見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

台湾旅行2019-20より帰宅

2020-01-03 22:51:24 | ■中国・台湾旅行

大晦日から今日(1/3)まで年末年始の台湾旅行から無事帰宅。楽しかった!よく歩いた!!

台湾には、これで4年連続で出かけている。いつも2泊3日や3泊4日の小旅行だが、少しずつ違うエリアに足を運ぶのが楽しい。今回も、いろいろ新しい発見があった。

しかしお土産のタネは尽きてしまって、もう職場へのパイナップルケーキしか買って来なかった。自分用には、ちょっと面白いものを見つけても、また次に来るときでいいやと思ってしまうのだが、今回の大事な記念品はこちら。元旦に台湾総統府を参観すると貰えるのだ。

「二〇二〇庚子 金鼠吉祥/風調雨順/民富國強/蔡英文 陳健仁」とある。たぶん「風調雨順」が蔡英文総統、「民富國強」が陳健仁副総統の筆ではないかと思う。うれしい。職場に貼りたいところだが、自宅のドア(ただし内側)に貼ろう。

総統府のギフトショップでは、総統・副総統の似顔絵入りタオルも売っていて、買ってしまった。

似顔絵の隣りには「國家因你而偉大」とある。ビニールのパッケージに印刷されていたコピーはもう少し長くて「國家偉大嗎?國家因你而偉大/What makes a country great? This country is great because of you」とあった。いいなあ、この標語。

旅行レポートはこのあと、各日付のもとに。

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台湾旅行2019-20【最終日/4日目続き】古亭、龍山寺、西門紅楼

2020-01-03 22:26:29 | ■中国・台湾旅行

 国立台湾大学を離れ、見ておきたかったところを最後にいくつか訪ねた。

 ひとつは、雑誌『東京人』2019年11月号「特集・台湾 ディープ散歩」に紹介されていた、古亭という地名の由来となった「古亭地府陰公廟」。資産家の家に仕えていて非業の死を遂げた侍女を祀ったものだという。オシャレで都会的な大通りに突然、異空間のような廟堂が現れる。一本裏道に入ると、安食堂が集まっていて、ランチタイムの勤め人で賑わっていた。

 続いて、初日の大晦日にも訪ねた龍山寺に初詣をする。おみくじは第三十五首「上上」の「劉関張古城相会」を引いた。劉関張って誰?と分からなくてスマホで検索したら、劉備・関羽・張飛をまとめて呼ぶ言い方だそうだ。ずいぶん欲張った運勢である。

 さて伝統的な街並みを復元した「剥皮寮(ボーピーリャオ)」を合わせて訪ねる。今回初めて、東側の昆明街まで歩いてみたら、「台北市郷土教育センター」という看板を見つけた。赤レンガの伝統的な建築に鉄骨とガラスを組み合わせたおしゃれな構造。台湾土着の神格である「尫公」についての展示などもやっていて、面白かった。

 剥皮寮の北側にある老松国民小学。昆明街から見るアーチ窓の列は、モスクか修道院みたい。

 最後に西門紅楼へ。ここは、むかしは小さなお店がひしめき合う、混沌とした商業ビルだった気がするのだが、私の記憶違いだろうか。いまはおしゃれでクリエイティブなスポットに様変わりしていた。

 以上、台北の街並みの変化が感じられて楽しい旅行だった。しかしよく歩いた!疲れた!(1/7記)

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台湾旅行2019-20【最終日/4日目】国父紀念館、国立台湾大学

2020-01-03 21:37:09 | ■中国・台湾旅行

 最終日。今日もいい天気だ。午後2時頃まで観光できるので、台北駅のロッカーに大きい荷物を預けて街へ出る。こちらへ来るまで考えていなかったのだが、ふと思い立って、定番の観光名所である国父紀念館に行ってみることにした。初台湾旅行のとき以来、約20年ぶりになる。MRTの駅から地上に上がると、異様に巨大な建築が目に飛び込んできて驚く。1972年竣工。これを建てた頃の台湾は、巨大で威圧的な建築によって、大陸と意識的に張り合っていたのではないかと思う。

 そして有名なランドマークである台北101の姿も初めて見た。2004年竣工だというから、私の初台湾のときはできていなかったのだ。

 最初の衛兵交代(というか出動)は9時なので、しばらくベンチで開館を待っていると、武術だかダンスだかを練習している集団のほうから聞き覚えのある音楽が流れてきた。大好きな2003年版『射雕英雄伝』のオープニングテーマ。これは気持ちが上がるな~。

 5分前くらいに館内に入ると、5人の衛兵が現れたところ。平日の朝イチなので、観客は10人弱だった。

 左右の台上にそれぞれ衛兵が立つと、残りの3人は戻っていく。すると紺のジャンパーお兄さんが、おもむろに台上の衛兵に近寄り、銃の位置、制服のしわ、帽子の角度などを丁寧に直していく。その後もジャンパーのお兄さんは、まわりに気を配りながら、ずっと控えていた。

 ホールの右側に大きなクリスマスツリーが飾られていたので、衛兵がくるみ割り人形みたいで微笑ましかった。

 続いて国立台湾大学へ移動。ここでの目的も近代建築探訪である。旧台北帝国大学時代の図書館は、いまは大学の歴史を展示する校史館になっている。

 中に入ってみる。

 図書館で使われていたっぽい机と椅子。学生生活全般にわたる展示で面白かった。

 いまは行政大楼(本部事務?)。もとは農林専門部だったそうだ。

 現在の図書館。要塞のようにデカい。私の記憶が間違っていなければ、むかし、この図書館で開催された中文古籍のシンポジウムに出席したことがある。

 隣りに学生活動センターという小さい(図書館に比べて)建物があって、カフェテリアやコンビニ、サークルの部室などが入っているようだった。「光復香港時代革命」という題字をつけた展示ボードが立っていて、ポストイットで多数の学生のメッセージが貼り付けられていた。

 緑の多い方向に歩いていくと、池や水車があり、広い畑が見えてきた。構内の道幅が広くてまっすぐで、おまけにこんな風景を見ると北海道大学を思い出す。実験農場なので、商業撮影は禁止という札が立っていた。

 ここは旧高等農林学校作業室。台湾の食生活に欠かせない「蓬莱米」を生み出した磯永吉博士の名前をとって「磯小屋」と呼ばれている。見たところ、使われているのかいないのか、よく分からない状態だった。

 農場周辺を大まわりして、台大グッズが買える「小福福」というお店を探し当てる。南国らしいあずまやの下に軽食のお店がいくつかあり、隣りの建物の中にコンビニのような小さな商店が入っていた。しかしTシャツやノートには食指が動かず。台大農業試験場製の牛乳には惹かれたが、1リットルボトルしかなかったので、あきらめる。これが最終日でなければ…。

 なお、片倉さんの本を見直したら、この「小福福」が入ってる長屋のような建物は、台北帝国大学時代の農林部専門部化学教室であるとのこと。

 私は紅茶と弁当を買って、あずまやのテーブルでランチにした。このとき気温は26度くらい。暑い! 箸は別売りで1元。環境配慮の取り組みが進んでいる。

 あずまやの隣りの木の下には、20~30人が集まって梢を見上げていた。望遠カメラを構えている人もいる。木の幹に「猫頭鷹の観察には距離を保ってください。フラッシュ禁止」という貼り紙がしてあって、猫頭鷹?どんな鷹だろう?と思ったら、フクロウのことだった。(1/7記)

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台湾旅行2019-20【3日目】故宮博物院、北投温泉

2020-01-02 23:40:56 | ■中国・台湾旅行

 正月2日は朝から気持ちよく晴れた。しかし今日は基本インドアの予定。故宮博物院に向かう。

 館内は、この数年ではいちばん空いていて静かだった。前日の元旦が無料開館日なのを避けたのがよかったかもしれない。マイクを使った館内ツアーを見かけなかったのは、禁止になったのか、あるいは大陸からの団体旅行が減っているのか。ロビーには「会話は小声で」というカード(団扇みたいな)を持った職員の方が立っていた。

【101室】「慈悲と知恵-宗教彫塑芸術」

【105,107室】「小時代の日常-十七世紀から見た生活への提案」(2019年9月28日~2020年1月5日)
17世紀の小資産階級の「文青」(文芸青年)であった文震亨(1586-1645)の『長物志』に焦点を当て、彼らの「平淡ながらも質にこだわった格別な日常」を紹介する。17世紀以前に優品とされた文具やうつわに対して、彼らが独特の美意識を主張し、世間の趣向を変えていくところが面白い。

【103室】「故宮博物院所蔵清代歴史文書精選」
この部屋はいつも善本の展示だが、内容は少しずつ変えているのではないかと思う。乾隆33年の『緬』(緬甸〔ミャンマー〕関係の文書)が出ていたのは、ドラマ「延禧攻略」ファンの学芸員さんがいるのではないかと思ってにやりとしてしまった。

展示室内に流れていたビデオに「和珅の建てた邸宅(のちの恭王府)」がチラッと映ったので、その場面をもう一度見たくてモニタに張り付いていたら、20分くらい見ていてももとの場面に戻らなかった。しかしとても分かりやすいビデオで、清朝の歴史文書の形態にかなり詳しくなった。

【104室】「院蔵善本古籍精粋」
ここも少しずつ内容を変えていて、ありがたい。

【106室】「集瓊藻-故宮博物院所蔵珍玩精華展」
【108室】「貴族の栄華-清代家具展」

【210,212室】「四方来朝-職貢図特別展」(2020年1月1日~3月25日)
今回、一番楽しみにしていた特別展。「職貢」とは、朝貢国が宗主国に赴き、冊封を受け、賞賜されること。「職貢図」には周辺国や遠方からやってきた外交使節の様子、さまざまな風俗や珍しい進貢品が描かれている。唐~明清まで20件以上の書画を展示。唐・閻立本の『職貢図』1件だけ撮影禁止だったが、あとは好きに撮影もできるおおらかさ。

これも唐・閻立本の『王会図』。左から高麗国、倭国、亀茲国。

清・謝遂の『職貢図』。左の男女が「日本国夷人」である。なぜか西洋諸国と同じ巻に描かれている。

ゾウやキリンなど珍しい動物を献上するのは、強大な帝国の君主を喜ばせる外交の定番。獒(ごう、ao)と呼ばれる猛犬(マスチフ種など)もよく描かれている。古装ドラマでもよくある場面だ。

 そろそろお昼時でお腹がすいてきたので、一時退出。朝、コンビニでおにぎりを買ってきたので、地下のロビーの隅で食べようと思った。ところがロビーに下りていくと「飲食禁止」の札を掲げたお姉さんが立っている。え!去年は大丈夫だったのに。仕方ないので屋外に出て、ベンチで食事。天気がよくて幸いだった。

【302室】「南北故宮 国宝薈萃」
『翠玉白菜』はいつものとおり。

ところが301室にあった(と記憶している)『毛公鼎』がないので戸惑った。今回は佐藤信弥さんの『周 - 理想化された古代王朝』で読んだ「故宮三大青銅器」を確認することを目的にしていたので。でも大丈夫、全て別の展示室で見つけた。

【305,307室】「古代青銅器の輝き-中国歴代銅器展」
『毛公鼎』。中国古銅器中最も長文の銘をもつ。

『㝬鍾(宗周鐘)』。

『散氏盤』。

【300,303室】「うつつとまぼろしの間で-故宮所蔵戦国時代から漢代の玉器 特別展」
【304室】「天香茄楠─香玩文化 特別展」

 今回は青銅器と玉器を頑張って見たので、2階の書画、陶磁器は比較的流した。

【202室】「巨幅名画」
【208室】「寄贈名画展」
【204,206室】「婉而通-篆書の物語」
【207室】「紫砂風潮-伝世品及びその他器物」
【203室】「心に適う-明永楽帝の磁器」
【201,205室】「土の百変化-中国歴代陶磁器展」

 最後にミュージアムショップに寄ったが、あまり欲しいものがなかったので、何も買わずに出てきた。しかし、地下のロビーに展示されていた「故宮デザインコンクール」の入賞作品は面白かった。1等賞は真黒な仙草ゼリーにミルクを注ぐと水墨画の景色が現れるというもの。詳細はこちら(中国語ニュースサイト)。

 私は皇帝「朕倦了」皇后「本宮乏了」(どちらも「疲れた」)のアイマスクと、

翠玉白菜ちゃん(2匹のキリギリスつき)が気に入った。ぜひ商品化してほしい。

 午後2時くらいで集中力が途切れたので故宮博物院を出る。相変わらずいい天気だ。MRT淡水線で北投温泉(新北投)へ向かう。温泉というから山の中かと思ったら、全く風情のない駅前だった。それでも公園に沿って歩いていくと、レンガと木造の古風な建築が見えてくる。北投温泉博物館である。

 もとは日本人が開いた公衆浴場だったので、館内にはタイル張りの湯舟も残っている。

 戦後、一時期は廃墟となっていたが、小学校の先生と生徒が郷土の歴史を掘り起こし、地元の人々の努力によって博物館としてリノベーションされたのだそうだ。館内の説明を読んで感動してしまった。

 温泉博物館の隣りの台湾市立図書館北投分館は、2014年にCNNが選ぶ「世界で最も美しい図書館ベスト27」にランクインしたこともある。時間が余ったら、ここでゆっくりしてもいいなと思って、読みかけの本も持っていったのだが、残念ながら休館日で入れなかった。

 台湾駅のフードコートで夕食。地下街直結のスーパーでお土産のパイナップルケーキを仕入れてホテルへ戻る。毎日、比較的早めにホテルへ戻っているのは、20時から2話ずつ放映のドラマ「軍師聯盟」を見たかったため。明日はもう帰国日である。(1/6記)

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台湾旅行2019-20【2日目続き】台北賓館、台湾国立博物館、迪化街

2020-01-01 23:29:30 | ■中国・台湾旅行

 台湾近代建築の旅(今回のテーマ)は始まったばかり。総統府の南側にある司法大廈(写真)、その向かいの台北市立第一女子高級中学は外観だけ。

 続いて台北賓館(旧・台湾総督官邸)を見学する。月1回、総統府の休日見学日に合わせて一般開放日が設けられているという情報をつかんでいたのだ。外観は重厚な雰囲気。屋根はスレート瓦ではないか。

 中に入ると、白と金の壁、豪華なシャンデリア、深紅のカーテンと絨毯、ステンドグラスなど印象が一変する。ここは総督府官邸であると同時に迎賓館を兼ねていたとのこと。皇太子時代の昭和天皇もここに宿泊したことがある。日本庭園もあり。

 最後に建築の沿革・特色を紹介するビデオを見ることができて、台湾の建築学の先生による詳しい解説が面白かった。

 台北賓館の北側、台湾大学附属病院(台大医院)は外観のみ。今回の旅の指南書である片倉佳史先生の『台北・歴史建築探訪』に「参観は自由にできる」と書いてあったけど、敷居が高くて足を踏み入れる勇気が出なかった。ここは森鴎外の長男・森於菟が医学部長をつとめたゆかりの地でもある。同じエリアに「台大医学人文博物館」があるという情報も得ていたのだが、「台湾大学博物館群」のページに祝日は休館とあったので、次の機会を待つことにした。

 続いて二二八和平公園の中にある国立台湾博物館へ。

 ここも約20年前に来たことがあるはずだがよく覚えていない。今回はもっぱら建築意匠に注目。かつては「児玉(源太郎)総督及び後藤(新平)民政長官記念館」と呼ばれた博物館。ドーム天井のステンドグラスには児玉家の家紋「軍配団扇」と後藤家の家紋「下がり藤」が用いられているというのは片倉先生の著書による。

 階段や回廊の腰壁は大理石だと思う。台湾は大理石の産地だが、この建物に限っては全てイタリアから持ち込まれた舶来の大理石が用いられたというのも同書による。

 3階では「発現台湾-重訪台湾博物学与博物学家的年代」という特集展示をやっていて、全く知らなかった日本人の博物学者・人類学者が多数紹介されていて面白かった。日本統治時代を否定するわけでもなく「日本人に感謝」みたいな文脈でもなく、そのひとのルーツにかかわらず、個人の実績を公平に顕彰するスタンスに感じられた。

 道路を挟んで向かい側にある土銀展示館にも入った。メインホールは高い天井を利用して恐竜や古代生物の骨格展示が行われており、「台湾土地銀行」に関する人文歴史的な展示が併存してカオスな状況になっているが、どちらも面白かったけど、いつからこんなふうになったんだろう。

 続いて迪化街へ。何度も歩いているエリアだが、片倉先生の本の地図をたよりに、敢えてメインルートを外れる歩き方をしてみる。延平派出所(旧・太平町2丁目派出所)は二二八事件ゆかりの場所でもある。

 森高砂珈琲店。二二八事件紀念碑に近い交差点にあるので、何度か前を通っている。

 永楽市場に寄り道したが、元旦でほとんどの店が閉まっていた。淡水河に近い裏通りにある李春生紀念教会。現在は観光ルートを外れているが、かつてはこの周辺こそ台湾随一の繁栄を誇っていたという。

 陳天来故居(錦記茶行)。かつての豪商の邸宅。ほとんど人通りのないさびれた裏通りだが、この建物を興味深げに覗き込んで、写真を撮っている若いカップルがいた。

 大稲埕碼頭で夕暮れの淡水河を眺め、民生西路を東へ戻って、新芳春茶行に寄る。最近、大規模なリノベーションをしたらしくて、古い建築の雰囲気はあまりなかったが(道路の反対側から全景を眺めればよかったのかもしれない)、店内は茶器や製茶業に関する展示が行われていて面白かった。

 仁安医院。古い病院建築だというが、全然気づかずに通り過ぎてしまい、振り返って初めて認識した。

 これで予定の行程は終了。実によく歩いた元旦だったが、まだ終わらない! このあと、初めて「士林夜市」に行って夕食にした。(1/5記)

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台湾旅行2019-20【2日目】総統府見学

2020-01-01 10:42:13 | ■中国・台湾旅行

 2020年元旦。台北の天気は、どんよりした曇り空だが、幸い雨は落ちていない。台湾は旧暦で新年を祝うが1月1日だけは国定の休日。ただしこれは新暦の元旦を祝っているのではなくて「中華民国開国記念日」であることは、ネットで調べて初めて知った。

 ホテルで朝食をとり、今日の目的地、総統府へ向かう。実は今年の台湾旅行を年末ではなく正月にあわせたのは、元旦の総統府見学会に参加するためなのだ。見学時間は9時からとあったので、20分前くらいに到着すると、建物の裏側(西側)の博愛路に北から南へ長い列ができていた。

 「憲兵」の黄色いジャンパーを来た職員が手際よく見学者を誘導する。日本人は少なかったと思う。入場時に日本のパスポートを見せると「コンニチワ~ヨウコソ~」と応じてくれた。和気藹々としたムードだが、銃を構えて警備にあたる職員もいた。

 本来の見学ルートは来賓用の正面玄関から建物に入るらしいのだが、混んでいる時間だったので脇の入口から中に入れてくれた。まずは総督府の正面中央のエントランスホールと大階段。正面には孫文の胸像。ドーム型の天井、白亜の壁が清潔で美しい。職員の方が見学者ひとりひとりに赤い巻紙を手渡す。蔡英文総統と陳健仁副総統による「春聯」である(→画像)。

 階段を上がって3階へ。通りすがりの部屋の入口に「恭賀新禧」の春聯が貼ってあり、小さく「蔡英文、陳健仁」の署名が添えてあった。

 3階のメインはこの「大礼堂」。正面には国旗と孫文の肖像。白い壁とふかふかの赤い絨毯の対比が印象的。政府の主要行事や国賓をもてなすパーティに使われるホールだが、置いてある椅子に勝手に座っても全く怒られないのが太っ腹。

 なお、翌日1月2日の朝、台湾では軍用ヘリのブラックホーク(黒鷹)が墜落し、参謀総長ら8人が死亡するという大事故があった。そのニュースで、参謀総長の沈一鳴氏が蔡総統から任命を受けたときの映像が何度も流れていたのが、まさにこの礼堂でのセレモニーだった。

 隣りの「台湾虹庁」は政府主催の宴や報道陣とのインタビューが行われる部屋。ここまでは月1回の休日見学会(元旦に限らない)でのみ入れるエリア。

 続いて1階へ。1階は平日見学(月~金)でいつでも入れる展示エリア。建築の特色・沿革や総統府の日常、写真や絵画など、多様な側面から総統府を紹介する。畏れ多くも勲章や玉璽も。「中華民国之璽」は緑玉(ヒスイ?)に刻まれているのだな(展示は複製)。

 一方で「総統府にはさまざまな職員が働いています」という観点から、制服、自動車修理工具、植木バサミ、食器なども展示されていて面白かった。カリグラファー(書道家)も雇用されていて、重要な社会的イベントにおいて総統や副総統の代筆をつとめるのだという。右筆だなあ。

 また「人民の声を聴く」と題したセクションでは、デモや政治運動の数々が写真パネルで紹介されていた。1990年の野百合学生運動、2014年のひまわり学生運動、そのほか、動物愛護、女性運動、LGBTパレードなども。いまの民進党政権だからできることだと思うが、これには本当に驚いた。展示導入部のキャプションを(正確に訳せないので)書き留めておく。

「人民聚集在総統府前広場/透過集体的力量表達訴求/参与公共事務、推動社会改変/這些喧嘩而多元的声音/表現了台湾的民主/也体現了人民的力量」

 たとえば日本の政府官邸が安保法制の反対運動をこのように紹介することは考えられないものなあ。

 中庭の回廊の壁には、総統府をモチーフにしたアート作品の数々。この蔡英文総統執務の図は、いくらなんでも萌化しすぎだと思うが、ファンアートなので許して。

 総統府公式では、総統も副総統もこんなドット絵になっている。これは総統就任時の記念切手をそのままタイルにしたもの

 見学出口にはこんな大型パネルがあって、片手を上げて執務室から身を乗り出す蔡総統、窓枠に座る陳副総統と写真が撮れる。愛されているなあ。

 総統府は、約20年前の初・台湾旅行でも見学した記憶があるが、何を見たかはあまり覚えていない。民進党の陳水扁氏が総統になったばかりの頃だったが、まだこんな開放的な雰囲気はなかったと思う。英語で案内してくれたボランティア(?)の方が「私は李登輝さんが大好き」と言っていたことだけ覚えている。

 次は台北賓館へ。(1/5記)

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台湾旅行2019-20【初日】羽田→台北

2019-12-31 17:48:06 | ■中国・台湾旅行

 2017年、2018年と連続して12月に台湾旅行に出かけていた。ちょうど仕事が一段落して、休暇が取りやすい時期なのである。今年もそのつもりで考えていたのだが、ちょっと趣向を変えて、大晦日から1月3日まで日本を離れることにした。

 大晦日の昼過ぎに羽田を発ち、台北松山空港着。忠孝新生駅近くのホテルにチェックイン。東京よりかなり暖かいが、風が強く、傘をさそうか迷う程度の小雨がパラついている。初日は移動だけのつもりだったが、まだ時間が早かったので、いつもの龍山寺にお参りに行く。たくさんの善男善女が集まっていた。

 地下鉄の出口付近には、古めかしい風景に似合わない看板。「台北超動漫(台北スーパーアニメーション)」というイベントが12/15まで開催されていたようだ。見たかった。

 龍山寺ではいつもおみくじを引くのを楽しみにしているのだが、この日は、いちばん奥の関帝廟でもおみくじが授与されていることに初めて気づく。引いてみたら「馬伏波征蛮」の「中平」が出た。「君是山中萬戸侯/信知騎馬勝騎牛/今朝馬上看山色/争似騎牛得自由」。解に「要作惺惺成懞憧/誰知懞憧作惺惺/多生巧計須成拙/守己方纔事稱心」という。ネットで調べると、多様な典拠に基づく解説ページ(中国語)がいろいろヒットするが、今ひとつ意味が分からなかった。「馬伏波」は、伏波将軍と呼ばれた馬援のことでよいのかな。中国神籤の世界は奥が深い。

 夕食は新光三越のフードコートで。天気があやしいので早めにホテルへ戻る。テレビをつけたら「延禧攻略」やら「軍師聯盟」やら、古いバージョンの「天龍八部」やら、私の好きな古装ドラマがたくさん放映されていて、時間を忘れて見続けてしまった。深夜0時、ホテルの裏のマンションから、控えめな花火(?)の音と「新年快楽~」という子供たちのはしゃぐ声が聞こえてきて、年を跨ぐ。

(1/5記)

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江南2019【おまけ】ツアーあれこれ

2019-05-09 22:04:37 | ■中国・台湾旅行

 今回のツアー旅行、参加者は14名で、半数はリタイア世代(60歳超)と思われた。70代後半くらいの元気なおばあさんは、中国語教室に通っているとのこと。中国語教室では「フーリンモー」を見ていると聞いて、一瞬、何のことかわからなかったが、ドラマポータルの「楓林網」のことだった。いま『重耳傳奇』と『封神演義』を見ているという。本国でも配信中の最新作ではないか、と驚く。

 もうひとり、70歳前後のおじいさんが古典園林の写真を撮りながら、盛んに「DVDを思い出すなあ」というので、「何のDVDですか?」と聞いたら、『月に咲く花の如く』というドラマを見ているという。『那年花開月正圓』のことだ。思わず、私も見ました、好きですよ、と応じたら、「おれ、2周目なんだよ」と大喜びされた。日本の高齢世代の中国への接し方もずいぶん変わってきている様子。

 中国の生活ぶりで、一番驚いたのは漢服の流行。噂には聞いていたが、ほんとに流行っていた。満洲族の旗袍に由来するチャイナドレスではなくて「漢民族の伝統的な民族服」だという。正確にどの時代のものかよく分からないが、日本人から見ると、七夕の織姫や竜宮城の乙姫のイメージに近い。ゆったりしているので、普通のワンピースやセーターの上から羽織ってもサマになるのがいいと思う。

  丫頭スタイルの小さな女の子。かわいい。

 ためしに楽天サイトで「漢服」を検索したら、5,000円以下で購入できるものが多数。ちょっと本気で欲しい。私が着ると、滅絕師太みたいになるだろうけど。

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江南2019【7日目/最終日】杭州→上海→羽田

2019-05-04 23:26:22 | ■中国・台湾旅行

 最終日は予定を早めて朝7時に杭州のホテルを出発し、3時間弱で上海・浦東空港に到着した。ガイドの陸さんとドライバーの施さんにお別れする。なお、かつては省を超えるたびに車を交換していた時代もあったが、近年は「省際包車」の表示でOKになったみたい。

 帰国便に搭乗し、指定の席に座って出発を待っていると、CAさんが近づいてきて「Today is your birthday?」と聞く。Yesと答えると、東方航空の封筒を渡された。機長とパーサーのサイン入りHappy Birthdayカード。飛行機のかたちをしているのが可愛い。こんなの初めてで嬉しかった。

(5/8記)

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江南2019【6日目】杭州→烏鎮→杭州

2019-05-03 22:53:17 | ■中国・台湾旅行

 中国は4連休の3日目。我々は杭州を出て、江南六大水郷古鎮のひとつ、鳥鎮へ日帰り観光に向かう。ちなみに江南六大水郷とは、周荘、甪直、同里、南潯、西塘、烏鎮を言うそうだ。2004年の江南旅行では同里を訪ね、楽しかった記憶があるので期待していた。

 同里のときと同様、まず烏鎮景区(烏鎮西柵景区だと思う)に入るのに入場券が要る。そのあとは、ぶらぶらするのもよし、遊覧船に乗るのもよし、民俗博物館など、いくつかの有料施設を見学するのもよし、ということになっている。

 しかし古民家群の間の細道はラッシュアワー並みの混雑で、ガイドさんと添乗員さんからは「団体行動します。絶対離れないでください」という厳しい注意の繰り返し。美味しそうなお菓子も見かけたが、気軽に買い物することもできなかった。あと、何も予習していなかったので、茅盾記念館があって驚いた。小説家・茅盾(1896-1981)は、烏鎮の富家の生まれなのだそうだ。

 観光用の藍染工房。展示室、商店もある。

 なお、烏鎮という名前に引っかかるものがあって、あとで調べたら、烏鎮には、その名の由来となった烏将軍廟があるらしい。この烏将軍は実在した人物らしいが、小浜の博物館で烏の顔をした「烏将軍像」を見たときに、いろいろ調べて烏鎮の地名に行き当たったことがあるのだった。今回、烏将軍廟は訪ねなかった。

 再び杭州へ帰着。まだ見ていなかった西湖の風景をようやく目にする。遊覧船で西湖遊覧。水面を渡る風がひんやりして気持ちよい。夏ではないので、蓮の花がないのが残念だが、柳の緑の美しさは最高である。

 名勝・三潭印月。

 ツアー最後の夕食は、西湖の眺めも楽しめる杭州随一の名店・楼外楼。2004年もここに来ているはず。

 昨日に続いて、再び乞食鶏(叫化鶏)をいただく。東坡肉も美味しかった。日本人ツアーに慣れたガイドさんで、一皿の量を少なめにし、料理の種類を多めにしてくれているのがありがたかった。なお、ツアーを通じてビールは1本30元。むかしはレストランで20元、街で買えば3元ということもあったので、物価の上昇ぶりがよく分かる。

 楼外楼の隣りは篆刻専門の学術団体西泠印社。前回はここで朱肉を買ったなあ。

  これで観光終了。ホテルに戻ったあと、「前の道を10分くらい歩くと西湖です」というので、買い物がてら散歩してみた。銀座か渋谷かというような繁華街で、高級ブランドショップばかり目立って、私の行きたいスーパーマーケットはなかった。10分ほどで、確かに西湖の岸辺に到着したが、水芸とイルミネーションを組み合わせたショーが行われていて、全く岸辺に近づけない大混雑である。10分ほどすると、ショーが終わって人々が散り始めた。日本の花火大会の後のようだった。杭州にも地下鉄がつくられ、高速鉄道と結ばれていることが分かった。これは杭州も個人旅行が可能かもしれない。中国の変化を目の当りにした今回の旅行だった。

(5/8記)

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