〇画:綱本武雄、文:酒井一光、高岡伸一、江弘毅『大阪名所図解』 140B(イチヨンマルビー) 2014.9
少し前に買った本だが読めていなかったので、先日、大阪に向かう新幹線の中で読んだ。大阪の歴史的建築物を精密な線で描いたスケッチ画とともに紹介するもの。歴史的建築物と言っても、本格的に「歴史的」な大阪城、住吉大社、四天王寺などもあれば、戦前のレトロ建築、老舗から喫茶・バー、さらに現代建築の関西国際空港、太陽の塔(!)も取り上げられている。詰め合わせバラエティ感が楽しい。
私は関東の生まれだが、年齢とともに大阪に行く機会が増え、本書に取り上げられた建築・ランドマークも、6~7割は見たことがあると思う。しかし、たとえば大阪城でも、北西隅の乾櫓がL字型(矩折)なのは、櫓を大きく見せる工夫であるなどというポイントや、他の城郭に現存例のない焔硝蔵(火薬庫、1685年竣工)とか、知らなかった見どころを教えられた。四天王寺の五重塔は全くつまらないと思っていたが、姿かたちは四天王寺創建当時の時代考証を踏まえつつ、たび重なる焼失を反省して「不燃建築である鉄筋コンクリート造を選択」したという話を聞くと感慨深いものがある。先代は、昭和20年の空襲で焼けているのだな。大阪は火災の多い町だったのだ。また、大阪天満宮の「水平に連なる屋根」というのも気づいていなかった。
大阪の都市には「カド丸」建築が多い。カド丸とは外側の角が丸い建築のことで、著者(高岡伸一)が勝手に名づけてみたのだという。私がすぐに思い出したのは、大阪証券取引所ビル(カド丸部分に五代友厚像が立っている)と超高層の中之島フェスティバルタワーくらいだが、時代を超えて受け継がれているのが面白い。芝川ビルとかオペラ・ドメーヌ・高麗橋とか、見に行きたいなあ。
橋の紹介も面白かった。歩行者にとってのランドマークとなる橋頭堡だけでなく、橋桁、橋脚、さらに橋裏のスケッチまであって、橋好きの心がそそられる。大阪には好きな駅も多い。本書に取り上げられている御堂筋線の心斎橋駅、北大阪急行の千里中央駅、南海なんば駅のなんばガレリア、阪急梅田駅も好きだ。南海や阪急の堂々とした「終着駅」らしさは、東京にはあまりないものである。むかし東横線の渋谷駅がそんな感じだったのに、なくなってしまった。大阪でも駅舎や駅ビルの建て替えが相次いでいる。どのように生まれ変わるにしろ、大阪の顔として、人をワクワクさせる空間であってほしい、という本書のエールに同意する。
本書は「大阪的建築」として、大丸心斎橋店本館、通天閣、太陽の塔、味園ビル(かつてのキャバレー「ユニバース」、これは知らなかった)、そして2本の超高層ビルを空中庭園でつないだかたちの梅田スカイビルをあげている。単に「すごい」建築ではなく、「何もそこまでやらんでも…」という可笑しみという点で「どや顔」ならぬ「どや建築」と説明されている。通天閣や太陽の塔は、さすがに見慣れた大阪の風景の一部になっているが、梅田スカイビル(1993年建設)を初めて見たときはびっくりした。中華圏や中近東ならともかく、日本にこんなインパクトの強い建築があるとは思ってもいなかった。今でも車窓にこのビルが見えると、ああ大阪だと感嘆する。なお、実は本書が選んだ「どや建築」の設計者には、ひとりも大阪人が含まれていないというのも新鮮な発見だった。
本書には、大阪の喫茶店や飲食店も紹介されている。御堂筋のはり重カレーショップは、たぶん通りかかって気になったお店だが、入ったことはない。今度ぜひ入ってみよう。中之島のリーガロイヤルホテルにあるという、バーナード・リーチが設計したというリーチバーも、一生に一度くらい行ってみたい。
少し前に買った本だが読めていなかったので、先日、大阪に向かう新幹線の中で読んだ。大阪の歴史的建築物を精密な線で描いたスケッチ画とともに紹介するもの。歴史的建築物と言っても、本格的に「歴史的」な大阪城、住吉大社、四天王寺などもあれば、戦前のレトロ建築、老舗から喫茶・バー、さらに現代建築の関西国際空港、太陽の塔(!)も取り上げられている。詰め合わせバラエティ感が楽しい。
私は関東の生まれだが、年齢とともに大阪に行く機会が増え、本書に取り上げられた建築・ランドマークも、6~7割は見たことがあると思う。しかし、たとえば大阪城でも、北西隅の乾櫓がL字型(矩折)なのは、櫓を大きく見せる工夫であるなどというポイントや、他の城郭に現存例のない焔硝蔵(火薬庫、1685年竣工)とか、知らなかった見どころを教えられた。四天王寺の五重塔は全くつまらないと思っていたが、姿かたちは四天王寺創建当時の時代考証を踏まえつつ、たび重なる焼失を反省して「不燃建築である鉄筋コンクリート造を選択」したという話を聞くと感慨深いものがある。先代は、昭和20年の空襲で焼けているのだな。大阪は火災の多い町だったのだ。また、大阪天満宮の「水平に連なる屋根」というのも気づいていなかった。
大阪の都市には「カド丸」建築が多い。カド丸とは外側の角が丸い建築のことで、著者(高岡伸一)が勝手に名づけてみたのだという。私がすぐに思い出したのは、大阪証券取引所ビル(カド丸部分に五代友厚像が立っている)と超高層の中之島フェスティバルタワーくらいだが、時代を超えて受け継がれているのが面白い。芝川ビルとかオペラ・ドメーヌ・高麗橋とか、見に行きたいなあ。
橋の紹介も面白かった。歩行者にとってのランドマークとなる橋頭堡だけでなく、橋桁、橋脚、さらに橋裏のスケッチまであって、橋好きの心がそそられる。大阪には好きな駅も多い。本書に取り上げられている御堂筋線の心斎橋駅、北大阪急行の千里中央駅、南海なんば駅のなんばガレリア、阪急梅田駅も好きだ。南海や阪急の堂々とした「終着駅」らしさは、東京にはあまりないものである。むかし東横線の渋谷駅がそんな感じだったのに、なくなってしまった。大阪でも駅舎や駅ビルの建て替えが相次いでいる。どのように生まれ変わるにしろ、大阪の顔として、人をワクワクさせる空間であってほしい、という本書のエールに同意する。
本書は「大阪的建築」として、大丸心斎橋店本館、通天閣、太陽の塔、味園ビル(かつてのキャバレー「ユニバース」、これは知らなかった)、そして2本の超高層ビルを空中庭園でつないだかたちの梅田スカイビルをあげている。単に「すごい」建築ではなく、「何もそこまでやらんでも…」という可笑しみという点で「どや顔」ならぬ「どや建築」と説明されている。通天閣や太陽の塔は、さすがに見慣れた大阪の風景の一部になっているが、梅田スカイビル(1993年建設)を初めて見たときはびっくりした。中華圏や中近東ならともかく、日本にこんなインパクトの強い建築があるとは思ってもいなかった。今でも車窓にこのビルが見えると、ああ大阪だと感嘆する。なお、実は本書が選んだ「どや建築」の設計者には、ひとりも大阪人が含まれていないというのも新鮮な発見だった。
本書には、大阪の喫茶店や飲食店も紹介されている。御堂筋のはり重カレーショップは、たぶん通りかかって気になったお店だが、入ったことはない。今度ぜひ入ってみよう。中之島のリーガロイヤルホテルにあるという、バーナード・リーチが設計したというリーチバーも、一生に一度くらい行ってみたい。