西暦2021年長月蝶人物見遊山記&蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第396回

日曜の朝、車に乗って出かけましたら夏の海水浴の定番柴崎の駐車場が閉鎖されていました。コロナのせいかな?
まだ美術館が開いていなかったので、外側の散策路を辿って海岸に降りると、海亀の産卵のための穴掘りの実演講座をやっていて、その中に赤いワンピースを纏った美女がいました。偶に美人を見るのもいいものです。
あ、そうだ。
美術館を取り巻くその散策路を歩いていたら、いぜん鎌近の別館の池に立っていたアントニー・ゴームリの鋼製の人型が、後ろの正面の壁の前に立っているので驚きました。
いったい誰があれを見るものか。イサム・ノグチのこけしの代わりに表玄関の右側に置くべきではないでしょうか? 検討ありたし。
さてようやく入場。
館内では2つの展覧をやっていて、一つは「コレクション展 若林奮新収蔵作品」でした。神近はこの人がお好きなようですが、私はどうにも苦手です。
彼は彫刻は振動が大事だと唱え、その考え方自体は魅力的ですが、実際に製作した作品にそのバイブレーションをまったく感じることができない。いくら振動器なんかをこさてもそんな外面的なアプローチではダメなのです。買い込んだ数多くの作品が並んでいたけれど、結局おらっちが欲しいと思ったのは、40種類の年賀状だけでした。
お次は「空間の中のフォルム」という展示です。
副題通りに「アルベルト・ジャコメッティから桑山忠明まで」の多士済々、多種多彩な作品が並んでいたけれど、おらっちが感動したのは最上壽之(1936-2018)という彫刻家の「トントンビョウシ ノ アシビョウシ」という巨大なクモが巨大な壁ごと運んでいるような、そして今にも動きそうな躍動感が漲っている巨大な木工建築物でした。
これこそが若林選手が求めてついに手にすることのなかった「振動建築」そのものではないでしょうか?
というわけで、せっかく葉山まで出かけたのにあまり収穫なし。今月18日から始まる「香月泰男展」に期待しませう。
カス退陣の謎解き明かすてふ「クローズアップ現代」勇んでみたらスカスカなりき 蝶人