照る日曇る日第1405回
パラレルワールドにいるという皇后を出汁にして、作者が小説という素材をフルに活用して繰り広げる現政権への根源的、徹底的批判の書である。
象徴天皇制を立憲君主制と読み替え、日露戦争の軍資金を米国のユダヤ系資産家から調達したことがその後の日本の命運を決定づけた、という主張にはいささか疑問符が付くが、作者がわれらの世界を覆いつくすこの「否定的現実」を、理知と理想と勇気と想像力で乗り超えようとする「蛮力」に、深甚なる敬意を捧げたい。
コロナ禍を伝えるテレビの前に座し両手を合わせ祈る人あり 蝶人