あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

神奈川県近代美術館葉山館にて「没後90年 萬鐡五郎展」をみて

2017-08-16 11:41:45 | Weblog


蝶人物見遊山記 第253回

「よろずてつごろう」と呼ばれるこの絵描きのことは、緑の原っぱで鼻毛と腋毛をみせつけながら、妙にねじれたポーズで見る者を誘う赤衣の半裸女の油絵で強烈な印象を与えられていました。

そんな「どすこい絵描き」かと思っていたら、そういうマチス的、ゴッホ的な作品もあるけれど、セザンヌ的、ルノワール的なもの、後期印象派が変容しつつ野獣主義やキュビズムに包摂されていく過程をいいあらわす中間的折衷的な作品、というより印象派と表現主義を行きつ戻りつしている絵もたくさんあって、おやまあと思わされました。

総出点数は350点を優に超えていますが、目に入るすべての作品が私には新しい!
およそさまざまな姿かたちにかき乱された「自画像」だけでもいったい何点並んでいることか!

一等驚いたのは掛け軸に描かれた南画です。南宋から渡来して文人の趣味のすさびとなった墨絵という奴は(富岡鉄斎のも田野村竹田のも夏目漱石のも私は大嫌いですが)、萬鐡五郎選手のモダン南画は、和紙の上に山谷が洋画でスケッチされているというミスマッチの遊びがあって、見るだに楽しい。新世界絵画の新境地です。

上野の美術学校から郷里の岩手県土沢(花巻市)に帰省してからの茶黒いルオー風の風景画やセザンヌ風の静物画は彼の東北人としての気骨を鈍重に伝えて寄越しますが、こういう重厚さや先ほどの南画に見られた軽みが絶妙にバランスされたのが、彼の早すぎた晩年の「茅ヶ崎の風景画」シリーズで、これまでの実験と模索のことごとくが凝縮された感のある悠久の桃源郷の世界こそ、画家、萬鐡五郎の真骨頂といえましょう。

それにしても、天が彼にあと数年の命を与えてくれたなら、生命力漲る「水着姿」や「宝珠を持つ人」(未完の遺作)を引き継ぐ素晴らしい作品を遺してくれたに違いありません。
41歳で亡くなった作家の死の直接の原因は、結核と伝えられていますが、むしろ長女の夭折の衝撃によるものではないでしょうか。痛ましいことです。

没後90年を記念して開催されたこの展覧会こそは、色彩と形象の実験家であり、稀代のモダニストであり、近現代芸術の野蛮人、絵描きの快男児であった作者の創造の秘密を検索できる無二の機会でありましょう。

なお本展は、来る9月3日まで好評開催ちう。

   長女死しまもなく病で斃れたり絵描きの野蛮人萬鐡五郎 蝶人
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家族の肖像その25~これでも詩かよ 第221番

2017-08-15 09:22:47 | Weblog


ある晴れた日に 第469回


ぼく、ウチワ好きですお。
そうなんだ。
うちわ、暑い時あおぐものでしょ?
そうだよ。
ぼく、ウチワ好きですお。

お父さん、必死は?
一生懸命なことよ

お父さん、ワサビは畑だよ。
そうだね、ワサビ畑でできるんだね。

お母さん、とおりゃんせってと通ってくださいのこと?
そうですよ、♪とうりゃんせ、とうりゃんせ、ここはどこのほそみちよじゃ。
とうりゃんせ、とうりゃんせ。

お母さん、スーパーヒーローってなに?
すごい中心人物のことよ。

ぼく、お母さんとお父さん、信じていますよ。絶対信じていますよ。
ほんと?
ケンも信じていますよ。

松島さん泣いていたよ。
うん、泣いてたよねえ。悲しかったんじゃない。

お父さん、落ち着くの英語は?
カームダウンかな。
落ち着く、落ち着く。

嫉妬はうらましがることでしょ?
うん、まあそうだね。

らららラララララ
森のくまさんだお。

いとしの耕君。いとしはどんな字?
愛だお。
あったりい!

お母さん、今後ってなに?
これからのことよ。

ぼく国語大辞典好きですお。

お母さん、甲子園てなに?
野球場よ。
甲は申すにちょっと似てるよネエ。
そうねえ。
でもちょっと違うよネエ。

無くなる電車、廃車でしょ?
うん、まあそうだね。

家に鴨でアヒルでしょ?
そうだね。

お父さん、回数券買った?
買ったよ。

連佛さん、録画した?
したよ。

ぼくハスとサトイモとクワイ好きですお。
お母さんもよ。耕君おばあちゃんちのクワイ見ましたか?
ぼく見たよ。

お母さん、やりたい放題ってなに?
好きなことばっかりやることよ。耕君やりたい放題なの?
違いますよ。


   耐えがたしと昭和天皇がいうたので8月15日は敗戦記念日  蝶人





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邦画いろいろ 夏の在庫一掃セール開催ちう

2017-08-14 13:35:46 | Weblog
昨日はようやっと晴れたので由比ヶ浜でひと泳ぎ。まだクラゲは出ていないようだが、あんまり奇麗な水ではないわいなあ。魚も跳ばないし。



闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.1220、1221、1222、1223、1224


○山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」をみて


本邦時代劇映画の傑作。主人公の真田広之と宮沢りえが素晴らしい。ラストで流れる井上陽水はナンセンス。これなければもっと評価は高くなる。クライマックスの田中泯の殺陣と存在感が凄い。やはり屋内では小太刀が有効なんだなあ。


○内田吐夢監督の「血槍富士」をみて


主を殺された片岡知恵蔵が得意の長槍を振り回して仇討するシーンのリアリテイが胸を打つ。決してかっこいいものではないが、実際の戦闘はこのようにして行われたのだろう。



○降旗康雄監督の「将軍家光の乱心 激突」をみて


3代将軍家光は早くからわが子竹千代(後のそうせい将軍家綱)を後継者に定めていたから、この映画の脚本(中島貞夫)は出鱈目もいいとこだが千葉真一が陣頭指揮したアクションはなかなか迫力があって面白い。



○佐々木康監督の「新選組」をみて


新撰組が佐久間象山の死を悼んだり、長州藩の月形半平太(大友柳太郎)などが、片岡知恵蔵演じる近藤勇と誼を通じようとしたりするのが面白いといううか不可解な時代劇だが、東千代之助の鞍馬天狗はもうちょっと活躍してもらいたかった。



○「千と千尋の神隠し」をみて


日常から異界への転移が、これほど見事に描かれた映画も少ないだろう。だんだん眼が慣れてくるとそうでもなくなるが、冒頭の十分間の視覚的エクスタシーは、異界で活躍するキャラクターの魅力と相俟って比類がない。



コイノサシミなどはどこへ行ってしまったのかあちこちさすらう「やすらぎの郷」 蝶人


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ソーリ、ソーリ、ソーリ

2017-08-13 09:41:32 | Weblog


これでも詩かよ 第220番


ソーリ、ソーリ、ソーリ
今年の7月、核兵器禁止条約条約採択の場に、唯一の戦争被爆国である我が国の代表の姿が見えなかったことは極めて残念です。

ソーリ、ソーリ、ソーリ
あなたは、核兵器を禁止する条約に加盟すると、核保有国と非核保有国との隔たりが深まって、核兵器のない世界の実現を遠ざけてしまう、とおっしゃる。

ソーリ、ソーリ、ソーリ
しかし核兵器を禁止する条約に加盟しないとすると、核保有国と非核保有国との隔たりがなお一層深まって、核兵器のない世界の実現をさらに一層遠ざけてしまうのではないでしょうか?

ソーリ、ソーリ、ソーリ
そんな子どものような言い訳を持ち出して、条約をボイコットするということは、つまり「核兵器を禁止する条約なんかに入りたくない」「できればおらっちも核兵器を持ちたい」、というておるのと同じではないでしょうか?

ソーリ、ソーリ、ソーリ
1945年8月に落とされた原爆による死没者数は、広島で30万5940人、長崎では17万5743人。2つの都市と市民が壊滅的打撃を蒙ったというのに、あなたはまったく懲りずに、亡き祖父とおなじ過ちを犯したいのですか? *

ソーリ、ソーリ、ソーリ
あなたは、被爆者たちが、「私たちは、あなたとあなたの政府に対し、満腔の怒りを込め、強く抗議します」と叫んでいる声が聞こえないのですか? **

見よ! 
「憲法第九条」という伝家の宝刀はとっくに錆びつき、「世界で唯一の被爆国」という一枚看板は腐り果てたぞよ。

見よ! 
広島長崎の死者たちは、血の涙を流しながら立ち上がり、山を越え、河を渉り、ドドシシドッドとやって来るぞよ。

ソーリ、ソーリ、ソーリ
あなたは、どこの国の総理なのですか? *

ソーリ、ソーリ、ソーリ
あなたは、私たちを見捨てるのですか? *

ソーリ、ソーリ、ソーリ
今こそ、わが国が、あなたが、世界の核兵器廃絶の先頭に立つべきではないのですか。**


* 2017年8月10日朝日新聞朝刊掲載の記事および「長崎県平和運動センター被爆   者連絡協議会」川野浩一議長の言葉
** 2017年「長崎被爆者5団体要望書」より自由に引用。


 「ファースト」なる看板だけを掲げている世にも不思議な政治団体  蝶人
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片渕須直監督・脚本「この世界の片隅で」をみて

2017-08-12 09:44:01 | Weblog


闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.1219



昭和の戦争と庶民の暮らしを、美しく端正な映像で描いた長編アニメーション映画である。

「この世界の片隅で」それなり幸せな生活を送っていたヒロインは戦争に「巻き込まれて」、召集で彼女を愛していた青年を、米軍戦闘機の爆撃で親族の娘と自分の右手を喪うという悲劇に見舞われる。彼女はもう裁縫もできないし、大好きだった絵筆も握れない。気の毒で可哀想で涙が出る。

だが、これはどういう映画なのだろう? 昭和を懐かしく再現した映画? それとも反戦映画? 
我が国の「反戦映画」というと、たとえば「二十四の瞳」とか数多くの特攻隊物がそうであるように、平穏無事な日常を送り迎えていた「無辜の民」の身の上に、ある日突然湧き起った「戦争」が悪魔のように襲いかかって地獄の底に叩きこんでしまう。

それから、「ああ、なんと惨たらしいことだろう。もう二度と戦争などを引き起こしてはいけない。みんなでよく気をつけようね」というお約束のパターンで終わるのだが、本作も例外ではない。
戦争を知らない世代の勉強にもなるし、いうならば安心して泣ける「被害者視点の反戦映画」というところだろうか。

でも、この国の片隅から旅立った普通の日本人が、アジアの民衆に対してどのような被害を与えたかについては、これまたお約束のようにして口を噤んでいる。

個人的には、こういう被害者のみの視点ではなく、加害者としての視点をも複合した「現代史を踏まえた反戦映画」を生きているうちにみたいものである。

なおこの映画では、画面の左上に8年10月というような年月のテロップが出るのだが、思わず1908年なのか昭和8年なのか考えてしまった。もちろん正解は後者なのだが、元号なしの洋数字だけで表現する意図は奈辺にありや、と戸惑っているうちに物語はどんどん進んで終わってしまった。

    トランプと金正恩の2人だけで死ぬまでやりなよ場外プロレス 蝶人


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鈴木志郎康著「とがりんぼう、ウフフっちゃ。」を読んで、「とがりんぼう」の行方を尋ねる

2017-08-11 10:12:42 | Weblog


照る日曇る日第984回



巻頭の詩「俺っち、3年続けて詩集を出すっすっす」で謳われているように、傘寿を過ぎた、しかも身体不如意の詩人が、「3連ちゃん」で浩瀚な詩集を世に送られるとは、なんと驚嘆すべき力業でありましょうか。

ところでこの「俺っち、3年続けて詩集を出すっすっす」というユニークなタイトルですが、これがもしも「私、3年続けて詩集を出します」というような変哲もない題名であれば、読者は鼻白んで引いてしまうに違いない。

「俺っち、出すっすっす」、というようなカジュアルな装飾語や、文中で効果的に連発される「ウォッ、ホッホ、ホッ、ホッ」という擬音語こそが、鈴木詩法独自の隠し味であり、詩本体を軽やかに駆動する秘密のあっこチャン、どこでもドアといえましょう。

「とがりんぼう、ウフフっちゃ」における「とがりんぼう」は、(大林宣彦監督の造語であり映画作品でもある「さびしんぼう」を想起させる)詩人の造語ですが、さしずめ詩人の詩的活動の最前線で活躍する詩霊、あるいは詩的冒険の永遠の主人公、ピーターパンダといったところではないでしょうか。

はじめは処女のごとき春の使者であったその「とがりんぼう」(「とがりんぼう、ウフフっちゃ」は、「続とがりんぼう、ウフフっちゃ」では、詩人の脳内から転がり出た「言葉の切っ先」に変身し、「俺っち」の懸命の追跡を脱兎のごとく振り切ってセブンイレブンの角を曲がって行方を晦ましてしまいます。

ところが「続続とがりんぼう、ウフフっちゃ」では、88歳の数学者、佐藤幹夫氏の言葉に刺激を受け、「とがりんぼうを尖らせ、詩を考えながら、いつの間にか眠り、目覚めた時には、すでに詩の世界に入っていないといけない」という悟達の境地に至るのです。

かくのごとく本書には、四六時中とがりんぼうを追跡する無手勝流の詩人が、ある時は赤や濃紺のセーターの闇をくぐり、ある時は若き日の「プアプア詩」に出会い、三か月と一日の孫を抱き、戸田桂太の「東京モノクローム」を読み、またある時は昭和天皇やオバマ大統領や東京都知事や「権柄面のおっさん」に出くわした際の、出会いがしらの青い火花が、「寄らば切るぞ!」とばかりに全世界にスパークしているわけです。

「とがりんぼうの尖った先で、言葉を書くと、その瞬間、火花散って、パッと燃え尽き、灰になっちゃって、そこに、新しい時間が開く」(一部要約、乞うご容赦)

これこそが、誰にも真似ができない作者独自の詩の作法なんでしょうね。

年ごとに身体に加わる負荷をものともせず、全身全霊で新しい詩の創造に立ち向かう詩人の燃えたぎる情熱は、初恋にめざめた青少年のようにキラキラと輝き、後続する者たちに大きな励ましと、強力な「光線君」を放射し続けているようです。


 ヤマカガシを首にぐるぐる巻きつけて遊んでいたのは我が家のケンちゃん 蝶人
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嗚呼、おらっちも「めっちゃくっちゃな詩」を書きたくなったずら。

2017-08-10 10:20:43 | Weblog


鈴木志郎康著「とがりんぼう、ウフフっちゃ。」を読んで~これでも詩かよ第219番

ある晴れた日に第468回


わが敬愛する詩人の手になる、なんと3年連続の詩集の、最新版が出ました。

それにしてもタイトル自体が、なんと軽やかなステップで、人世と詩が一体となった微笑ましくも楽しげなリズムを弾ませていることよ!

らりらりらあんとページを開けば、森羅万象に対する旺盛な好奇心の炸裂です。

「三度の食事に5回のうんこ」という糞詰りの苦しみの吐露から、若き日の「プアプア詩」との再会、戸田桂太の「東京モノクローム」を読み、初めて三か月と一日の孫を抱いた日のよろこび、「権柄面のおっさん」に出くわした際の不愉快と金正男暗殺事件の不可解、オバマ前大統領の広島訪問と小池東京都知事の「活躍」に向けられる鋭い目、さらには天皇制と天皇退位問題への揺れる考察まで、いまや詩人が手に触れ、目にするありとあらゆるものが、日々の詩作の、楽しくも苦しい、つとめとなりおおせたようです。

ひとたび詩人がウンコをひりだせば、たちまち黄金のポエムになるのである。

加齢と病気によっていくぶん行動の自由を奪われた詩人の好奇心は、かえって反比例して、その飛翔の広さと高さを旺盛に押し広げていくようですが、そのありさまは、どこか明治時代のはちゃめちゃ八方破れの革命的詩歌人を思い起こさせます。

正岡子規は、「病床六尺」という切点にて、彼の六感を通過する森羅万象を、(あたかもカメレオンの長い舌が、蝶や蜻蛉を一瞬にしてとらえるように)、得たりや応と大脳前頭葉に取り込み、それを直ちに当時の最先端の文章に変換しては吐き出しましたが、その「赴くところ詩ならざるところなき突貫小僧精神」は、そのまま平成の鈴木志郎康氏の行状にものの見事に継承されていると思います。

よく世間では「元気をもらった」などというセリフを軽々しく口走って物笑いのタネになる人がいますが、よしや笑われても構わない。この詩集で何回読んでも私が感動するのは、次のような一連であります。

「春一番が吹いたっちゃ。
 俺っち、
 元気が出て来たっちゃ。
 気持ちが先走ってるっちゃ。
 身体がまだまだ動かせないので、
 めっちゃくっちゃな詩を
 書きたくなったっちゃ。
 めっちゃくっちゃな詩、
 めっちゃくっちゃな詩。
 ヘヘ、
 ヘヘヘ。」 (「俺っち、気持ちが先走ってるっちゃ」より引用)


嗚呼、嗚呼、おらっちも、めっちゃくっちゃな詩を、めっちゃくっちゃに書きたくなったずら。


   米国のファットマンに殺されしナガサキの民立ちて歩めよ 蝶人
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プルースト著「失われた時を求めて11囚われの女Ⅱ」を読んで

2017-08-09 10:54:43 | Weblog


照る日曇る日第982回


同性愛の権化シャルリュス男爵が古今東西の王侯貴族、有名人たちの淫行についてとくとくと語っている間に、彼の出過ぎた振る舞いに怒り狂ったヴェルデュラン夫人のモレルを味方につけのシャルリュス斬り大作戦は着々と進行していた。

一方、得体のしれない謎の女、アルベルチーヌを虜にしていたはずの主人公は、いつのまにか主従の立場が「谷崎もどき」に入れ替わり、ほかの女に惚れた彼女が出てゆくかもしれないという不安と恐怖に苛まれて懊悩の日々を送るうちに、その不吉な予感は突如現実のものとなる。

男と寝るときには性器を、女と寝るときには尻の穴を「割ってもらっていた」などと告白するアルベルチーヌに、金と物を惜しみなく与えて鳥かごの中の小鳥のつもりで可愛がっていた「私」だったが、「本当は愛してもいない女」に捨てられた瞬間、空っぽの存在に転落してしまうのである。

しかし深夜、こんな神経衰弱の羊腸の小径を手さぐりしながら暗中に模索するような心理小説を、プルーストはよくも書き続け、それを歴代の翻訳者は飽きもせずに翻訳し続け、それを私たち読者はけっして退屈することなく読み続けたものである。


教会の階段を降りてくる洒落たコート瀟洒な口髭の男は本当にプルーストだろうか? 蝶人
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加藤典洋著「敗者の想像力」を読んで

2017-08-08 15:54:38 | Weblog


照る日曇る日第981回


戦さに勝った者よりも、敗れた者の思索のほうがより深刻深甚であり思想的な値打ちがある?!という仮説に基づいて、著者が鋭意組み上げた敗戦的論考の数々である。

著者お得意のゴジラ論とか、多田道太郎、山口昌男論、宮崎駿と手塚治論、吉本隆明と鶴見俊輔論、最後に置かれた熱のこもった大江健三郎論など、いずれも著者のいつもながらの篤実な思考の歩みをうかがい知ることはできたが、全編の主題の明確さを、全部で9つの断章が統合的に変奏していたかと問えば、答えは否定的にならざるをえない。

私も、私が生まれ育った国も敗者なのだから、そういう格別な場所において紡がれる思藻についてもっと親近感を懐いて近接できるかと思っていたのだが、読後感としては散漫そのものであり、大江健三郎についての著者独自の考察にも、まったくついていくことができなかった。まことに残念である。


         喨々と油蝉鳴く真昼かな 蝶人


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激情の指揮者、トスカニーニ

2017-08-07 11:10:02 | Weblog


音楽千夜一夜 第396回


フルトヴェングラーと共に20世紀を代表する偉大な指揮者、アルトウーロ・トスカニーニは、1867年にイタリアのパルマに生まれ、1957年にニューヨークに自宅で89歳で亡くなりました。今年は生誕150年、没後60年ということで、記念CDボックスなどが発売されました。

チエロ、ピアノ、作曲に高い技能を発揮したトスカニーニは、イタリアのトリノのレージョ劇場を振り出しに、ミラノ・スカラ座やニューヨーク・フィル、メトロポリタン歌劇場、NBC交響楽団など世界有数のオペラハウスや管弦楽団を指揮し、その正確なテンポと楽譜に忠実な演奏で高く評価され、後続の指揮者、たとえばカラヤンなどに、決定的な影響を与えたのです。

さて今宵皆様にご紹介するのは、1940年代から50年代にかけてNBCスタジオやカーネギーホールで収録されたワーグナーのライヴ映像です。*

タンホーザー序曲やワルキューレ第三幕の「ワルキューレの騎行」、トリスタンとイゾルデの「前奏曲と愛の死」などのいずれも全曲からの抜粋がいくつか演奏されたのですが、はじめて目にするトスカニーニの指揮振りの精悍さと正確さ、そしておのが音楽の精髄を聴衆に届けようとする真情あふれる姿に大きな感銘を覚えました。

いずれの演奏も、音楽の内容よりも、その厳密なテンポや音量の制御などの形式面にまずは耳を奪われます。

生前の偉大なライバルであったフルトヴェングラーと違って、トスカニーニの指揮は、テンポを制御する右手と楽器の入りと、その流通を管理する左手に加えて、千変万化する顔の表情が大活躍します。

彼は、自分がリハーサルのときに指示した楽器が正しいときに、正しい音量で、正しく演奏されていないときには、まるで仁王様のように柳眉を逆立て、楽員たちを眼光鋭く睨みつけます。

しかし「トリスタンとイゾルデ」の終結部などで、彼の手兵NBC交響楽団が見事な演奏をやってのけている最中には、突如童顔に帰って、まるで餓鬼大将のように微笑む姿には、驚くと同時に感動させられました。

この“音楽の鬼軍曹”は、たしかにオケをアホバカ呼ばわりもしたのでしょうが、問題は、彼が面罵した楽員たちとともに、どのように音楽を演奏したか、です。
ご覧のようにここには、誰のものでもない、トスカニーニだけのワーグナーの音楽が鳴り響いています。オーケストラの面々は、「トリスタンとイゾルデ」に替わって歌い、また歌い、さらに歌い続けているのです。

そこに光り輝いていたのは、音楽そのものでした。
トスカニーニと音楽することの無上のよろこび、そして連夜の奇跡的な演奏の成就がなければ、誰がこの天才指揮者の無礼と独裁に唯々諾々と従ったでしょうか。

さてトスカニーニの最も激情的な演奏記録は、ヴェルディの「諸国民の讃歌」という珍しい曲を、ピーター・ピアーズの独唱と合唱付きでスタジオ収録したものです。

故国イタリアのファシスト政権が崩壊し、第2次大戦が連合国の勝利によって終結したことをことほぐ1943から44年にかけてのこの演奏では、勝利国の英仏米の国歌のほかに、なんと当時旧ソ連の国歌であった労働歌「インターナショナル」が鳴り響きます。**

大いなる過ちを犯した母国イタリアも含めて、「全世界よ、恩讐の彼方に新たな平和を構築しようではないか!」とばかりに「諸国民の讃歌」が高らかに謳いあげられるのですが、その後の世界が、どのような変転を辿ったかを知る者にとっては、様々な感慨が胸に浮かんでくる映像です。

1954年4月4日のオール・ワーグナー・プログラムの演奏会で、一時的な記憶障害のために「タンホイザー序曲」を振り間違えたトスカニーニは、翌日引退声明文を発表しますが、ニューヨーク・タイムズに載ったその「The sad time has come when I must reluctantly lay aside my baton and say goodbye to my orchestra」という、簡潔にして万感の思いのこもった文章こそ、この稀代のマエストロの人となりを、よく後世に伝えていると私は思うのです。***


*『Arturo Toscanini The Original Ten Televised Concerts 1948-1952 with NBC Symphony Orchestra アルトゥーロ・トスカニーニ TVコンサート』(DVD5枚組)東芝EMI、 2002

**ヴェルディの「諸国民の讃歌」
https://www.youtube.com/watch?v=b5PwBeI0vDo

***「トスカニーニ、その人と芸術のドキュメンタリー」
https://www.youtube.com/watch?v=kNaF1bdXnkw&t=3s



ベートーベンて誰のことだいとルートヴィヒ・ファン・ベートホーフェンがいう 蝶人

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スティーブ・シルバーマン著「自閉症の世界」を読んで

2017-08-06 11:41:02 | Weblog


照る日曇る日第981回

さいきん自閉症や発達障害を商売のネタにする連中があとを絶たないので、あまり近寄らないようにしているのですが、これは講談社のブルーバックスから出た本だから、それほど酷くはないだろうと手にとってみました。

タイトルからして自閉症の専門家が書いた書物かと思ったのですが、さにあらず、米国サンフランシスコ在住の科学ジャーナリストの手になるものでした。

頭の良い人らしく、自閉症研究の歴史や現在に至るまでの症者、学者、研究者、一般世間の状況については要領よく書けていて、ことに映画「レインマン」の製作秘話などは面白かったのですが、所詮当事者にあらざるライターの「第3者的かきもの」の域を出ていない点が、40過ぎの自閉症者を子に持つ親としては、とてもまどろこしく、とても歯がゆい。

多様化し複雑怪奇を極めつつある現下の情勢に対し、個々の症者の多様性に懇切丁寧に寄り添いながら、関係者全員がきめ細かく対応すべし、とする著者の主張には共感できるのですが、一方では、いつになったら解明できるか誰にも分からない自閉症の本質の究明などは、費用対効果の予測すら不明だから中止せよ、と叫んでいる点には、まったく賛同できません。

そもそも医学はいったいなんのために、誰のためにあるのか? 原因不明の症状をどうやって対症療法だけで治療できるのか? 

こういう基本的な問題について、著者は胸に手を当てて、よーく考えてみてほしい。
当事者の不安と苦悩も知らないで、夜郎自大な妄言を吐かないでもらいたいものです。

    米国のリトルボーイに殺されしヒロシマの民よみな起き上がれ 蝶人
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夢は第2の人生である 第44回  

2017-08-05 10:21:28 | Weblog
 
西暦2016年文月蝶人酔生夢死幾百夜 




地下鉄から地上に出た私が、駅前広場で風船に空気を入れ、大きく膨らませて巨大レストランを作っていると、まわりには早くも同業者たちが現れて色もデザインも異なる風船食堂を次々に立ち上げているのだった。7/1

私がロシア兵に「待て」といおうとして、そのロシア語を思いだそうとしている間に、ロシア兵は発砲したので、私はその場にどうと倒れた。7/1

古い録音テープが出て来たので聞いてみると、かの天才クライバーよりも凄いベートーヴェンの7番の演奏であった。これはいったい誰の指揮か?。私自身は4番と8番しか振ったことはない。7/2

私たちは、思い思いに好きな女優を連れて「ねぶた祭り」を見に行ったが、友達がどんな連れと一緒なのかが気になって、「ねぶた」の鑑賞どころではなかった。7/2

長年の夢がかなって、とうとう大金持ちになったのだが、後で考えるといかにも下らないことにばかり湯水のように金を使っているわたくしなのであった。7/3

パーティで知り合った、なんてことのない、しかしちょっと可愛い女の子に誘われた私は、いかんいかんと思いつつ、ずるずると深間に嵌り込んでしまった。7/3

アルバイトで高校の理科の先生を頼まれ、理科は不得意なので固辞したのだが、「完璧なアンチョコがあるから大丈夫」と請け合われたので、やることにした。今日は生物の授業に使うために、小川にドジョウを取りに行ったのだが、不気味な口をした獰猛な肉食の魚しかいなかった。7/4

むかし別れた腐れ縁の女と再会したら、ドイツの軍人の妻になっていた。なんでもロスで日本人の夫と離婚したあとで、いわゆるひとつの心の間隙に割り込んできたのだという。よくある話だ。7/4

私の料亭のおお女将のところに若い子分がやってきて、今月からみかじめ料を取るというから、「いったい誰がお前んとこの台所のダシを作ってやったのか、もう忘れたんか。はよ帰って、親分によういうとけ」といって追い返した。7/5

小西屋に集英社のメンノの山本大介とその仲間たちを招待したら、その噂を聞きつけた京阪神の親戚のひとたちが、「ほんなんやったら、うちらあも御馳走になりたいわあ」というて、綾部に大集合したので、大弱りに弱ってしまった。7/6

会社で仕事をしていると、総会屋の大男が、「やあこんちは、今日はわしらの大先生をお連れしました」というので、振り向くと、死んだはずの右翼の大物のコダマ某を先頭に、見るからに人相の悪いヤクザが1ダースほど私を睨んでいたので、いっぺんで肝が冷えた。7/6

A子さんの写真に、イイネをクリックしようとしたら、「A子さんは美人だね」や「A子さんはオシャレだね」や「A子さんは大金持ちだね」にクリックしてからでないと、そこまで辿りつけないことが分かった。7/7

PCに出てきた「音楽」という言葉にマウスで触れると、すぐに曲名や作曲者名の欄に飛び、そのどれかにタッチすると、スピーカーもないのに、いきなり未知の音楽が嵐のように鳴り響いた。7/7

先行する私の車の尻の臭いを嗅ぐようにぴったり後をつけてくる妙な車があったので、私が「停まれ」と念ずると、その場で釘づけになった。7/8

私が発明した特殊な枕で眠ると、眠りながらお経を読んだり、対立する2人をなだめすかしたり、蚊取り線香を取り替えたりすることができます。7/8

私たち3人は、オリンピックに備えて特別訓練に明け暮れていたが、毎日賞味期限の過ぎた「インアウタントラーメン」ばかり喰わされている間に、いつのまにか選手としての賞味期限が過ぎてしまった。7/9

こんにちはみなさん。僕、ここで挨拶するように誰かに頼まれたのでここへやってきましたが、ここでどういう挨拶をしたらいいのか分からないので困っています。きっと困ると思ったので「萬金丹」をもってきましたので、とりあえずこれを飲んでから、様子を見てみたいと存じます。7/9

井出君は突如キャンペーン大好き人間に大変身し、売り場巡回の際にバッハの「イタリア協奏曲」をBGMに掛けさせて、いきなり裸踊りをやってのけた。7/10

「この映画をみて、我が国に行ける政治的経済的社会的長所と短所を、映像を添付しながら説明しなさい」という課題が出されたので、学生たちは懸命に映像を取り込み、それを各シーンごとに再分割して番号を振り、いつでも必要なデータが取り出せるように加工していた。7/11

バイカル湖を訪ねて、リニューアルされた引き揚げ船の興安丸に乗りこんだら、昔の懐かしの女と再会した。なんでも最近夫と別れて、LAからここへやってきたという。船室に連れ込んで欲情を解放してから、「今度はいつどこで?」と尋ねたら「いつかあの世で」という答えが返ってきた。7/12

夢の中で私は「1月侍」だったが、しばらくすると大きく成長して「10月侍」となった。7/13

オグロ選手に率いられた我ら風来坊ライター集団は、某国の新しい工業団地に潜入して、その住民たちを虱潰しに夜討ち朝駆けで取材して回った。7/14

どんどん病が重くなっていくので、名医と評判の黒田先生を紹介されて某大病院を訪ねたら、50人くらいの黒服の男たちが、机に頭を伏せてグウグウ寝ているので、「黒田先生はいらっしゃいますか」と声を掛けたら、男たちはいきなり気をつけの姿勢を取って、「フワーーイ」と返事した。7/14

私は、彼女が泊まっているホテルの部屋をつきとめ、おびえきった彼女を相手に、自分がやりたいことを全部やりつつ、朝まで過ごした。7/15

日替わりで会社の受付嬢が会社のいろいろな施設に変ってゆくので、じっと見ていると大観覧車のように目が回って仕方がない。7/17

最近開かれた「日本建築学界2016年総会」は、吉田吉雄の温泉プロジェクトに特別賞を与えようとしたのだが、選考委員会がもめにもめて流会してしまったので、私と妻は峠の秘境の温泉に入ったのだが、妻がなかなか出てこないので心配だ。それに夕方になって雨が降り始めた。7/19

私は党大会の直前に山東省の委員の資格をはく奪されたので、山奥の郷里に戻って炭焼き職人になって一生を終った。7/21

客の中には富裕層から貧民層まで、さまざまなタイプが混在していたが、私はそれらすべての階層にヒットするセールス方法を開発することに成功したのだった。7/23

今日私の親友の娘の結婚式があるので、ホテルをチェックアウトしようとしたら、中国からの観光客がいっぱいなのでいらつく。その時になって私は、私の礼服を別のホテルに置いてあることをふと思い出した。昨夜結婚式の前祝いだと称して、どこかのレストランで友人たちとドンチャン騒ぎをしたのだが、そのあと別のホテルに泊まってしまったようなのだ。7/24

さっき、これでお別れと思って、白くて長いドレスを着た女とソナチネを演奏した後、映画の試写会に行ったのだが、よく見たらさっきのヴァイオリンをまだ右手に持ったままだったので帰ろうとしたのだが、「ちょっと待って、いま幻の大スターに紹介しますから」といわれたので待っているのだが。7/25

大阪の肉加工業に従事している親戚の子供から電話で相談があって、東京に出て別の仕事をしたいという。さてどうしたものか。7/26

私は携帯も、ましてやスマホも持たずに長く働いていたのだが、会社の偉いさんが「ちょっと相談したいことがあるので、役員室まで来てくれ」というので、だんだん不安になってきた。7/26

私は家の金庫にあった1万円をこっそり取り出して、自分の好きなものを買っていたのだが、すぐにそれがばれてしまったので「やはりこういうことをすれば、こういうことになるよな」と思いながら、祖父の前で神妙に頭を下げて詫びを乞うていた。7/27

部長と課長に連れられて某所へ行った。急に2人の姿が見えなくなったので、慌てて探すと食事をしているので、私もその隣に座ると、本格的なコース料理が出てきた。美味い美味いと食べていると、向かい側に高峰秀子と磯村氏が座っている。これはどういう集まりなのか。7/28

A課長がA分校からB分校へ異動になったのは、日本人のシェフがいてうまい料理にありつける、と考えたからだったが、着任早々白クマに食べられてしまったので、それは見果てぬ夢に終わった。7/28

千載一遇、一発逆転の最後のチャンスに失敗した私は、とうとう一文無しになって、自己破産を宣告して、山奥に逼塞した。7/29

共産党の書記長は、政治活動のかたわらアマチュアオケの指揮をするのが趣味だったが、とつぜんウイーンフィルから定期演奏会への出演を頼まれて、困惑しているそうだ。7/30

前回もそうだったが、この中華レストランはサービスが悪い上に、注文をしているうちにどんどんメニューがなくなり、結局頼んだものがなに一つ出てこないので、頭に来た私は「もう二度とこんな店なんか来ないぞ!」と叫んだ。7/31


  くねくねと天然ウナギは踊ってるウナサブロウよ人に食わるな 蝶人

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自由律詩歌その25

2017-08-04 13:56:01 | Weblog


ある晴れた日に第467回


けあけあけあ
けいけいけい
けうけうけう
けえけえけえ
けおけおけお
けかけかけか
けきけきけき
けくけくけく
けけけけけけ
けこけこけこ
けさけさけさ
けしけしけし
けすけすけす
けせけせけせ
けそけそけそ
けたけたけた
けちけちけち
けつけつけつ
けてけてけて
けとけとけと
けなけなけな
けにけにけに
けぬけぬけぬ
けねけねけね
けのけのけの
けはけはけは
けひけひけひ
けふけふけふ
けへけへけへ
けほけほけほ
けまけまけま
けみけみけみ
けむけむけむ
けめけめけめ
けもけもけも
けやけやけや
けよけよけよ
けらけらけら
けりけりけり
けるけるける
けわけわけわ
けんけんけん


最後まで守ってくれるはずの人物に刺し殺されし子の驚きと悲しみ 蝶人

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すべての言葉は通り過ぎてゆく 第49回

2017-08-03 16:10:25 | Weblog


西暦2017年文月蝶人狂言綺語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op. 255


ドラマ「シカゴメッド」では、担ぎ込まれた患者をスタッフが「1,2,3」と掛け声をかけながらベッドに移す。なんだか楽しそうなので、私も一回やってみたいのだが。7/1

ドラマ「シカゴメッド」では、重篤な患者が手当ても及ばず死んでしまうと、医者は時計を見ながら「死亡時刻何時何分」と吐き捨て、そのまま部屋を出ていくのだが、あれでは患者は浮かばれないのではないだろうか。7/2

自民党がここまで敗北するとは驚いた。民進党はもう終わりだね。それにしても第2自民党の小池&小池新党の一体どこがよくてあれほど急激に靡くのかてんで分からない。都民自身にも分からないのではないだろうか。7/3

先月の28日、児童精神科医の佐々木正美先生が81歳で逝去された。先生は自閉症の長男を温かく指導してくださり、自閉症に対する世間の偏見、無知と闘い、私が手がけた「神奈川県域自閉症児者親の会」の立ち上げに支援を惜しまれなかった。黙祷。7/4

羽黒山は現在であると同時に死の入り口であり、つぎの月山で死ぬ。月山は死後の世界である。死んでから湯殿山に登って御神体の岩から湧き出る湯の命をいただいて蘇る。嵐山光三郎「芭蕉という修羅」7/5

荒海や佐渡によこたふ天河の句は、芭蕉の内面に描かれた宇宙である。「見えないもの」を見るのが芭蕉の目玉で、芭蕉の眼前にあらわれる風景は「見るものではなく感じるもの」である。これは隠密の直観に通じる。7/6

「おくのほそ道」は歌仙形式の紀行であるが、謡曲を各地の風光にあてはめている。それは「殺生石」「遊行柳」黒塚」鵜飼」邯鄲」実盛」などの名場面を幻視する旅でもあった。嵐山光三郎「芭蕉という修羅」7/7

芭蕉は死ぬ気で旅に出た。それは山岳仏教の「死んで命を入れ替える」ことでもあった。彼は「命がけの隠密紀行」を「風雅な旅」に転化するために、隠密の情報に関する部分をはずし、歌仙の形をとるみちのく俳諧紀行、「おくのほそ道」を書いた。7/8

日本の男は勤め先では背広を着て、家に帰ると着物に着替えてくつろぐのと同様に、公務員、会社員としては、その立場に沿うような発言をし、家に帰ると趣味や密やかな私的生活に耽る。その分裂が、あれほど融通無碍に見える正岡子規にも窺える。森まゆみ「子規の音」7/9

私が根岸を歩き始めた40年以上前、上野の向こうの隠れ里とでもいうように木造の古い家並みが続いていた。それらはいま消滅に近く、美しい東京弁を話してくれた根津っ子もいない。私はかつて見たあの朽ち葉色の根岸風景を記憶の中に辿っている。森まゆみ「子規の音」7/10

高安は相変わらずの腰高が修正されず、稀勢の里はまるっきり怪我の後遺症から回復しておらず、田子ノ浦親方はちんぴらで、両人に対する何の指導力も発揮できないので、名古屋場所は前途多難ずら。7/10

まず最初に共謀罪を適用すべきは戦後日本の自由民主主義と平和憲法、基本的人権、表現の自由、三権分立、立憲主義を共謀謀議によって傍若無人に棄損した安倍蚤糞内閣と自民党ではないだろうか。7/12

人は、自分で死んでみるまでは、人が死ぬということの本当の意味を知ることは、ついにないのだろう。7/13

朝、カラスの不気味な鳴き声で起こされた。私はカラスや画眉鳥の鳴き声は嫌いだが、スズメやウグイスやホトトギスやコジュケイの声は好きだ。7/14

明治22年3月の体力測定の結果が残っている。子規164センチ、胸囲81センチ、体重約52キロ。夏目漱石は158センチ、79センチ、52キロで子規の方がやや体格はいい。「三四郎」の主人公の身長を165センチとしたところに漱石の理想の身長がしのべるかもしれない。森まゆみ「子規の音」7/15

子規は授業中の内職で「いたづら当字」を作っている。絵好きEconomy、今晩聖書無Conversation、明日取蚤Astronomy、火巣鳥History、常食火Geography、妻艶洲Science、どれもすてき。しかし妻殺児Psychologyとなると物騒だ。森まゆみ「子規の音」7/16

子規は士の子である。残念なことだが子規にとっては日清戦争を歌うのも「文学者として千載一遇」に思え、「どうかして従軍しなければ男に生まれた甲斐がない」と思い詰めた。森まゆみ「子規の音」7/17

台湾と香港、そしてすべての隣国を強権で威嚇し、死せる劉暁波氏の墓すら作らせない。時折偉そうに北朝鮮をたしなめたりしているが、中国という国には、民主主義も、言論の自由のかけらもない。7/18

偉大なる日野原翁、105歳で召天。自閉症を病気と勘違いしている不勉強な医師ではあったが、戦後民主主義と憲法第9条の体を張った旗手でもあった。合掌。7/19

元NHKの女性アナウンサーの後藤美代子さんが、86歳で亡くなった。この人はカラヤンやベームの来日コンサートというと決まって番組案内を務めていたが、そのよく通るソプラノは、森麻季のヒステリックなキンキン声より遥に美しかった。7/20

きのう長男が施設のトイレに携帯を落としたという。auに電話して使用中止にしたのだが、通信音から判断すると水没していないという。ほぼ24時間経過したがまだ出てこない。はてさてどこへ消えたか天然記念物的超簡単ガラケー。7/21

半年間であれくらいやりたい放題をやった大統領はいないだろう。何百倍、何千倍の時間をかけてだが、同じような暴挙と愚挙をやり尽くした極東の島国の宰相と手に手を取って歴史の舞台から引退し給え。7/22

次々に懐かしい有名人が死んでいくが、できれば全員「やすらぎの郷」に出演して、今生の挨拶を終えてからにしてほしいものだ。7/23

衆院の閉会中審査の参考人にどうして加計理事長や安倍蚤糞夫人が登壇せず、まったく無意味な愛媛県元知事が大政翼賛忖度発言を連発して時間を無駄に消費するのか不可解。岩盤掘削と官邸主導加計独走とはなんの関係もない。7/24

友達の便宜を図ってなんとかして新学部を作ろうとする安倍蚤糞の意向を忖度し、ありとあらゆる便宜を図ろうとする蛆虫ども。この醜悪な構図に嫌気がさした有権者たちが、安倍蚤糞の退場を要求している。7/25

トランプ、プーチン、金正恩、習近平、安倍蚤糞etc、世の中はむしろ存在しないほうがはるかにマシな「悪しき健常者たち」で満ち満ちている。こういうろくでなしどもに比べたら「金輪際悪事をしでかせない超重度の障害者たち」の方がどれだけ人間としての存在価値が高いことか。7/26

この1年間、やまゆり園殺傷事件の被害者と犯人について物思いに耽らない日はほとんどなかったが、1周忌がやってくるとマスコミは狂ったように朝から晩まで騒ぎ立てる。そしてあと3日もすれば誰も何も言わなくなるに違いない。そんなもんか? そんなもんだ。7/27

無能な人物が、国家や政党の重要な職務を担当すれば、結局国民の不利益と災厄をもたらす。稲田防衛大臣と蓮舫代表の辞任。7/28

「やすらぎの郷」にまだ野際陽子さんが出演している。出演シーンがなくなったときが、お別れのときである。7/29

今度の党首選でどちらが勝っても、民進党は左右に分裂するのではないだろうか。右派は小池新党、自民、維新に吸収され、左派は共産、社民、自由との連合をもくろむのだろう。7/30

上の家は、刈った枝葉を断りもなく落としてくるし、隣の家は、垣根を越した枝葉を刈ってくれと言うてくる。はてさてどちらがよき隣人ならんか。7/31


  野際陽子が「やすらぎの郷」に出ている限り野際陽子は生きている 蝶人


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なにゆえに第41回~西暦2017年文月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2017-08-02 12:00:32 | Weblog


ある晴れた日に第466回


なにゆえに歯を磨いたのに忘れてしまう日一日と老いぼれていくので

なにゆえに政府は弾道ミサイル広告を乱れ打つ国の責任を民に転化

なにゆえに自民党は惨敗した安倍蚤糞に頭に来たから

なにゆえにソフトバンクのスマホから来る文字は化けるある意味お化けのような会社だからな

なにゆえにICBMを美男子と呼ぶ金正恩はミサイルフェチ

なにゆえに「ウインドウズ7」への切り替えを用意する「10」なんて必要なかった

なにゆえに稀勢の里は夏場所に出る親方がきちんと仕切れないから

なにゆえに自閉症を病気だというどっちかといえば交通事故みたいなもの

なにゆえに安倍蚤糞は委員会に出ない野党が怖い卑怯者太夫

なにゆえに息子は右耳がしくしく痛む葛根湯では治らないのか

なにゆえに政治家は自民を目指す現世権力に縋りつきたい

なにゆえに劉暁波氏は瞑目した人権と自由なき中国に抗して

なにゆえに安倍蚤糞は委員会出席へこれまでになく追い詰められている

なにゆえに火葬してすぐに散骨させられる革命家の墓標なんて迷惑千万

なにゆえにまだ気象庁は梅雨明け宣言をしない担当者ただいま熱中症ずら

なにゆえにこの世の中は生き辛いあの世については詳しくないが

なにゆえに党首の国籍をうんぬんすAI だろうと私は構わぬ

なにゆえに人は急いで死んでいく真夏の葬式は迷惑だから

なにゆえに人は右翼になりたがるお国にぶら下がれば何かと楽ちん

なにゆえに今日も無茶苦茶糞暑い地獄で閻魔が釜を焚いてる

なにゆえにトイレに落としたケイタイを流してしまったそれがおそらく耕君の美学

なにゆえに安倍蚤糞の支持率がどんどん落ちるあんたの賞味期限が尽きたから

なにゆえに生協のお兄ちゃんは大喜びするお薦め商品のチャーハンを発注したから

なにゆえに「生きてる資格がない」などとほざくそれはお前の方だろう

なにゆえに昼寝したいのに電話してくるふきのとう舎で退屈しているうちの耕君

なにゆえに稲田は防衛大臣を辞める安倍蚤糞の命脈が尽きたから

なにゆえに稲田は情報隠蔽にしらを切る最後までおのれを防衛せんとて

なにゆえに上からゴミを我が家に落とす自分のゴミは自分で片付けなさいよ

なにゆえに北朝鮮はミサイルを打ち上げる岸田選手のかけもち具合を試すため


 なにゆえに夜中の地震に恐怖がつのるカタストロフは遠からず来る 蝶人



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