片道2時間近くかけての通勤。昔、「病理医だから、そんなことができるんだよね」と、やっかみ半分で外科医に言われたことがあるが、たしかにそれはそうだろう。
急変する患者に即応できるように待機している必要は無い。
もし、急を要することがあっても、手術や生検で検体を採取して、臨床検査技師が標本を作り上げるまでに2、3時間はかかる。だから、オンコールで対応している。医者にもいろいろある。そういうものなのだ。
駅を降りてからの徒歩。花や緑を探して歩く。
花が少ないから、”花境期”といわれるこの季節。馥郁たる甘く清楚な香りで辺りを満たしてくれていたシクラメンにも、茶色く萎れた花が目立ってきた。雨の季節だからこそ、香りが余計に引き立っている気がする。
毎日の通勤、いろいろあるけれど、いろいろな人を見て、いろいろな目に遭い、時が流れていく。
通学、通勤、日々過ぎていく中で年を取る。
スティーブン・セガールは年を取ってずいぶん体型が変わってしまった。
私も、気がついたらおっさん体型になっていた。
時は、流れ、人間誰しも変わっていく。
野草、というか雑草(「名の無い雑草はない(by 昭和天皇)」のでこの表現は正確ではない)を探してうつむいてばかり歩いていたけれど、坂の下で顔を上げて、その先の空を見ると薄い雲を透かして、太陽の輪郭が見えた。
冬の黄色っぽい太陽とは違い、雲を透しても夏の太陽は白く輝いてまぶしい。
梅雨が明け、暑い季節がやってくる。
そして、明日も私は横須賀線に乗るのだろう。
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