「これでも詩かよ」第38番&ある晴れた日に第170回
塩見牧師は、街いちばんのインテリゲンチャ。
毎月刊行される岩波新書をすべて購入し、
説教台の壇上から
大江健三郎の「芽むしり仔撃ち」を
するどく批評された。
丹陽教会のしののめの東の窓を押し開きながら、塩見牧師は獅子吼された。
「見よ、あそこにも邪宗門がある。全能の神はただひとつである。やおよろずの神などを信じる者は、地獄に落ちるであらう」
窓の向こうには、大本教のみろく殿が空高く聳えていた。
邪宗と異教徒だらけの田舎町では、
クリスマス・イヴに、初雪が降った。
町で一番高い教会堂の尖塔では、
聖夜の祝福の鐘が、厳かにうち鳴らされた。
「雪よ降れ降れ降り積もれ」の歌を会衆一同が高らかに合唱するなか、
サンタクロースに扮した塩見牧師は、階段を一歩一歩踏みしめながら降りてくる。
「サタンよ、退け! サタンよ、退け!」
と叫びながら。
ほぼ同じ大きさに切られしスイカなれどまだ取り替えっこしているうちの耕くん 蝶人