逆境経営―――山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法 | |
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昨年見学した獺祭の工場見学の際、購入した旭酒造の社長が書かれた本の感想である。中小企業診断士の学習で、企業経営には4Pがあると教わった。4Pとは、製品(プロダクト)、価格(プライス)、店舗・流通(プレイス)、販売促進(プロモーション)で、製造販売の検討の際に必要な要素を表す。私も便利でよく使っている。獺祭についてもこの4Pで考えてみた。
まず製品。獺祭の主力製品は「23」、精米歩合が23%、50%以下が大吟醸だからその数字はすごい。なんでも日本一とかいう、超高級品である。私も獺祭「その先へ」を試飲したが、フルーティで、ワインを飲んでいるようなスッと喉を通る喉越しだった。かなり製品にはこだわった差別化をしている。
そして価格。獺祭は言わずと知れた、高価格製品である。「その先へ」は1本3万円だ。フランスの高級料理店では、ワインも高級品を出す。ところが日本酒はこんな高級品はないため、高級料理には合わない安酒、となっていたそうだ。これに対抗して価格設定されたものそうだ。
さらに店舗・流通。獺祭の工場は山口県の山の中。店舗では勝負できない。周辺の人口は少なく、ここも市場が成立しにくい。そこで主な市場は、大都市だ。さらにガツンと来る喉越しが好きな、酒飲みをターゲットにしていない。ターゲットは、女性と海外だ。これも競合しないで売り上げを伸ばす手法だ。
最後の販売促進。ターゲットの東京やパリなどには店を出している。しかしテレビCMなど派手な広告宣伝はしていない。多いのはSNSなどによる口コミやマスコミで、取材したら勝手に情報を流して、広告になっていることだ。
この獺祭、現在、原料米の山田錦がネックになっているそうだ。それで生産量が増やせず、流通段階で品薄になってる。在庫が不要な羨ましい商品だ。ただ、中には杜氏が作っていない酒は酒じゃない、ウチは獺祭は売らない、といった小売店もあるそうだ。これも逆に宣伝広告になりそうな話である。農家の皆さん、山田錦、作ってくださいな。