○サントリー美術館 『お伽草子-この国は物語にあふれている-』(2012年9月19日~11月4日)
入ってすぐの展示ケースを見て、ぎゃっ!と叫びそうになった。永青文庫の『長谷雄草紙』が出ている(~10/8)。何だってー!! 展示替リストを見てきたつもりなのに、全然気づいていなかった。チラシを見て気になった作品、日本民藝館の名品(笑)『浦島絵巻』が10/8までなのと、真珠庵本『百鬼夜行絵巻』(2007年、京博で見て以来!)は全期展示(巻替え有)なのは、チェックを入れていたのだが、そもそも「お伽草子」と言われて、この絵巻を思い浮かべる人は少ないはず。いや、見逃さないでよかった。
2009年に『長谷雄草紙』が永青文庫で公開されたときは、全編見るには8回通わなければならないというオニのような展示替えだった(※スケジュール表まだあり)。今回は、物語のクライマックスである(3)「長谷雄、見知らぬ男に案内されて、朱雀門に着く」~(6)「長谷雄、100日を経ずして女を抱こうとし、女、水と化して流れ去る」を一気に通覧できる。ああ、なんて贅沢なの!と感激。
お伽草子とは、一般に「室町時代から江戸時代にかけて成立した、短編の絵入り物語」と解されており、本展のサイトやチラシも、冒頭にこの定義を掲げている。が、「お伽草子の源流」として取り上げられた『長谷雄草紙』『福富草紙』をはじめとして、けっこう文学史的な「お伽草子」の定義を逸脱した作品が目立つように思った。だいたい、展示品に絵草紙(冊子)がほとんどなくて、九割以上が絵巻の形態だったので、途中であれっ?と思ってしまった。まあ、楽しかったから、いいけど…。
お伽草子には超時代的な(原型的な)物語が多いが、それを歴史の中に着地させた展示手法も面白いと思った。たとえば「酒呑童子」の物語を愛好した武士たち。とりわけ凛々しい武者ぶりを見せるサントリー美術館本(狩野元信画)は、北条氏綱の注文で制作されたと知って、なんとなく納得。あと『実隆公記』など、同時代の記録に、ちゃんと御伽草子に関する言及が出てくるんだな。展示では、翻刻の見せ方が分かりやすくて、ありがたかった。
私は下手ウマ素朴絵系が好きなので、『かみ代物語』の鰐は、かなりツボ。この作品を含め、本展には、西尾市岩瀬文庫の所蔵品がかなり出ていた。同館のコレクション調査の成果が活かされているのだろう。『蛙草紙絵巻』は、さらした布を食べてしまう牛の図に笑った。根津美術館、こんな作品も持っていたのか。初見だと思う。『付喪神絵巻』(個人蔵)の、中途半端に人間化した古道具にも笑った。私だけでなく、ときどき会場で、プッと吹いている声が聞こえていたなあ。
強烈なアイメイクの『しぐれ絵巻』は衝撃的だった(一度、見た記憶がある)。現実離れした清水寺の描写(ゴージャス感だけは出ている)など、やっぱり女性の求めるものは万古不易なんだろうか。男装の女性が恋を実らせる『新蔵人物語絵巻』も、発想が少女マンガっぽい。
できれば、後期にもう一度行きたい。
入ってすぐの展示ケースを見て、ぎゃっ!と叫びそうになった。永青文庫の『長谷雄草紙』が出ている(~10/8)。何だってー!! 展示替リストを見てきたつもりなのに、全然気づいていなかった。チラシを見て気になった作品、日本民藝館の名品(笑)『浦島絵巻』が10/8までなのと、真珠庵本『百鬼夜行絵巻』(2007年、京博で見て以来!)は全期展示(巻替え有)なのは、チェックを入れていたのだが、そもそも「お伽草子」と言われて、この絵巻を思い浮かべる人は少ないはず。いや、見逃さないでよかった。
2009年に『長谷雄草紙』が永青文庫で公開されたときは、全編見るには8回通わなければならないというオニのような展示替えだった(※スケジュール表まだあり)。今回は、物語のクライマックスである(3)「長谷雄、見知らぬ男に案内されて、朱雀門に着く」~(6)「長谷雄、100日を経ずして女を抱こうとし、女、水と化して流れ去る」を一気に通覧できる。ああ、なんて贅沢なの!と感激。
お伽草子とは、一般に「室町時代から江戸時代にかけて成立した、短編の絵入り物語」と解されており、本展のサイトやチラシも、冒頭にこの定義を掲げている。が、「お伽草子の源流」として取り上げられた『長谷雄草紙』『福富草紙』をはじめとして、けっこう文学史的な「お伽草子」の定義を逸脱した作品が目立つように思った。だいたい、展示品に絵草紙(冊子)がほとんどなくて、九割以上が絵巻の形態だったので、途中であれっ?と思ってしまった。まあ、楽しかったから、いいけど…。
お伽草子には超時代的な(原型的な)物語が多いが、それを歴史の中に着地させた展示手法も面白いと思った。たとえば「酒呑童子」の物語を愛好した武士たち。とりわけ凛々しい武者ぶりを見せるサントリー美術館本(狩野元信画)は、北条氏綱の注文で制作されたと知って、なんとなく納得。あと『実隆公記』など、同時代の記録に、ちゃんと御伽草子に関する言及が出てくるんだな。展示では、翻刻の見せ方が分かりやすくて、ありがたかった。
私は下手ウマ素朴絵系が好きなので、『かみ代物語』の鰐は、かなりツボ。この作品を含め、本展には、西尾市岩瀬文庫の所蔵品がかなり出ていた。同館のコレクション調査の成果が活かされているのだろう。『蛙草紙絵巻』は、さらした布を食べてしまう牛の図に笑った。根津美術館、こんな作品も持っていたのか。初見だと思う。『付喪神絵巻』(個人蔵)の、中途半端に人間化した古道具にも笑った。私だけでなく、ときどき会場で、プッと吹いている声が聞こえていたなあ。
強烈なアイメイクの『しぐれ絵巻』は衝撃的だった(一度、見た記憶がある)。現実離れした清水寺の描写(ゴージャス感だけは出ている)など、やっぱり女性の求めるものは万古不易なんだろうか。男装の女性が恋を実らせる『新蔵人物語絵巻』も、発想が少女マンガっぽい。
できれば、後期にもう一度行きたい。