照る日曇る日第1629回
砂浜に漂着し、そこで「ノロ」になったヒロインの秘密と共に、ニッポン、タイワンそして「彼岸花が咲く南の島」の歴史が、次第に明らかになっていく。
それはまた、3つの島の言葉を巡る物語でもあり、性と戦争を巡る物語、そして作者の過去、現在、未来を透視するビルダングスロマンでもある。
この節の芥川賞受賞作というと、頭からはしにも棒にもかからぬ辛気臭い観念小説が多くて閉口するが、これはとても読みやすくて、読み応えのある興味津津の南洋浪漫小説ずら。

権力の亡者どもが次々に我こそ首領と名乗りを上げる 蝶人