むかし、男ありけり~ で始まる物語、これが伊勢物語である。名前は聞いてはいたが、どんな物語なんだろうと思っていた。伊勢とつくから、伊勢神宮か、伊勢地方か、伊勢という名前の人の物語か、表紙はたいてい十二単だから、王朝ものだろとうとも思っていた。
結果、物語は、中世の恋愛ものだ。むかし、男ありけりは、昔こんな男がいた、という伝聞形式なだけだ。内容はほぼすべて恋愛もの。考えてみると、現代でも流行歌などは、ほぼ男女の恋愛がテーマだ。我々庶民は、1千年前から変っていないんだねえ。
この物語、読むきっかけは、この物語に、「斎王」が登場すると聞いたからだ。69段の1,狩りの使恋する女は斎王(いつきのみや)という章だ。
朝廷の使いで伊勢に国に行った男に、斎王の親が細やかにお世話しなさいと言うので、斎王がお世話し、翌日、男が会いたいと言うと、夜中にやってきて、深夜に帰って行った。その間、何があったか、は書かれていない、そしてその翌日、また会いたいと文を書くと、返信があり、昨日は夢か現実か、わからないと。そして、今夜もう一度会ってはっきりしたいと。ところがその夜、男は接待があって、会えず、次の日出立してしまった、というものだ。
(斎王の乗る乗り物、いきつのみや歴史体験館で)
夜中に会って、何をしたのかは、想像になる。斎王は、独身皇族で、恋愛は禁止だ。もう一か所、斎王が出てきたが、はっきりは覚えてはいない。
この伊勢物語は作者は不明、在原業平という説が有力だ。しかし、この恋愛の細やかな表現は、女性が書いたようにも思える。この時代には、紫式部や清少納言などがいる。
(平安時代のゲーム、貝覆い、いつきのみや歴史体験館にて)
日本の物語は、1千年も前から、こんな細やかな内容だ、外国の小説に、こんなに細やかな表現ってあったんだろうか。改めて、日本人であることを誇りに思うよ。