春日大社に参拝し、御朱印帳を新調して国宝殿へ向かう。
■春日大社国宝殿 春・夏季特別展『絵解き!春日の美術』(2021年4月10日~8月29日)
絵巻や曼荼羅など、春日大社にまつわる様々な絵画を絵解きする特別展。大好きな『春日権現験記』は、江戸後期の書写である春日本が多数(10巻くらい)出ていて、春日明神の描かれ方や人々の暮らしぶり、書き添えられた「呪物」や動物の解説が面白かった。巻二の白河院御幸の場面は、ずらり並んだ官人たちが実在の誰にあたるか、全て特定(推定)されていることを初めて知った。実は午前中に『京の国宝』展で、原本の巻二を見た直後だったので、とりわけ関心をもって眺めた。
『抜頭・相撲衝立』は江戸末期の作だが、神事として行われる相撲の力士の髷が独特であることを教えてもらった。絵画の『春日童子像』とあわせて、小さな彫刻の『春日赤童子像及厨子』(像は江戸時代)があるのも珍しく思った。
このあと、久しぶりの奈良公園なので、若草山の山麓を歩いて東大寺境内に向かい、二月堂の御朱印もいただいた。コロナの影響もあるだろうけど、これだけ観光客の少ない東大寺はこの季節しかない。
■奈良国立博物館 特別展『奈良博三昧』(2021年7月17日~9月12日)
奈良博コレクションの中から選りすぐった合計245件(展示替えあり)の作品によって、日本仏教美術1400年の歴史をたどる。展覧会のタイトルは、仏教で、熱心にほとけの姿をみることをあらわす「観仏三昧」になぞらえたもの。奈良博は、特別展を目的に訪ねることが多いため、常設館のある仏像(彫刻)はともかく、書画等を見る機会が少ない(そもそもあまり展示されない)のを残念に思っていたので、この企画を聞いたときは、諸手をあげて歓迎した。
いちおう全体テーマが「仏教美術」なので、ふだん「なら仏像館」に展示されている仏像の名品も、かなりの数が、こちらの特別展に移動していた。奈良~平安時代の如来立像(厚みのある体躯、右の手先と左腕を肩から失っている)、もと興福寺北円堂に伝来したという平安~鎌倉時代の増長天立像と多聞天立像、賢いわんこっぽい平安時代の獅子など。おや、今日はここにおいででしたかと、意外な場所で知り合いを見つけたみたいな気持ちになる。
力士立像(力士形立像)(奈良、または中国・唐時代)は、初めて見たときの印象が強烈で(東京の展覧会だったと思う)まだ覚えている。あまり展示されないので、奈良博の所蔵であることを忘れていた。記念に写真を撮っていく。
この展覧会、書画も含め、全ての作品・解説パネル等を撮影可。すごくうれしいのだけど、展示ケースのガラスに天井の照明が映り込むのが残念。伽藍神立像は、蛍光ビームを発してるみたいになってしまった。
仏画は『普賢菩薩像』(平安時代)『文殊菩薩像』(南北朝時代・騎獅像)『十一面観音像』(平安時代・国宝)などを見せてもらった上で、申し訳ないが、物足りなさが残った。前後期でバランスよく名品を分けているので、あれは後期かあ…という気持ち。ちなみに『地獄草紙』は前期で『辟邪絵』は後期である。作品名は忘れたが、墨画の図像集(儀軌集)は楽しい。こういうのを描いていた人が『鳥獣戯画』みたいな作品を描いたのかなあと想像する。
工芸では『春日龍珠箱』(南北朝時代)が見られて嬉しかった。これも最初に見たのは東京の展覧会だったと思う。
あと、こっそり嬉しかったのは、この4匹と1羽に「ざんまいず」という名前がついたこと。2019年夏の『いのりの世界のどうぶつえん』展で初登場し、この1回で終わるのは残念に思っていた。新館地下に記念撮影用のパネルが生き残っているのは知っていたが、このたび、奈良博公式キャラクターに決定したとのこと。よかったねえ。
常設展「なら仏像館」もひとまわり。目新しいものとして、高福寺(吉野郡野迫川村)の薬師如来坐像が特別公開されていた。金峯山寺の仁王像(金剛力士像)は5月に見たとおりだが、像内納入品の展示は、新たに加わったものではないかと思う。そして京都の宿へ戻る。