■太田記念美術館 特別展『月岡芳年 月百姿』(2017年9月1日~9月24日)
『妖怪百物語』に続く月岡芳年展の第2部。『月百姿(ひゃくし)』は明治18-25年(1885-92)に刊行された、芳年(1839-1892)最晩年の傑作である。100点全てを一挙に見られる機会はあまりないという。確かに、実はけっこう初めて見る作品があった。歴史絵・物語絵もあれば、風俗画もあって面白かった。「たのしみは夕顔だなの夕涼み」には、久隅守景の『夕顔棚納涼図」によく似た光景が描かれている。「たのしみは」の和歌は橘曙覧ふうだ。歴史上の人物は、ときどき意外な人物がセレクトされている。芳年の好みなのか、当時の一般常識なのか、気になるところだ。中国人もずいぶん採られていて、孔子の弟子の子路が入っていることに驚いた。そういえば、清盛がいなかったなあ。
■東京国立博物館・東洋館 イベント『博物館でアジアの旅 マジカル・アジア』(2017年9月5日~9月18日)
これは大変おもしろい試み。「チベットの仏教と密教の世界」「アジアの祈り」「唐三彩」の3つのテーマで特集展示を行うほか、一般の展示品でも「マジカル・アジア」に関連するものには、特別な解説プレートが添えられて、注目を促している。9月5日~9月18日は、イベント集中期間と名打って、7人の研究員が東洋館を案内する「セブンワンダーツアー」も行われた。私は、9月18日(祝)のツアーに参加するつもりで行ったのだが、あまりの待ち人数の多さに驚いて、逃げ帰ってしまった。
最も注目を集めている展示品は『呪咀人形(呪いの藁人形)』である。明治10年(1877)、上野公園でイチョウの木に釘で打ち付けられているのを発見されたもの。気になって調べたら、明治10年には第1回内国勧業博覧会が上野公園で開かれている。博覧会閉会後の利用を目的として煉瓦造の美術館が建てられているが、コンドル設計の本館はまだない。当時、いったい誰がどういう判断で、こんなものを「収集」したのか、ぜひ知りたい。なお、8室(中国絵画)は『不思議な聖者たち-仙人と羅漢-』(2017年9月5日~10月15日)の特集ですごくいい。岐阜・永保寺の『千手観音図軸 』(南宋)が出てるし、『寿星図軸』(元)が出てるし、どれもあやしくてうっとりする。
・地下の13室(いちばん奥のどんづまり)にひっそり展示されているのが、またいい。
本館・15室(歴史の記録)「徳川将軍家の栄華」(2017年8月8日~10月1日)もあわせて。御座船の図が好き。
・上総丸
・天地丸
■サントリー美術館 六本木開館10周年記念展『おもしろびじゅつワンダーランド2017』(2017年8月1日~8月31日)
夏休みにあわせて、親子で楽しめる「ゆるい」展覧会。実際、子どもが多くて、お母さんも気兼ねなくおしゃべりしてて、楽しそうだった。しかし、狩野探幽筆『桐鳳凰図屛風』や久々の『舞踊図』六面(これ大好き!)を見ることができたので満足。『鼠草子絵巻』5巻がどーんと開いていたのもありがたく、ふだんあまり展示されない場面を見ることができた。ちょっと驚いたのは、鼠の権頭(ごんのかみ)の正体に疑いを持った姫が、罠を仕掛けて権頭をはめ、正体を見破ること。そして逃げ去った姫のことを権頭は忘れられないのだが、占ってもらったら、姫はもう他の男と結婚していた。いや爆笑、姫君、強い。
・婚礼の席では可憐な姫君
・罠にかかった夫を見て、冷静に侍女と相談している
■国立西洋美術館 アルチンボルド展(2017年6月20日~9月24日)
まさかアルチンボルド(1526-1593)の作品を日本で見られる日が来ようとは、30年前には考えてもみなかった。クラナッハもブリューゲルの『バベルの塔』も驚きだったけれど、これはまた別種の驚きである。このひとの「人面」見立てシリーズ、草花や野菜を使ったものが有名だけど、魚や獣(!)を使ったものもあることを初めて知った。動物を集めて構成した人面は、かなり国芳を思わせる。
■弥生美術館 『命短し恋せよ乙女~マツオヒロミ×大正恋愛事件簿~』(2017年7月1日~9月24日)
最近、攻めている感じのする美術館のひとつ。大正時代、世の中を賑わせた恋愛事件の主要人物を紹介する。だいたい写真が残っていて、女性たちの美貌に見とれる。平塚らいてうは、若い頃もいいけど年を取ってからの顔もいいなあ。柳原白蓮も美しい。そして、このひとも年取ってからの顔がいいのを見て、好感度があがった。
※『狩野元信展』(前期)と『江戸の琳派展』は、個別の記事を書く機会がまだあると思って、次回とする。(9/30写真追加)
『妖怪百物語』に続く月岡芳年展の第2部。『月百姿(ひゃくし)』は明治18-25年(1885-92)に刊行された、芳年(1839-1892)最晩年の傑作である。100点全てを一挙に見られる機会はあまりないという。確かに、実はけっこう初めて見る作品があった。歴史絵・物語絵もあれば、風俗画もあって面白かった。「たのしみは夕顔だなの夕涼み」には、久隅守景の『夕顔棚納涼図」によく似た光景が描かれている。「たのしみは」の和歌は橘曙覧ふうだ。歴史上の人物は、ときどき意外な人物がセレクトされている。芳年の好みなのか、当時の一般常識なのか、気になるところだ。中国人もずいぶん採られていて、孔子の弟子の子路が入っていることに驚いた。そういえば、清盛がいなかったなあ。
■東京国立博物館・東洋館 イベント『博物館でアジアの旅 マジカル・アジア』(2017年9月5日~9月18日)
これは大変おもしろい試み。「チベットの仏教と密教の世界」「アジアの祈り」「唐三彩」の3つのテーマで特集展示を行うほか、一般の展示品でも「マジカル・アジア」に関連するものには、特別な解説プレートが添えられて、注目を促している。9月5日~9月18日は、イベント集中期間と名打って、7人の研究員が東洋館を案内する「セブンワンダーツアー」も行われた。私は、9月18日(祝)のツアーに参加するつもりで行ったのだが、あまりの待ち人数の多さに驚いて、逃げ帰ってしまった。
最も注目を集めている展示品は『呪咀人形(呪いの藁人形)』である。明治10年(1877)、上野公園でイチョウの木に釘で打ち付けられているのを発見されたもの。気になって調べたら、明治10年には第1回内国勧業博覧会が上野公園で開かれている。博覧会閉会後の利用を目的として煉瓦造の美術館が建てられているが、コンドル設計の本館はまだない。当時、いったい誰がどういう判断で、こんなものを「収集」したのか、ぜひ知りたい。なお、8室(中国絵画)は『不思議な聖者たち-仙人と羅漢-』(2017年9月5日~10月15日)の特集ですごくいい。岐阜・永保寺の『千手観音図軸 』(南宋)が出てるし、『寿星図軸』(元)が出てるし、どれもあやしくてうっとりする。
・地下の13室(いちばん奥のどんづまり)にひっそり展示されているのが、またいい。
本館・15室(歴史の記録)「徳川将軍家の栄華」(2017年8月8日~10月1日)もあわせて。御座船の図が好き。
・上総丸
・天地丸
■サントリー美術館 六本木開館10周年記念展『おもしろびじゅつワンダーランド2017』(2017年8月1日~8月31日)
夏休みにあわせて、親子で楽しめる「ゆるい」展覧会。実際、子どもが多くて、お母さんも気兼ねなくおしゃべりしてて、楽しそうだった。しかし、狩野探幽筆『桐鳳凰図屛風』や久々の『舞踊図』六面(これ大好き!)を見ることができたので満足。『鼠草子絵巻』5巻がどーんと開いていたのもありがたく、ふだんあまり展示されない場面を見ることができた。ちょっと驚いたのは、鼠の権頭(ごんのかみ)の正体に疑いを持った姫が、罠を仕掛けて権頭をはめ、正体を見破ること。そして逃げ去った姫のことを権頭は忘れられないのだが、占ってもらったら、姫はもう他の男と結婚していた。いや爆笑、姫君、強い。
・婚礼の席では可憐な姫君
・罠にかかった夫を見て、冷静に侍女と相談している
■国立西洋美術館 アルチンボルド展(2017年6月20日~9月24日)
まさかアルチンボルド(1526-1593)の作品を日本で見られる日が来ようとは、30年前には考えてもみなかった。クラナッハもブリューゲルの『バベルの塔』も驚きだったけれど、これはまた別種の驚きである。このひとの「人面」見立てシリーズ、草花や野菜を使ったものが有名だけど、魚や獣(!)を使ったものもあることを初めて知った。動物を集めて構成した人面は、かなり国芳を思わせる。
■弥生美術館 『命短し恋せよ乙女~マツオヒロミ×大正恋愛事件簿~』(2017年7月1日~9月24日)
最近、攻めている感じのする美術館のひとつ。大正時代、世の中を賑わせた恋愛事件の主要人物を紹介する。だいたい写真が残っていて、女性たちの美貌に見とれる。平塚らいてうは、若い頃もいいけど年を取ってからの顔もいいなあ。柳原白蓮も美しい。そして、このひとも年取ってからの顔がいいのを見て、好感度があがった。
※『狩野元信展』(前期)と『江戸の琳派展』は、個別の記事を書く機会がまだあると思って、次回とする。(9/30写真追加)