照る日曇る日第1638回
3年の歳月をかけて1999年に完成した、黄色い装丁の漫画なり。
「ジャック・チボーという名の友人」という副題が付けられているがごとく、ロジェ・マルタン・デュ・ガールの名作の文言を、終始随所に織り込んだ女子学生、田家実地子の日常を描いているが、この作家がいかに山内義男訳の永遠の青春の書に入れ上げたかがよーく分かって、感動的である。
かく申すわたくしめも、若き日にこの「チボー家の人々」全5冊を、来る日も来る日も夢中になって読み耽ったものじゃったなあ。
とりわけ主人公のジャックがベートーヴェンの英雄らしき交響曲を初めて耳にした時の激烈な感動、美少女ラシェルの下肢が、窓から差し込む光によって薄いスカート越しに露わになるところ、
そして最後に、反戦ビラを撒くために飛行機に乗り込むシーンの内的檄白などに圧倒されたものだが、それが後年の自分の音楽や政治に少なからぬ影響を与えたことについて、本書を読みながら改めて思い知らされたことだった。
大いなる蛇が我が家に入りこむどうすることもできやしない 蝶人