○京都国立博物館 古事記1300年 出雲大社大遷宮 特別展覧会『大出雲展』(2012年7月28日~9月9日)
会場に入って、思ったよりも混んでいるな、という感じがした。日曜日の午後、屋外が異常に暑かったから? いや、やっぱり「古事記」とか「神話」って、老若男女問わず、ストレートにアピールするのかな。会場に入る前に、水面から首をもたげるヤマタノオロチを斬り鎮めるスサノオの図を描いた巨大な「こしらえもの」(パネル?バナー?)があって、カッコよくて、しばし見とれた。会場に入れば元ネタがあるのかな?と思っていたが、なかったような気がする。いま画像検索して、月岡芳年の『日本略史 素戔嗚尊』らしいと分かったので書いておく。
それにしても、冒頭に原田直次郎の『素盞嗚尊八岐大蛇退治画稿』って、クセ球すぎるだろう、と思った。原田直次郎といえば『騎龍観音』の作者、そして森鴎外の友人でもある。この作品は、キャンパスを破って(?)顔を出す犬。解説ボードに「(発表時は)評価が分かれた」みたいなことが、しれっと書かれていて、そうだろうなあ、と可笑しかった。次は直球で、大須観音宝生院所蔵の『古事記』最古の写本(国宝)。いわゆる「真福寺本古事記」であるが、博物館や美術館が、こうした写本にキャプションをつける場合、文学や歴史研究で使う「○○本」という慣習的な呼び名を用いないのは何故なんだろう。
第1室は、由緒正しい貴重な写本と江戸・明治の絵画が雑多に置かれていて、ややカオス。楊州周延のスサノオ図の解説だったか、日本神話の神々を古代豪族の装束で描くようになったのは、明治以降であるという説明があって、納得した。
続いて、埴輪。ほとんどが島根県からの出陳。楽しかった。ポスターにもなっている「見返り鹿」は、めちゃくちゃ可愛い。ポスターだと(腹の欠損部分を隠すためか)立体感が分からない構図になっているのが残念。私の埴輪概念をくつがえすような、大きな力士埴輪(素朴な兵馬俑みたいだった)にも目を見張った。
勾玉は緑色が一般的で、赤色(瑪瑙)は首長権のしるしと解説されていた。そういえば、ドラマ「テンペスト」の「馬天ノロの勾玉」は赤色だったな。勾玉ではないけど『契丹』展の高貴な埋葬者も、大きな赤瑪瑙を首飾りにしていたのが印象的だった。それから、銅鐸、銅矛、銅剣。日本古代史の必須アイテムが、ひととおり揃う。途中に、出雲大社の復元模型あり(写真撮影可)。凄すぎて冗談にしか思えないが、鎌倉時代の宇豆柱(うずばしら)の遺物や江戸時代の勝男木を目のあたりにすると、笑い事ではない迫力に圧倒される。
さて、このあと、何があるんだろう?と思っていたら「出雲の神と仏」のセクション。これは、思いのほか、よかった。島根県の仏像なんて、ほとんど見にいったことがないものなあ…。こんな機会に拝観できるのはまことにありがたい。仏谷寺の観音菩薩立像は、腰高で堂々とした体躯の厚み、霊威を感じさせる真剣な表情が、平安時代(10世紀)の古仏らしくて、私好み。横田八幡宮の騎馬神像も愛らしかった。東京に来てくれたら、また見に行くのだが、どうかしら。
最後は出雲大社に伝えられた神宝類で、狩野安成筆『舞楽図屏風』が楽しい。実は私、出雲大社には行ったことがないのである。古事記編纂1300年の今年、そして約60年ぶりで出雲大社大遷宮が行われる平成25年は、またとない好機かもしれない。「神話博しまね」もやっているみたいだし、行ってみるか。
会場に入って、思ったよりも混んでいるな、という感じがした。日曜日の午後、屋外が異常に暑かったから? いや、やっぱり「古事記」とか「神話」って、老若男女問わず、ストレートにアピールするのかな。会場に入る前に、水面から首をもたげるヤマタノオロチを斬り鎮めるスサノオの図を描いた巨大な「こしらえもの」(パネル?バナー?)があって、カッコよくて、しばし見とれた。会場に入れば元ネタがあるのかな?と思っていたが、なかったような気がする。いま画像検索して、月岡芳年の『日本略史 素戔嗚尊』らしいと分かったので書いておく。
それにしても、冒頭に原田直次郎の『素盞嗚尊八岐大蛇退治画稿』って、クセ球すぎるだろう、と思った。原田直次郎といえば『騎龍観音』の作者、そして森鴎外の友人でもある。この作品は、キャンパスを破って(?)顔を出す犬。解説ボードに「(発表時は)評価が分かれた」みたいなことが、しれっと書かれていて、そうだろうなあ、と可笑しかった。次は直球で、大須観音宝生院所蔵の『古事記』最古の写本(国宝)。いわゆる「真福寺本古事記」であるが、博物館や美術館が、こうした写本にキャプションをつける場合、文学や歴史研究で使う「○○本」という慣習的な呼び名を用いないのは何故なんだろう。
第1室は、由緒正しい貴重な写本と江戸・明治の絵画が雑多に置かれていて、ややカオス。楊州周延のスサノオ図の解説だったか、日本神話の神々を古代豪族の装束で描くようになったのは、明治以降であるという説明があって、納得した。
続いて、埴輪。ほとんどが島根県からの出陳。楽しかった。ポスターにもなっている「見返り鹿」は、めちゃくちゃ可愛い。ポスターだと(腹の欠損部分を隠すためか)立体感が分からない構図になっているのが残念。私の埴輪概念をくつがえすような、大きな力士埴輪(素朴な兵馬俑みたいだった)にも目を見張った。
勾玉は緑色が一般的で、赤色(瑪瑙)は首長権のしるしと解説されていた。そういえば、ドラマ「テンペスト」の「馬天ノロの勾玉」は赤色だったな。勾玉ではないけど『契丹』展の高貴な埋葬者も、大きな赤瑪瑙を首飾りにしていたのが印象的だった。それから、銅鐸、銅矛、銅剣。日本古代史の必須アイテムが、ひととおり揃う。途中に、出雲大社の復元模型あり(写真撮影可)。凄すぎて冗談にしか思えないが、鎌倉時代の宇豆柱(うずばしら)の遺物や江戸時代の勝男木を目のあたりにすると、笑い事ではない迫力に圧倒される。
さて、このあと、何があるんだろう?と思っていたら「出雲の神と仏」のセクション。これは、思いのほか、よかった。島根県の仏像なんて、ほとんど見にいったことがないものなあ…。こんな機会に拝観できるのはまことにありがたい。仏谷寺の観音菩薩立像は、腰高で堂々とした体躯の厚み、霊威を感じさせる真剣な表情が、平安時代(10世紀)の古仏らしくて、私好み。横田八幡宮の騎馬神像も愛らしかった。東京に来てくれたら、また見に行くのだが、どうかしら。
最後は出雲大社に伝えられた神宝類で、狩野安成筆『舞楽図屏風』が楽しい。実は私、出雲大社には行ったことがないのである。古事記編纂1300年の今年、そして約60年ぶりで出雲大社大遷宮が行われる平成25年は、またとない好機かもしれない。「神話博しまね」もやっているみたいだし、行ってみるか。