(第13話からの続き)
独裁政治を行うならば、個人情報を集めて情報統制を実施してしまえばいい。実際、先行する巨大プラットフォーマーなどはその気になれば相当量の、個人情報を得ている。カード番号も個人識別番号もみんなネット経由で登録されている。プラットフォーマーたちはそれらを寡占しようと躍起になっている。国内でもそれらに対抗していくつかのネット通販会社などが立ち上がって顧客の取り込みに躍起になっている。顧客=個人情報であり、そこには金がある。そして、ヘヴンはそれらの国内勢力連合からアジア勢力の結集を目指しているらしい。私たちの献立連絡もヘヴンの持つ私たちの情報の一つとなっていたに違いない。わが家の経済規模、ペットに至るまでの家族構成はすでに全て知られてしまっている。"今日のおススメ!"なんて勧められたら、そのメニューを選んでしまうだろう。
でも、その先には嗜好、さらには思想のコントロールが待っている。フェイクニュースとまではいかないでも、好きな記事ばかりを並べられてしまえば、そのうちそのような記事ばかりしか読まなくなってしまう。
右寄りの記事ばかり、左寄りの記事ばかりでは思想は偏る。国家がそのようなことをコントロールするようになったらどうなるだろう。その国が属している国家グループを礼賛する記事ばかりを並べていけば国民は皆それだけが真実だと考えらようになる。目の前で声を上げる数名の人よりもネットの情報の方が正しいのだ。
あの帽子の男は、単なる通り魔だったのだろうか?ヘヴンの秘密、国の秘密を知っていたということはなかったのだろうか。私はもう一度、被害者を探してみることにした。腕を切られた中学生の女の子、腹や背中を刺された男性、そしてそのほかの女性2人と男性1人。どの人も、IT関連企業の社員もしくはその家族だった。
被害者と男の関係は