こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

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よりよく生きるにはどうしたらいい?

「献立アプリ」 第3話・・・メキシカンフェアー

2019年06月05日 | 料理・グルメ
第2話からのつづき)
『今夜はなにが食べたい?』
ちょうど仕事場を出るところに、妻からそんな連絡がアプリで入った。また何かの食材の”注文”が入ったのかと思ったが、違った。こういうとき、以前は、「適当でいいよ」なんて返事をしていたこともあったけど、主婦が日々献立を考えることがいかに大変な仕事であるかが私も最近やっと分かってきたので、今では真剣に考えて返事をしている。結婚してからかれこれ20年、夕食だけで5000だか6000ものメニューを考えさせてきたのだから気がつかない方がどうかしている。
私もラインに、『タコスは?』
と、返事を入れた。
 
妻は食材を私に買わせたりしないようにと気を使ってくれているので、例の”アプリで欲しいものを連絡すると、その商品を売っているワゴンが出現するという不思議なシステム”を使うことはあまりしないでいる。
それでも、これまでに、ニンニク、シジミ、クレソン、ソーセージを買って欲しいという連絡があり、その都度ワゴンが出現してくれ、私はそれらの商品を何事もないかのように買い物し、事なきを得ている。ちなみに、犬のおやつのリクエストは一度きりだ。
その都合よく出現するワゴンが幻ではないのは、品物を買った後、その場所に歩いて戻ってみても、やっぱりそこあるという事で確認できた。でも、出勤時にはその場所にワゴンはあるものの、当然商品はまだ置いてない。どこかの時点で誰かが商品を持ってきて、並べるのだろうが、それをわざわざ確認するのは意味がない。第一、それが”切実に”必要でなければそのワゴンは出現しないのだ。
 
その不思議なワゴンで商品を売っていた人は、若い人も年寄りもいた。最初の生姜と油揚げとビールを売っていたのは、50がらみの小太りな女性だったし、犬のおやつを売っていたのは学生アルバイトのような明るい髪の毛の色の20ぐらいの女性だった。シジミは産地直送というだけあってか、たくさんのシワの刻まれた顔の、いかにも漁師という感じの初老の男性だった。
 
 
今夜の食事のメニューが何に決まったのかが気になったが、私としては「今夜のタコス!」と心の中で勝手に呟きながら家路についた。
 
 
アプリでリクエストしておいた通り、夕食はタコスだった。だが、いつもと味が違う。そもそも、具材を挟むタコシェルが違うのだ。
「あれ?今夜はいつもと違うのにしたの?」
「そう、やっぱりわかる?」
「まあ、そりゃわかるよ。でも、味は悪くはないから、いいよ。うん、美味しい。」
「そう?ならいいんだけど。新しいのにしてどうか、心配だったの。」
「ところで、これってどこで売っていたの?」
「それがね、偶然なんだけど、あの連絡入れたのがちょうど駅前だったんだけど、そうしたら、”メキシカンフェアー”っていうのをやっているお店があって。」
「ふーん、そうなんだ。でも、まああそこなら普段からこのタコス売ってるしね。」
「まあね。ちょっと安いからいいかなって思って買っちゃった。トマトもレタスも一緒に売っていたのよ。あと、アボカドも。」
「へえ、ビックリだね。まあ、でも味はやっぱりいつものがいいかな?」
「そうね、お試しで食べてみたけどやっぱりイマイチよね。今度はあっちにするわ。」
「これはこれで美味しいから、大丈夫。美味しくいただきましょう!」
私はそういいながら、妻のコップにビールを注いだ。
 
 

明日の献立は?

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第4話に続く