緑色の大型本『Landscape Gardening in Japan』などを、久しぶりに懐かしく眺めた。狩野派ふうの正統絵画『霊照女・拾得図屏風』は興味深かった。京博の寄託品なのか。
会場で出会う最初の暁斎作品は『枯木寒鴉図』。2008年の京博の暁斎展でも印象深かった作品。暁斎が第二回内国勧業博覧会(明治14/1881)で「妙技二等賞」を獲得し、コンドルと知り合うきっかけになったと思われる作品だが、梅干し飴の「榮太樓」が所蔵しているというのが素晴らしい。詳しくは、荒俣宏さんの『江戸の醍醐味:日本橋・人形町から縁起めぐり』で。
刊本『暁斎画談』(晩年の出版)は、暁斎が七歳で歌川国芳に入門した場面が開けてある。よく見ると猫まみれの国芳が愛らしいのだが、注目するお客さんが少ないのはもったいない。なお、展覧会を最後まで見ると、暁斎も負けず劣らずの猫好きだなあという印象が残る。
暁斎の作品はいくつかのテーマに分けて展示されている。「初公開 メトロポリタン美術館所蔵品」は、主に動物モチーフの小品で、河鍋暁斎記念美術館が所蔵する『英国人画帖下絵』と見比べることができるのがうれしい。個人的には、下絵のほうが生き生きして好きな作品もある。それから「道綽人物図」「芸能・演劇」「動物画」「美人画」など。私は、数の少ない「山水画」が、どれもかなり個性的で面白いと思った。
「幽霊・妖怪図」に分類されていた『猫又と狸』は、ちょっとイソップ童話か何か、洋物絵本みたい(展覧会公式サイトのTOPにも出てくる)。私は、2000年に池袋の東武デパートで開催された『河鍋暁斎・暁翠展』を見ているはずなのだが、唯一印象に残っているのがこの作品なのである。『九尾の狐図屏風』は不思議な絵だなあ。富士山(日本)を餌に、中国(閻魔王?)と天竺(鬼)がふんどし姿で縄の両端を持ち、九尾の狐を捉えようとしている。「動物画」に分類されている『月に狼図』は、らんらんと目を剥いたオオカミが腐りかけの生首を咥えた図。これも「妖怪」でいいような気がする…。
「風俗・戯画」に『風流蛙大合戦之図』があったことは記録しておこう。先日「芸術新潮」で狩野博幸氏が「合戦図10選」にあげていらしたもの。『放屁合戦図』は面白いけど、平安時代の古本と比較しながら見てみたい。館内に、とつぜん思わせぶりな黒い紗の目隠しが下りているところがあって、もしやと思ったら「春画」のセクションだった。笑えるものからリアルなものまで様々。18歳未満は観覧禁止。でも普通の展覧会会場の中に、突然こういうエリアが設けられているって、どうなんだろうか…。
面白い作品は多かったが、全体として、2008年の京博展のボリュームには遠く及ばないため、「もっと暁斎見たい!」という飢餓感がつのって、ストレスが残る。お土産は暁斎の骸骨図がデザインされたワンカップ日本酒。これは20歳未満には売らないのかな?
※三菱一号館美術館:音が出るので、見出しにはリンクを貼らず。なお展覧会関連で行きたかったイベントがいくつかあるが、チェックしたときは、もう満員で募集打ち切りだった。みんな出足はやいな。
幕末明治に「画鬼」と称され、絶大な人気を博した絵師、河鍋暁斎(かわなべ きょうさい、1831-1889)の展覧会。だと思って行ったら、副題が「幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」となっていて、建築家ジョサイア・コンドル(1852-1920)の扱いがかなり重い。まあ三菱一号館はコンドルの設計だからな。そして、コンドルが暁斎に弟子入りして暁英の号を授かっていたことは、あまりも有名である。私はコンドル先生も好きなので、東大建築学科所蔵の鹿鳴館の階段の断片や、緑色の大型本『Landscape Gardening in Japan』などを、久しぶりに懐かしく眺めた。狩野派ふうの正統絵画『霊照女・拾得図屏風』は興味深かった。京博の寄託品なのか。
会場で出会う最初の暁斎作品は『枯木寒鴉図』。2008年の京博の暁斎展でも印象深かった作品。暁斎が第二回内国勧業博覧会(明治14/1881)で「妙技二等賞」を獲得し、コンドルと知り合うきっかけになったと思われる作品だが、梅干し飴の「榮太樓」が所蔵しているというのが素晴らしい。詳しくは、荒俣宏さんの『江戸の醍醐味:日本橋・人形町から縁起めぐり』で。
刊本『暁斎画談』(晩年の出版)は、暁斎が七歳で歌川国芳に入門した場面が開けてある。よく見ると猫まみれの国芳が愛らしいのだが、注目するお客さんが少ないのはもったいない。なお、展覧会を最後まで見ると、暁斎も負けず劣らずの猫好きだなあという印象が残る。
暁斎の作品はいくつかのテーマに分けて展示されている。「初公開 メトロポリタン美術館所蔵品」は、主に動物モチーフの小品で、河鍋暁斎記念美術館が所蔵する『英国人画帖下絵』と見比べることができるのがうれしい。個人的には、下絵のほうが生き生きして好きな作品もある。それから「道綽人物図」「芸能・演劇」「動物画」「美人画」など。私は、数の少ない「山水画」が、どれもかなり個性的で面白いと思った。
「幽霊・妖怪図」に分類されていた『猫又と狸』は、ちょっとイソップ童話か何か、洋物絵本みたい(展覧会公式サイトのTOPにも出てくる)。私は、2000年に池袋の東武デパートで開催された『河鍋暁斎・暁翠展』を見ているはずなのだが、唯一印象に残っているのがこの作品なのである。『九尾の狐図屏風』は不思議な絵だなあ。富士山(日本)を餌に、中国(閻魔王?)と天竺(鬼)がふんどし姿で縄の両端を持ち、九尾の狐を捉えようとしている。「動物画」に分類されている『月に狼図』は、らんらんと目を剥いたオオカミが腐りかけの生首を咥えた図。これも「妖怪」でいいような気がする…。
「風俗・戯画」に『風流蛙大合戦之図』があったことは記録しておこう。先日「芸術新潮」で狩野博幸氏が「合戦図10選」にあげていらしたもの。『放屁合戦図』は面白いけど、平安時代の古本と比較しながら見てみたい。館内に、とつぜん思わせぶりな黒い紗の目隠しが下りているところがあって、もしやと思ったら「春画」のセクションだった。笑えるものからリアルなものまで様々。18歳未満は観覧禁止。でも普通の展覧会会場の中に、突然こういうエリアが設けられているって、どうなんだろうか…。
面白い作品は多かったが、全体として、2008年の京博展のボリュームには遠く及ばないため、「もっと暁斎見たい!」という飢餓感がつのって、ストレスが残る。お土産は暁斎の骸骨図がデザインされたワンカップ日本酒。これは20歳未満には売らないのかな?
※三菱一号館美術館:音が出るので、見出しにはリンクを貼らず。なお展覧会関連で行きたかったイベントがいくつかあるが、チェックしたときは、もう満員で募集打ち切りだった。みんな出足はやいな。