きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

ブラック企業と就活② 待遇の質問はタブー?

2014-02-20 20:09:04 | 働く権利・賃金・雇用問題について
ブラック企業と就活② 待遇の質問はタブー?

就職活動は、学生本人だけではなく、大学側も必死です。なぜか。
一つは、非正規雇用でスタートすれば、賃金が低く、不安定な働き方が続くという労働市場の現状があることです。
非正規雇用は不安定です。雇用契約期間が「6カ月超から1年以下」という労働者は41%。派遣労働者に限れば6割強が「6カ月以下」という短さです。(総務省「就業構造基本調査」2012年)正規雇用に比べ賃金が低く抑えられているため、正規雇用と非正規雇用との間には、男性で月12万5000円、女性で月7万7000円もの賃金格差があります。(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」12年、グラフ1)
しかし、正規雇用の枠が狭まっているため、非正規雇用から正規雇用への転換は容易ではありません。
もう一つは、少子化が進むなかで、大学が生き残りをかけているという事情があります。正社員採用が少なければ、新入生が減少するおそれがあるからです。
首都圏のある大学の准教授は「正社員ならオーケーとは決して思いません。でも、学生に『正社員になれ!』とつい言ってしまうんです」ともらします。
「就活は団体競技だ」と学生がひとりぼっちにならないよう気を配り、「自分を安く売るな。選んでいきなさい」
とアドバイスしています。それでも大量採用、大量離職するようなブラック企業にあえて就職する学生もいます。
「名のある企業なら辞めてもつぶしがきくから『とりあえずがんばる』と学生は言うんですが、体を壊さないかと心配です。ブラック企業に対する大学の対策は確かに弱い」
正社員採用をすすめるために、ある大学が作成した冊子には、「労働条件や待遇などについて質問するのはタブー」と書いてありました。



【グラフ1】雇用形態で賃金に大きな格差

「自分が悪い…」
「正社員の採用が減少しているという構造問題をきちんと学生に教えていない。抽象的な『人間力』『コミュニケーション能力』を強調して、『いす取りゲーム』に勝ち抜くような指導をしてはいないか」
大学のキャリア教育の風潮をこう批判するのは、北海学園大学経済学部の川村雅則准教授です。
「十分な情報も与えられず、一方で、早くに適職を見つけよ、仕事に必要な能力を身につけよ、と繰り返される。これでは能力主義や自己責任の考え方が強化されてしまうのではないでしょうか。
就活で落ち続けた学生は、『やるべきことをしなかった自分が悪い』と自己責任を内面化し、目に見えて弱っていきます」



【グラフ2】大学生(昼間部)の奨学金受給率の推移

奨学金返すため
拓殖大学政経学部の中川功教授は、正社員を志向する就活指導について、「比較的安定した正社員にとにかくすべりこまなければ多額の奨学金を返せない、という学生の事情も大きい」と指摘します。
奨学金を扱う日本学生支援機構の調査では、10年度は2人に1人が何らかの奨学金を利用(グラフ2)。その多くは有利子の貸与型です。月12万円、4年間で580万円もの借金を背負おうとしている学生を前にして、中川教授は「非正規雇用でもいいとは言えません」。
しかし、若者をとりまく労働環境は目に余るものがあります。以前は「3年はがんばれ」と励ましていたものを、いまは「1年でもいいから」と言い方も変えました。就活で学生が孤立しないよう、ゼミでチームをつくって情報交換し、アドバイスし合うという協力・共同の就活サポートをしています。
「若者が安心して働ける正規雇用を本気で増やしてほしい。私たち教員の切実な思いです」(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年2月15日付掲載