名古屋の伏見にある創業明治3年(1870)という老舗「鯛めし楼」。鯛尽くしの様々な料理がいただける店で、夜に使うにはお高い店だが、昼には名物の鯛めしを食べる事が出来る。少し雨がぱらつく中、店へと歩いて行く。店の建物の前は駐車場になっていて、脇に白い暖簾が掛かった控えめな入口がある。店に入ると、店内はL字の広いカウンターになっていて、さすがに落ち着いた高級感ある雰囲気。テーブル席と個室も用意されているとのこと。着物を着た給仕の女性に案内され、カウンターに座る。奥が調理場になっていて、何人もの調理人が居る様子。あちらこちらに「鯛車」を模した可愛らしいイラストが描かれている。社用の客の土産用だろう、ゴルフのピンなどにも鯛車のイラストが描かれて置いてあった。
先客は3人程で、意外にも若い人達だったが、接待利用のようだった。やはりみんな鯛めしを食べている。自分の前に置かれた品書きにはびっしりと鯛料理を中心とした一品料理が並んでいるが、どれにも値段が書かれていない。これらの一品料理で日本酒をいただきたいところだが、接待以外で夜使うにはちょっと覚悟が要りそうだ。もちろんこの日は、はじめから鯛めしを頂くつもりだったので、迷うことも、覚悟も、全く必要無いのだが(笑)。
しばらくしてお重と汁椀が盆にのせて運ばれた。蓋を開けるとびっしりと鯛めしが敷き詰められている。こちらの鯛めしは天然鯛の身を細かくほぐして、味付けしたもの。いわゆる「でんぶ」だが、混ぜ物なし。その口当たりはふわふわで、それだけだと頼りないものだが、ご飯と一緒にひと口、口に入れると、鯛の味が凝縮されていて存在感は充分。これ、ものすごく手が掛かってるなァ。温かいご飯は味が付けられていて、口に入れると鯛の香りも引き立ち、旨い。澄まし汁には鯛の身、えのき、山椒の葉が入っている。すっきりした味付けで、ご飯がわりとしっかりした味付けなのでちょうどいい。一緒に出た香の物は、その切り方にも隙が無く、さすが老舗高級料理店という矜持を垣間見ることが出来る。重に入っているので、鯛めしの量はかなり多く、少食の方でなくとも持て余してしまうかも。この半分のサイズがあってもいいくらい。食後にはなぜかコーヒー(ネスプレッソ)が付くが、これは要らなかったかな。お茶で充分。
量も多く、シンプルな味が続くので、途中ややダレるが、昔のまま(つまり140年以上)の調理という贅沢な味を堪能する事が出来た。素晴しい技術と味を知って、またひとつ大人になった気分(すでにオッサンだが)。品書きにあった「鯛木ノ芽焼」「鯛酒むし」「鯛あら煮」「別鯛茶」など、色々食べてみたいなァ。(勘定は¥3,240)
↓ 伏見・納屋橋の東詰に建つ「旧・加藤商会ビル(現・サイアムガーデン)」(昭和6年・1931建造)※国登録有形文化財 現在は鯛、ではなくタイ料理店。
愛知県名古屋市中区錦2-18-32
( 名古屋 伏見 たいめしろう 鯛めし 納屋橋 なやばし 加藤商會 サイアムガーデン )