立憲主義考① 根本は「個人の尊厳」
そもそもの目的は…
「立憲主義ってナンダ?」「これだ!」―日本中に響いたこのコール。「立憲主義」は昨年の「流行語大賞」をとってもいいほど注目されました。「憲法守れ」の市民運動を引っ張った、たたかいのスローガンです。いま、立憲主義を考えます。
立憲主義とは、一言で言えば「憲法に基づく政治」です。議会の多数決によっても憲法に反する決定はできない―。近代政治の根本原則であり、いわば政治の常識です。それが「破壊」されれば、多数党よる独裁政治です。
それは単に形式的な政治のルールではありません。立憲主義の回復を求めるうえで、そもそも立憲主義の目的は何かを考えることは重要です。
市民連合の街頭演説会で「民主主義を取り戻せ」のプラカードを手にシールズのコールに応える人たち=1月5日、東京・新宿駅西口
■自分で選ぶ
昨年12月20日に結成された「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(略称・市民連合)は、その「理念」に「立憲主義を回復し、自由な個人が相互の尊重のうえに持続可能な政治経済社会を構築する政治と政策の実現」を掲げました。「方針」として、戦争法廃止、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」の撤回(立憲主義回復) とともに、「個人の尊厳を擁護する政治の実現」をあげています。
ここにも示されるように、立憲主義の中核には「個人の尊厳」があります。一人ひとり、個人には、誰にも侵すことのできない、その人らしさ、それを自分で選び取る権利があるという思想です。
「市民連合」結成の記者会見で、「安保関連法制に反対するママの会」の西郷南海子さんは「憲法は、権力者に対し、私たちのかけがえのなさを守らせるもの」と述べました。憲法を踏みにじる安倍政権への怒りと恐怖が示されています。
■永久の権利
日本国憲法は、98条で「最高法規」としての性格を定めると同時に、97条で、基本的人権の永久不可侵性を宣言(注)しています。これは「人権を守る法だからこそ憲法は最高法規なのだ」という思想を表すものと理解されています。「すべて国民は、個人として尊重される」と定めた憲法13条は、人権の根本規定です。
立憲主義は、ドイツの啓蒙哲学者の一人、カントが「人の人格に備わる人間性を常に目的として扱い、決して手段として扱ってはならない」と述べたような、崇高な道徳哲学を基礎とするものです。
そうだとすれば、立憲主義の破壊とは、単に政治の形式的なルールを破ったということにとどまらない、人権全体に対する総攻撃という重大な意味を持ちます。(つづく)
(注)97条
「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年1月9日付掲載
立憲主義の中核には「個人の尊厳」があります。一人ひとり、個人には、誰にも侵すことのできない、その人らしさ、それを自分で選び取る権利がある。
それは、啓蒙哲学者の一人、カントの言葉にもさかのぼります。
そもそもの目的は…
「立憲主義ってナンダ?」「これだ!」―日本中に響いたこのコール。「立憲主義」は昨年の「流行語大賞」をとってもいいほど注目されました。「憲法守れ」の市民運動を引っ張った、たたかいのスローガンです。いま、立憲主義を考えます。
立憲主義とは、一言で言えば「憲法に基づく政治」です。議会の多数決によっても憲法に反する決定はできない―。近代政治の根本原則であり、いわば政治の常識です。それが「破壊」されれば、多数党よる独裁政治です。
それは単に形式的な政治のルールではありません。立憲主義の回復を求めるうえで、そもそも立憲主義の目的は何かを考えることは重要です。
市民連合の街頭演説会で「民主主義を取り戻せ」のプラカードを手にシールズのコールに応える人たち=1月5日、東京・新宿駅西口
■自分で選ぶ
昨年12月20日に結成された「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(略称・市民連合)は、その「理念」に「立憲主義を回復し、自由な個人が相互の尊重のうえに持続可能な政治経済社会を構築する政治と政策の実現」を掲げました。「方針」として、戦争法廃止、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」の撤回(立憲主義回復) とともに、「個人の尊厳を擁護する政治の実現」をあげています。
ここにも示されるように、立憲主義の中核には「個人の尊厳」があります。一人ひとり、個人には、誰にも侵すことのできない、その人らしさ、それを自分で選び取る権利があるという思想です。
「市民連合」結成の記者会見で、「安保関連法制に反対するママの会」の西郷南海子さんは「憲法は、権力者に対し、私たちのかけがえのなさを守らせるもの」と述べました。憲法を踏みにじる安倍政権への怒りと恐怖が示されています。
■永久の権利
日本国憲法は、98条で「最高法規」としての性格を定めると同時に、97条で、基本的人権の永久不可侵性を宣言(注)しています。これは「人権を守る法だからこそ憲法は最高法規なのだ」という思想を表すものと理解されています。「すべて国民は、個人として尊重される」と定めた憲法13条は、人権の根本規定です。
立憲主義は、ドイツの啓蒙哲学者の一人、カントが「人の人格に備わる人間性を常に目的として扱い、決して手段として扱ってはならない」と述べたような、崇高な道徳哲学を基礎とするものです。
そうだとすれば、立憲主義の破壊とは、単に政治の形式的なルールを破ったということにとどまらない、人権全体に対する総攻撃という重大な意味を持ちます。(つづく)
(注)97条
「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年1月9日付掲載
立憲主義の中核には「個人の尊厳」があります。一人ひとり、個人には、誰にも侵すことのできない、その人らしさ、それを自分で選び取る権利がある。
それは、啓蒙哲学者の一人、カントの言葉にもさかのぼります。