日本を救ったリフレ派経済学 (日経プレミアシリーズ) | |
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日本経済新聞出版社 |
先日飛行機に乗った際に、一気に読んだ本である。結論から言うと、アベノミクス(金融政策、財政出動、成長戦略)と消費増税は、全く別物である。最近、景気が再び落ち込んでいるが、これは消費増税によるマイナスで、アベノミクスによるプラスを打ち消すほどの大きさ、だということだ。この本は、10%消費増税の見送り以前に書かれたものだが、著者の気持ちを推定すると、消費税の10%見送りは妥当だ、ということ。
難しいのは成長戦略。本書によると成長戦略は、無数の吹き矢の集合体だという。安倍総理はダボス会議で、成長戦略として、「電力市場の自由化」、「都心での容積率の緩和」、「TPPの参加」、「法人税減税」、「女性の活用」などを上げた。
成長戦略とは、日本全体のパイが大きくなることだ。国内で誰かの需要を誰かが奪うだけでは±ゼロで日本全体としては成長しない。各々、違う話だが、一つずつ見ていこう。
「電力市場の自由化」、自由化するといろいろな事業者が参入してきて、電力料金が安くなるという。しかし、自由化されても需要全体は増えない。自由化されたからさあ、電力を沢山使おうとはならない。電力料金は安くはなるが、それは誰かの需要を誰かが奪っているだけだ。国内競争は×。海外から輸入する原料が少なくなるか安くなることが成長戦略となる。太陽光で、輸入原油分を賄うのは○。エネファームのように少ない燃料で、冷暖房や電力を作る、使用方法の高度化の効果があるものは○。合わせると△か。
「都心での容積率の緩和」、これは新しい高いビルが建つ可能性が大だ。もっとも都心に住む人には環境は悪くはなるが、これは我慢してもらうとして、日本全体の需要増で○。
「TPP」、こちらは輸入、輸出がほとんどトントンで、しかも非関税障壁が取り払われる。外資が自由化され、外国資本が国内インフラ企業を買収し利益を海外に持って行ってしまう。また外国人労働者の進出などで、日本人の全体給与は確実に減少するため×。
「法人税減税」、こちらは輸出企業の海外への移転を防ぐ効果があるが、減税分を内部留保してしまう可能性があるため△。
最後「女性の活用」、規制を緩和したら、急に女性の需要が増えることはない。需要より供給が増えるだけで、総人件費は変わらず、一人当たりの平均給与は減る。ただし、働いた女性は消費意欲は旺盛になるから、こちらはプラス。差引△。
一口に成長戦略とはいうが、一つ一つ見ていかないと、ほんとに日本のGDPに寄与するか、わからないね。