照る日曇る日 第1206回
全集といっても分厚いのが1冊だけであるが、それがかなり格好良いのだ。
著者は1813年にドイツに生まれ、23歳で死んだ戯曲家、動物解剖学者で、フランス革命でギロチンの刃の露と消えた革命家の最後を描いた「ダントンの死」、それからアルバン・ベルクの同名のオペラ「ヴォツエック」の原作戯曲などが、彼のわずかな代表作である。
同僚の兵士と浮気した妻マリーを短刀で刺し殺したヴォツエックは、23歳で死刑になるが、ビュヒナーも同じ年齢で死んだのは、偶然の一致だろうか。
この本には、ダントンやロベスピエ-ルの最後の演説がおまけでついているが、その悲痛さが胸を打つ。この2人はパリの学校の同級生で、2人ともジャンジャック・ルソーの直系の弟子だった。
今日ではまったく自然で当たり前のルソーの自由思想を、18世紀終盤のブルジョア社会で、生真面目に実践しようとしたとき、自他を巻き込むあの大きな悲劇が起こった。
それにしても、当時はまともな裁判も行われず、政治的反対者の大半がギロチンで処刑されたが、本邦でもこれからそおゆう滅茶苦茶な私的死刑の時代がやってくるのではないだろうか。
「汝の敵はすべて殺せ」という思想は、いまも中東やロシア、中国などでしたたかに生き延びている。

「ゲオルク・ビュヒナー全集」の向こうを張っておらっちも「佐々木眞全集全1巻」を出したいなあ 蝶人