そろそろ年内の展覧会めぐりも終了なので、記憶を手繰りながら、ひとことメモ。
■府中市美術館 開館20周年記念『動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり』(後期:2021年10月26日~11月28日)
前期を楽しんだ展覧会だが、後期も行ってきた。前期の冒頭にあった若冲の『象と鯨図屏風』がなくなるのは分かっていたので、代わりに何が来るかな?と思っていたら、涅槃図がたくさん並んでいた。日本の涅槃図は、時代が下るにつれて動物の種類が増えるのだそうだ。京博のトラりんこと、光琳の『竹虎図』には久しぶりに対面。頭の大きいゆるキャラのイメージが強くなってしまったが、実は小顔で肩幅が広く、ボディビルダーみたいに逞しい体形であることを再認識した。
■日本民藝館 『棟方志功と東北の民藝』(2021年10月1日~11月23日)
青森に生まれた版画家・棟方志功の代表作『東北経鬼門譜』『善知鳥版画巻』とともに、東北の民藝を展示。背当(ばんどり)、刺子、曲げわっぱ、春慶塗や浄法寺塗、三春人形、自在鉤、鉄瓶など。オシラサマや、藁を編んだ肥え籠もあった。
■根津美術館 重要文化財指定記念特別展『鈴木其一・夏秋渓流図屏風』(2021年11月3日~12月19日)
鈴木其一の異色作『夏秋渓流図屏風』を「江戸におけるヒノキの系譜」「蝉のいる醒めた画面」「渓流の前景化」などの表現要素に分割し、それぞれ、どこから来たかを探る。「渓流の前景化」が応挙に始まるというのは、言われてみれば納得。「炉開き-祝儀の茶会-」には、茶道具のほか、清めの塩と鰹のけずり節(海の幸)、洗い米(山の幸)を盛り合わせたもの(炉に撒く)やお神酒の乗った三宝が飾られていて、面白かった。
■神奈川近代文学館 特別展『樋口一葉展-わが詩は人のいのちとなりぬべき』(2021年10月2日~11月28日)
一葉はむかしから好きな作家で、高校の教員をしていたとき、「たけくらべ」と一葉の日記を教材に使ったことがある。なので、古い友人に会うような懐かしさを感じた。作品の印象はあまり変わらないのに、日記や書簡に残された一葉の言葉には、以前よりも深く気持ちを抉られる点が多かった。あらためて驚いたのは、原稿や日記、書簡など、多様な資料がよく残っていることだ(現在は日本近代文学館の所蔵が多い)。貧窮生活の中、妹の邦子が姉の資料を護り伝えたという話に感銘を受けた。
■古代オリエント博物館 秋の特別展『女神繚乱-時空を超えた女神たちの系譜-』(2021年10月2日~12月5日)
池袋サンシャインシティにある美術館。20年か30年ぶりの訪問だと思う。古今東西で崇拝された女神たちの系譜をたどり、人類史における女神信仰の存在形態とその意義を問いかける展示で、先月、龍谷ミュージアムで見た『アジアの女神たち』の記憶を補完することができた。
■国学院大学博物館 特別展『「日本書紀」撰録1300年-神と人とを結ぶ書物-』(2021年9月16日~11月13日)
■国学院大学博物館 企画展『アイヌプリ-北方に息づく先住民族の文化-』(2021年11月18日~2022年1月22日)
このところ、すっかり同館のリピーターになっている。テーマが私の趣味に合うのと、国学院大学図書館の協力のもと、貴重な文献資料を見ることができるのが嬉しいのだ。『日本書紀』展では、神宮文庫、熱田神宮、三島大社など、全国から貴重な古写本が勢ぞろいしていた。『アイヌプリ』には、金田一記念文庫(金田一京助博士旧蔵、同大学の北海道短期大学部が保管)の貴重な資料が多数出ており、先日、歴博の『学びの歴史像』で見て気になっていた、アイヌ語通詞の上原熊次郎の名前もあった。
■東京藝術大学大学美術館・正木記念館2階 『「髙村光雲・光太郎・豊周の制作資料」展』(2021年12月10日~12月19日)
髙村光雲(1852-1934)、光雲の長男・光太郎(1883-1956)、光太郎の弟・豊周(1890-1972)が使用した原型、道具、下図・スケッチ等を展示する。光雲の彫刻作品は、そんなにたくさん見たことがないので、石膏原型類を興味深く眺めた。道具類は、刃のかたちが少しずつ違う彫刻刀の山。スタッフの方(学生さん?)が「刃物マニアは絶対見た方がいい展示」と話していた。あと、会場に「高村さん」と呼ばれる男性がいらしていたが、ご一族だろうか?