「これでも詩かよ」第37番&ある晴れた日に第169回
大きな輪ゴム、中くらいの輪ゴム、小さな輪ゴム
茶色の輪ゴム、緑色の輪ゴム、まれに白い輪ゴム
私は、輪ゴムを捨てられない。
台所の引き出しの奥に全部仕舞っておいて、
時々眺めてみるんだ。
大きな輪ゴム、中くらいの輪ゴム、小さな輪ゴム
茶色の輪ゴム、緑色の輪ゴム、まれに白い輪ゴム
輪ゴムは、思い思いに丸まってる。
中学生の時、深夜の勉強にあきると、
このゴムで、ゴキブリを殺した。
毎晩、なん匹も、なん匹も、殺した。
百発百中だったな。
大きな輪ゴム、中くらいの輪ゴム、小さな輪ゴム
茶色の輪ゴム、緑色の輪ゴム、まれに白い輪ゴム
そのとき輪ゴムは、凶器だった。
あれから半世紀、
今ではゴキブリは次第に姿を消していったので、
私のゴムは、
なんというか、
暇になった。
大きな輪ゴム、中くらいの輪ゴム、小さな輪ゴム
茶色の輪ゴム、緑色の輪ゴム、まれに白い輪ゴム
私は、ゴムを捨てられない。
私は、小さな緑色のゴムになりたいな。
ラトル振る「魔笛」はまるでBGM ベーム/ウィーンの響き懐かし 蝶人