音楽千夜一夜 第361回
バーンスタインには後年NYフィルだけでなくベリリンやウイーンやアムステルダム・コンセルトヘボウなどと録れた新録音やウイーン・フィルとのライブ映像集もあって、いずれも超がつく力演揃いです。
それに比べると、この12枚組のCDはもちろんバーンスタインならではの熱い演奏でありながら、造型のバランスにも周到に配慮しているように感じられる。
試みに第5番の有名なアダージェットを聴いてみよう。新録のウイーン・フィルとのそれはマーラーのアルマへの真情溢れる愛の告白が、男泣きにまで達するやや感情過多気味の演奏であるのにたいし、こちらはまことに情理を尽くした不朽の名演奏といえるでしょう。
それにしてもアバド、ブーレーズ以降のマーラー演奏は、はこういう熱血演奏は流行らなくなってしまい、どれもこれも生の感情を押し殺した植物的・静脈的演奏ばかりになってしまったのは一種の歴史的必然性によるものとはいえ、ミュンシュ流の燃えよドラゴン、くたばれ安倍蚤糞風エラン・ヴィタール演奏を好むわたくしにとっては寂しい限りです。
さてマーラー いけいけ2度目の処女 燃えよドラゴン くたばれ安倍蚤糞 蝶人