ブラック企業と就活④ 劣悪な労働 変えられる
学生のためになる真のキャリア教育とはいったい何なのか?その試みの一つが、法政大学社会学部の授業「社会を変えるための実践論」です。
文部科学省は2010年に大学設置基準を一部改定。11年度からすべての大学に対して「社会的・職業的自立に関する指導等」(キャリア教育)を大学教育の一環として実施するよう義務付けました。生き残り競争をかけて就労支援や就業力アップにとりくむ大学を、さらに後押しする形となりました。
自ら考える学び
今年度この授業を担当している島本美保子教授は言います。
「あるべきキャリア教育とはどんなものかを大学側が提案していかなければ、大学はやがて就職予備校になっていくのではないか。その危機感がこの科目開設のきっかけでした」
キャリア教育とは、職業上に限らない生き方そのもののキャリアを見通しながら、問題に直面したさいにどうしたら積極的な解決がはかれるのかを視野に入るべきではないのか。こうした思いを形にする実験授業として11年度にスタート。3年目を迎えました。
「たまたま同じ問題意識をもった人たちがいたから実現したこと」と島本教授がいうように、10人ほどの教員がかかわります。
外部講師も依頼し、学生による討論を繰り返します。今年度は高校生の社会運動、就職困難とのたたかい、不当解雇問題と裁判、司法や政治への訴え方、「一揆の作法と応用」などのテーマを取り上げました。
同学部2年の小林愁さんは、この授業のアシスタントをつとめます。「働くことや生きることを学生に考えさせるという学びの形は、社会に出てきっと役に立つと思うんです」
学生の間に入り、グループ討論を見守っていた大暗雄二教授も「いまはわからなくても、困ったときに学んだことを思い出してくれればいい」と構えて、とりくんでいます。
「『死ぬな!死にたくなったら連絡してこい』と卒業式で学生にメッセージを送っています。人を壊すような社会に、学生をそのまま放り出すわけにはいかないんです」

「社会を変えるための実践論」の授業風景=2013年11月、東京都内
国民全体の課題
北海学園大学の川村雅則准教授は、「いす取りゲーム」の構造の問題と、働くルールを学生たちに教えています。
同時に「劣悪な働き方は、労働組合で団体交渉を通じて変えられるということ、またその労働組合には誰もが入れるのだということを、もっと伝えていく必要があるのではないか」と語ります。
「ブラック企業」が社会問題となり、規制を求める世論と運動が国を少しずつ動かしています。14年度からはハローワークの求人票に、大学生・大学院生の過去3年間の採用者数と離職者数の記入欄がもうけられます。
一方で安倍政権は、さらに学生を苦しめる雇用施策をすすめています。派遣労働を拡大し、低賃金で解雇しやすい「限定正社員」の導入を計画。正社員への道がいっそう狭められ、就活はさらに過熱することになります。さらに、正社員になっても「残業代ゼロ」で限りなく働かせる裁量労働制の拡大。正社員になれたとしても、いま以上に過酷な働き方にさらされる恐れがあります。
川村准教授はいいます。
「大学教員の間でも、卒業生のひどい働かされ方が話題になります。大学側のとりくみが急がれます。同時に、雇用の質をただし、安心して働ける社会をつくるというのは国民全体の課題です。具体的な取り組みを始めるときです」
(おわり)(堤由紀子、行沢寛史が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年2月18日付掲載
「働くことや生きることを学生に考えさせるという学びの形は、社会に出てきっと役に立つ」
雇用の「椅子取りゲーム」をやめさせて、雇用の質をただし、安心して働ける社会をつくるというのは国民全体の課題。
学生のためになる真のキャリア教育とはいったい何なのか?その試みの一つが、法政大学社会学部の授業「社会を変えるための実践論」です。
文部科学省は2010年に大学設置基準を一部改定。11年度からすべての大学に対して「社会的・職業的自立に関する指導等」(キャリア教育)を大学教育の一環として実施するよう義務付けました。生き残り競争をかけて就労支援や就業力アップにとりくむ大学を、さらに後押しする形となりました。
自ら考える学び
今年度この授業を担当している島本美保子教授は言います。
「あるべきキャリア教育とはどんなものかを大学側が提案していかなければ、大学はやがて就職予備校になっていくのではないか。その危機感がこの科目開設のきっかけでした」
キャリア教育とは、職業上に限らない生き方そのもののキャリアを見通しながら、問題に直面したさいにどうしたら積極的な解決がはかれるのかを視野に入るべきではないのか。こうした思いを形にする実験授業として11年度にスタート。3年目を迎えました。
「たまたま同じ問題意識をもった人たちがいたから実現したこと」と島本教授がいうように、10人ほどの教員がかかわります。
外部講師も依頼し、学生による討論を繰り返します。今年度は高校生の社会運動、就職困難とのたたかい、不当解雇問題と裁判、司法や政治への訴え方、「一揆の作法と応用」などのテーマを取り上げました。
同学部2年の小林愁さんは、この授業のアシスタントをつとめます。「働くことや生きることを学生に考えさせるという学びの形は、社会に出てきっと役に立つと思うんです」
学生の間に入り、グループ討論を見守っていた大暗雄二教授も「いまはわからなくても、困ったときに学んだことを思い出してくれればいい」と構えて、とりくんでいます。
「『死ぬな!死にたくなったら連絡してこい』と卒業式で学生にメッセージを送っています。人を壊すような社会に、学生をそのまま放り出すわけにはいかないんです」

「社会を変えるための実践論」の授業風景=2013年11月、東京都内
国民全体の課題
北海学園大学の川村雅則准教授は、「いす取りゲーム」の構造の問題と、働くルールを学生たちに教えています。
同時に「劣悪な働き方は、労働組合で団体交渉を通じて変えられるということ、またその労働組合には誰もが入れるのだということを、もっと伝えていく必要があるのではないか」と語ります。
「ブラック企業」が社会問題となり、規制を求める世論と運動が国を少しずつ動かしています。14年度からはハローワークの求人票に、大学生・大学院生の過去3年間の採用者数と離職者数の記入欄がもうけられます。
一方で安倍政権は、さらに学生を苦しめる雇用施策をすすめています。派遣労働を拡大し、低賃金で解雇しやすい「限定正社員」の導入を計画。正社員への道がいっそう狭められ、就活はさらに過熱することになります。さらに、正社員になっても「残業代ゼロ」で限りなく働かせる裁量労働制の拡大。正社員になれたとしても、いま以上に過酷な働き方にさらされる恐れがあります。
川村准教授はいいます。
「大学教員の間でも、卒業生のひどい働かされ方が話題になります。大学側のとりくみが急がれます。同時に、雇用の質をただし、安心して働ける社会をつくるというのは国民全体の課題です。具体的な取り組みを始めるときです」
(おわり)(堤由紀子、行沢寛史が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年2月18日付掲載
「働くことや生きることを学生に考えさせるという学びの形は、社会に出てきっと役に立つ」
雇用の「椅子取りゲーム」をやめさせて、雇用の質をただし、安心して働ける社会をつくるというのは国民全体の課題。