貿易赤字の裏側② 円安でも輸出増えず
2013年の貿易赤字が巨額になった要因に、輸出の減少が上げられます。日本の輸出総額69兆7877億円のうち、14・9%は自動車が占めています。日本の輸出をけん引してきた自動車産業の実態を見ます。
13年の自動車輸出額は10兆4150億円で、12年比12・9%の伸びでした。しかし自動車輸出額が増大したのは、為替相場が12年より円安ドル高になったためです。販売代金をドルで受け取り、円に換算すると為替変動分だけ金額が膨らみます。
一方、輸出台数は、12年の584万3807台から581万7773台へと2万6034台も減りました。
“円安になれば価格競争力が強まるので、日本からの輸出は増える”といわれてきました。しかし、自動車の場合には、輸出額が増えても輸出台数は増えていないのが実態です。
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2013年の自動車大手3社の輸出台数・海外生産台数の増減(2012年比)
大手3社が減
輸出入の増減をメーカーごとにみると、富士重工やマツダは輸出台数を増やしたものの、トヨタ、日産、ホンダの大手3社は軒並み輸出台数を減らしています。
12年の21万4561台から、13年は12万5478台へと輸出台数を半分近くまで減らしたホンダは、輸出台数の減少について、「わが社はもともと海外で自動車を現地生産してきました。日本からの輸出は、現地生産で足りない分や現地でつくれないものに限っています。13年は現地生産が好調で、その分輸出が減りました」(同社広報)と話します。円安の影響については、「わが社の自動車輸出には何の関係もない」としています。
自動車最大手のトヨタは、輸出を12年の194万5688台から、13年は189万9648台へと4万6040台減少させました。同社広報部は、「北米向けは輸出が増えたものの、中南米、欧州、アジア、オセアニアで輸出が減ったために全体として減少した」といいます。その要因については「輸出先の国の状況や競合他社との関係がある」としつつ、「為替相場は輸出台数の増減にほとんど影響はない」といいます。また、日本からの輸出が減少しても現地で生産を行っているので、販売台数は確保しているとしています。
自動車大手は、日本からの輸出は減らす一方で、海外生産台数を増やしています。トヨタは、12年比29万1580台増の553万5196台を13年に海外生産しました。日産は398万6378台(同24万5225台増)、ホンダは345万7740台(同37万6196台増)を13年に海外生産しています
過去最高益に
トヨタは連結営業利益で、14年3月期にはリーマン・ショック前の08年3月期を上回り、過去最高益となる2兆3000億円を上回る見通しです。海外生産・販売が好調なのに加えて、想定以上の円安で利益が押し上げられるためです。輸出を減らしながら大もうけをあげることになります。
これまで、自動車をはじめとする大企業・製造業は、労働の規制緩和やリストラ支援など政府の政策を利用してきました。派遣労働者や請負など安い労働力を使い、下請けの中小・零細企業に適正単価以下での納入を強いるなどの手法で「国際競争力」で輸出を増やし、もうけをあげてきました。
それが、リーマン・ショックなどにより輸出が伸びなくなっても、海外生産で大もうけを続けています。日本からの輸出台数や国内生産台数が増えなければ、国内での雇用も賃金も増えるはずがありません。結果として内需はますます冷え込みます。巨額になった貿易赤字の背景には、金銭的な利益さえ上げればいいという多国籍企業の行動があります。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年2月8日付掲載
日本の国としては貿易赤字になってしまったのですが、個々の企業は海外生産などで利益を確保。
輸出は増えなくても、トータルとして黒字にしているんですね。
2013年の貿易赤字が巨額になった要因に、輸出の減少が上げられます。日本の輸出総額69兆7877億円のうち、14・9%は自動車が占めています。日本の輸出をけん引してきた自動車産業の実態を見ます。
13年の自動車輸出額は10兆4150億円で、12年比12・9%の伸びでした。しかし自動車輸出額が増大したのは、為替相場が12年より円安ドル高になったためです。販売代金をドルで受け取り、円に換算すると為替変動分だけ金額が膨らみます。
一方、輸出台数は、12年の584万3807台から581万7773台へと2万6034台も減りました。
“円安になれば価格競争力が強まるので、日本からの輸出は増える”といわれてきました。しかし、自動車の場合には、輸出額が増えても輸出台数は増えていないのが実態です。
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2013年の自動車大手3社の輸出台数・海外生産台数の増減(2012年比)
大手3社が減
輸出入の増減をメーカーごとにみると、富士重工やマツダは輸出台数を増やしたものの、トヨタ、日産、ホンダの大手3社は軒並み輸出台数を減らしています。
12年の21万4561台から、13年は12万5478台へと輸出台数を半分近くまで減らしたホンダは、輸出台数の減少について、「わが社はもともと海外で自動車を現地生産してきました。日本からの輸出は、現地生産で足りない分や現地でつくれないものに限っています。13年は現地生産が好調で、その分輸出が減りました」(同社広報)と話します。円安の影響については、「わが社の自動車輸出には何の関係もない」としています。
自動車最大手のトヨタは、輸出を12年の194万5688台から、13年は189万9648台へと4万6040台減少させました。同社広報部は、「北米向けは輸出が増えたものの、中南米、欧州、アジア、オセアニアで輸出が減ったために全体として減少した」といいます。その要因については「輸出先の国の状況や競合他社との関係がある」としつつ、「為替相場は輸出台数の増減にほとんど影響はない」といいます。また、日本からの輸出が減少しても現地で生産を行っているので、販売台数は確保しているとしています。
自動車大手は、日本からの輸出は減らす一方で、海外生産台数を増やしています。トヨタは、12年比29万1580台増の553万5196台を13年に海外生産しました。日産は398万6378台(同24万5225台増)、ホンダは345万7740台(同37万6196台増)を13年に海外生産しています
過去最高益に
トヨタは連結営業利益で、14年3月期にはリーマン・ショック前の08年3月期を上回り、過去最高益となる2兆3000億円を上回る見通しです。海外生産・販売が好調なのに加えて、想定以上の円安で利益が押し上げられるためです。輸出を減らしながら大もうけをあげることになります。
これまで、自動車をはじめとする大企業・製造業は、労働の規制緩和やリストラ支援など政府の政策を利用してきました。派遣労働者や請負など安い労働力を使い、下請けの中小・零細企業に適正単価以下での納入を強いるなどの手法で「国際競争力」で輸出を増やし、もうけをあげてきました。
それが、リーマン・ショックなどにより輸出が伸びなくなっても、海外生産で大もうけを続けています。日本からの輸出台数や国内生産台数が増えなければ、国内での雇用も賃金も増えるはずがありません。結果として内需はますます冷え込みます。巨額になった貿易赤字の背景には、金銭的な利益さえ上げればいいという多国籍企業の行動があります。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年2月8日付掲載
日本の国としては貿易赤字になってしまったのですが、個々の企業は海外生産などで利益を確保。
輸出は増えなくても、トータルとして黒字にしているんですね。