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「岸辺の旅」 黒沢清監督 日仏 ◯ ☆
カンヌ映画祭で「ある視点」部門グランプリ受賞作です。
3年間失踪していた夫優介(浅野忠信)が突然帰ってきました。探し疲れていた妻瑞希(深津絵里)は喜びますが、夫はすでに死んでいたのです。そしてふたりは優介が死んでから妻の元へたどり着くまでにお世話になった人々を尋ねるたびに出るのでした。自分の死を受け入れられず出て行った妻を待っている老人(小松政夫)、12歳で死んだ妹を叩いてしまったことを後悔し続けている女性、死んだことが受け入れられず妻を苦しめる亡霊の夫など、優介を通して瑞希はそれらの人と出会います。そして、それぞれの苦しみをふたりで溶かしていくのでした。やがて瑞希も優介の死を受け入れ、見送ることになるのでした。
死んでいるとは言っても姿は全く普通で食べ物も食べるし生きている時と変わらない幽霊なので不気味さはほとんどありません。優介が田舎の集会所で宇宙についての講義をしますが、その話を聞いていると、生きていることと死んであちらの世界へ行ってしまったことと、137億年の時とを重ねるとそれほど変わらないのかと思えます。深津と浅野、そして出演者それぞれの演技がすばらしい作品です。
タバコは、なし。無煙です。