あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

4冊の本を読んで

2018-09-20 10:15:12 | Weblog
中川李枝子作・柿本幸造絵「くまのこ くまきち」を読んで

照る日曇る日第1138回

けいこちゃんが「まつぼくりがあったとさ たかいおやまにあったとさ」と唄いながら歩いて行くと、うしろからくまのこくまきちが「まつぼくりがあったのかい たかいおやまにあったのかい」と自分勝手に歌詞をちょっと変えながらついてくる。

次にけいこちゃんが、「おちばのうた」、その次に「きくのはな」を歌うと同じようにくまきちが自己改定版を歌うという形式で展開される絵本。既存の童謡をうまく構成に活用したところに作者の工夫がある。

柿本選手の絵は相変わらずの童夢画で、おかあさんぐまが教室にやってきて眠っているくまきちをおんぶして森に帰っていくところは素晴らしい。

  *お知らせ「柿本幸造の絵本の世界」展!
  2018年9/29―11/11 武蔵野市立吉祥寺美術館


「平成の歌姫」なんてどうでもいいが今日も続くよハラハラ相撲 蝶人

9/17
安田浩作・柿本幸造絵「きつねとタンバリン」を読んで

照る日曇る日第1139回

あこちゃんから、タンバリンを借りたきつねさん。

その夜はきつねさんの叩くタンバリンに合わせて、うさぎさんが「まんまる おつきさま うれしいな。うれしくって ぴょん ぴょんぴょんぴょん」と、いつまでも、いつまでも踊りました。

作と絵が一体化して、読後、なんともいえない浄福感が湧きあがります。

 *お知らせ「柿本幸造の絵本の世界」展!
  2018年9/29―11/11 武蔵野市立吉祥寺美術館
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2018/08/post-164.html

 日テレとナベツネ読売大嫌いだが読響だけはその限りにあらず 蝶人

9/18
筒井康隆著「文学部唯野教授」を読んで

照る日曇る日第1140回

一方では腐敗堕落した大学機構の内実、他方では文学とは何かという研究の総括的レジュメを配し、この2輪を均等に駆動させながら90年代初頭の時代傾向を摘出した好著ずら。

私が学生の頃にはてんで知らなかったし、興味もなかったが、あまたの阿呆莫迦教授や助教授、助手たちもいろいろ苦労していたんだなあ、と今更ながら回顧した次第。

しかし全共闘華やかなりし時代から、教育の現場の権力構造はてんで変わっていないし、たとえば京大のタテ看禁止や吉田寮崩壊にもみられるように、政権党、文科省、大学当局一体となった強権発動によって、磁場はますます狂乱の度を加えようとしているみたい。

昔むかし全共闘は大学解体を叫んだが、そおゆうベクトルではない次元で、大学と大学教育の古典的ありようはすでに崩壊し、いまや訳の分からぬ教育機関として盲目的に作動してるんとちゃうやろか。

  わたくしはこうのとりと発音するがテレビではコウノトリという 蝶人

9/19
柿本幸造著「ひだまりをつくるひと」を読んで

照る日曇る日第1141回

2015年に生誕100年を記念して出版された柿本画伯の絵本画集。「しゅっぱつしんこう!」「くじらぐも」「どうぞのいす」をはじめ著者のほぼすべての作品を網羅したファン垂涎の1冊である。

柿本画伯の絵の特徴は、ひとふでひとふでに少年時代の夢と希望のことごとくを託して純朴な童心と手作りの優しみをおのずと醸し出していることで、妙な言いようだが永遠のアマチュアの良さを内在させたプロの作品だった。

彼の心中には田舎生まれの童子が棲んでいて、それがあの独自のファンタジアを作り出したのである。

今月29日からは武蔵野市美術館で彼の画業の一大回顧展が開かれるので見逃せない。

  http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2018/08/post-164.html


   混血の日本人ゆえなおうれし大坂なおみ全米制す 蝶人

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