立憲主義考④ 言葉の明確な意味無視~「法の支配」から「人の支配」へ
安倍政権は、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」としてきた、戦後60年余にわたる政府の憲法解釈を百八十度くつがえしました。これは、「日本を取り巻く安全保障環境が変化」し、「必要な自衛の措置」の範囲が拡大したという理屈による変更でしたが、戦争法の国会審議で政府はその根拠を何ら示せませんでした。
■厳格な解釈
一内閣の勝手な決定で憲法の枠組みを壊して生み出した戦争法。だからこそ、圧倒的多数の憲法学者、歴代の内閣法制局長官、元最高裁長官と判事、日本弁護士連合会など、憲法学と法曹界の“専門家の知的共同体”が「安保法制は憲法違反」だとの批判を突きつけたのです。
憲法は言葉で書かれている―あたりまえですが、重要な前提です。言葉の解釈にはおのずから幅と限界があります。明確な言葉の厳格な解釈でこそ、権力を縛ることができます。言葉の明確な意味と論理を無視する「解釈」は解釈の名に値しません。これを許せば「法の支配」は根底から揺らぎ、権力者による恣意(しい)的な「人の支配」に変わってしまいます。
実際、安倍晋三首相は「憲法解釈変更」のため内閣法制局長官人事に介入。2013年8月に、内部昇格の慣例を破って、集団的自衛権行使の積極容認論者だった小松一郎元駐仏大使を同長官に任命しました。自分の意向に近い人物を法制局長官に“抜擢(ばってき)”し、強引に解釈を変える―まさに「法の支配」から「人の支配」へと逆行する“クーデター”でした。
京都大学で開かれた学術企画「立憲主義を考えるシンポジウム」(昨年12月)で、同志社大学の岡野八代教授(政治学)は、「『人の支配』とは朝令暮改」だと指摘。「これまで私たちが信じていたものを、(権力者が)自分たちの都合でやっぱりなかったことにしようと、反省もなしに前言を平気でひっくり返す。『人の支配』は、その人に振り回される人々の人間らしい生そのものを不可能にする」と批判しました。
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」(憲法9条2項)。
この言葉を厳格に解釈すれば、自衛隊の保有も「違憲」です。
「戦争法案は廃案しかない」と立ち上がった「オール法曹、オール学者」の共同記者会見を報じた「赤旗」1面
■余地はゼロ
政府はなんとか“合理化”するために「自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力」で「世界標準の軍隊とは違う」とし、集団的自衛権の行使をはじめ海外での武力行使を否定してきたのです。9条2項のもと、自国が攻撃を受けていないのに、他国の戦争に参加する集団的自衛権の行使が許される余地はゼロです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年1月12日付掲載
「法の支配」から「人の支配」へ…
法に人が支配されるより、人に支配される方が文句が言えるから良いような感じがしますが…。
昔のことわざ「朝令暮改」。支配者の気分によって憲法や法律の解釈がコロコロと変わってしまっては、たまったもんじゃありません。
安倍政権は、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」としてきた、戦後60年余にわたる政府の憲法解釈を百八十度くつがえしました。これは、「日本を取り巻く安全保障環境が変化」し、「必要な自衛の措置」の範囲が拡大したという理屈による変更でしたが、戦争法の国会審議で政府はその根拠を何ら示せませんでした。
■厳格な解釈
一内閣の勝手な決定で憲法の枠組みを壊して生み出した戦争法。だからこそ、圧倒的多数の憲法学者、歴代の内閣法制局長官、元最高裁長官と判事、日本弁護士連合会など、憲法学と法曹界の“専門家の知的共同体”が「安保法制は憲法違反」だとの批判を突きつけたのです。
憲法は言葉で書かれている―あたりまえですが、重要な前提です。言葉の解釈にはおのずから幅と限界があります。明確な言葉の厳格な解釈でこそ、権力を縛ることができます。言葉の明確な意味と論理を無視する「解釈」は解釈の名に値しません。これを許せば「法の支配」は根底から揺らぎ、権力者による恣意(しい)的な「人の支配」に変わってしまいます。
実際、安倍晋三首相は「憲法解釈変更」のため内閣法制局長官人事に介入。2013年8月に、内部昇格の慣例を破って、集団的自衛権行使の積極容認論者だった小松一郎元駐仏大使を同長官に任命しました。自分の意向に近い人物を法制局長官に“抜擢(ばってき)”し、強引に解釈を変える―まさに「法の支配」から「人の支配」へと逆行する“クーデター”でした。
京都大学で開かれた学術企画「立憲主義を考えるシンポジウム」(昨年12月)で、同志社大学の岡野八代教授(政治学)は、「『人の支配』とは朝令暮改」だと指摘。「これまで私たちが信じていたものを、(権力者が)自分たちの都合でやっぱりなかったことにしようと、反省もなしに前言を平気でひっくり返す。『人の支配』は、その人に振り回される人々の人間らしい生そのものを不可能にする」と批判しました。
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」(憲法9条2項)。
この言葉を厳格に解釈すれば、自衛隊の保有も「違憲」です。
「戦争法案は廃案しかない」と立ち上がった「オール法曹、オール学者」の共同記者会見を報じた「赤旗」1面
■余地はゼロ
政府はなんとか“合理化”するために「自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力」で「世界標準の軍隊とは違う」とし、集団的自衛権の行使をはじめ海外での武力行使を否定してきたのです。9条2項のもと、自国が攻撃を受けていないのに、他国の戦争に参加する集団的自衛権の行使が許される余地はゼロです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年1月12日付掲載
「法の支配」から「人の支配」へ…
法に人が支配されるより、人に支配される方が文句が言えるから良いような感じがしますが…。
昔のことわざ「朝令暮改」。支配者の気分によって憲法や法律の解釈がコロコロと変わってしまっては、たまったもんじゃありません。