立憲主義考③ 戦争は自由の最大の敵~憲法9条制定の基礎に
戦争法廃止・立憲主義回復の焦点は憲法9条の平和主義です。戦争放棄と戦力不保持という徹底した平和主義を定めた9条は、そもそも立憲主義とどのような関係にあるのでしょうか。
■戦争の惨禍
憲法前文は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」し、この憲法を確定するとしました。9条制定の基礎には「戦争の惨禍」への厳しい認識があります。
日本軍国主義による侵略戦争は、2000万人を超えるアジア諸国民と300万人を超える日本国民の命を奪いました。この戦争のなかで、日本は人類史上初めての核兵器の被害者となり、1945年中の犠牲者は広島で14万人、長崎で9万人とも言われます。文字通り、未曽有の「戦争の惨禍」となったのです。
日本軍国主義は、戦争遂行のため、治安維持法、国防保安法と軍機保護法(秘密保護法)などで徹底的に国民の思想言論と運動の弾圧を進めました。治安維持法は最高死刑と改悪された上、対象が無限に拡大され、主権在民と侵略戦争反対を掲げた勢力は徹底的に弾圧されました。その被害は、逮捕者数10万人、送検された者7万5千人、拷問等による虐殺・獄死は1700人近くに及びます。国家神道が強制され信教の自由を迫害し、教化教育で「お国のために血を流す」ことが無上の美徳とされました。
国家総動員法は「国防目的達成ノ為国ノ全力ヲ最モ有効二発揮セシムル様人的及物的資源ヲ統制運用スル」ものとし、強制徴用はじめ人もモノもすべて戦争最優先に国家が取り上げました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/61/64a092194fb871df9941806ab5e23be9.jpg)
雪の中、プラスターを手に「守ろう9条」「生かそう25条」とアピールする人たち=青森市
■戦前の否定
こうした痛苦の歴史のうえに、9条は成立しました。
9条2項の戦力不保持規定は、日本は二度と侵略戦争をしないというアジア諸国への反省の証です。同時に、一切の戦争を否定しなければ国民の生存に加え「個人の尊厳」と自由は保障されない、「戦争は自由の最大の敵」という立場に立っています。9条は自由の基礎でもあります。
元来、近代立憲主義は、国家主権のもと「国家の自衛権」を前提とするものでした。しかし、国民生活を総犠牲にする長く続く総力戦を経て、国家の武装を否定してこそ「個人の尊厳」を中核とする人権保障が全うされるという発展が生まれたのです。9条2項は立憲主義の強化形態であり、日本国憲法の根本的特長です。
9条は、こうして「戦前の否定」を原点とします。これに対し安倍政権は「戦後レジームからの脱却」として9条を否定するもので、戦前の「復活」を志向するもの。9条否定の安倍政権打倒のたたかいは、まさに立憲主義回復への新しい「市民革命」です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年1月11日付掲載
国民生活を総犠牲にする長く続く総力戦を経て、国家の武装を否定してこそ「個人の尊厳」を中核とする人権保障が全うされるという発展が生まれた。
それが憲法9条であり、憲法13条なのです。
戦争法廃止・立憲主義回復の焦点は憲法9条の平和主義です。戦争放棄と戦力不保持という徹底した平和主義を定めた9条は、そもそも立憲主義とどのような関係にあるのでしょうか。
■戦争の惨禍
憲法前文は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」し、この憲法を確定するとしました。9条制定の基礎には「戦争の惨禍」への厳しい認識があります。
日本軍国主義による侵略戦争は、2000万人を超えるアジア諸国民と300万人を超える日本国民の命を奪いました。この戦争のなかで、日本は人類史上初めての核兵器の被害者となり、1945年中の犠牲者は広島で14万人、長崎で9万人とも言われます。文字通り、未曽有の「戦争の惨禍」となったのです。
日本軍国主義は、戦争遂行のため、治安維持法、国防保安法と軍機保護法(秘密保護法)などで徹底的に国民の思想言論と運動の弾圧を進めました。治安維持法は最高死刑と改悪された上、対象が無限に拡大され、主権在民と侵略戦争反対を掲げた勢力は徹底的に弾圧されました。その被害は、逮捕者数10万人、送検された者7万5千人、拷問等による虐殺・獄死は1700人近くに及びます。国家神道が強制され信教の自由を迫害し、教化教育で「お国のために血を流す」ことが無上の美徳とされました。
国家総動員法は「国防目的達成ノ為国ノ全力ヲ最モ有効二発揮セシムル様人的及物的資源ヲ統制運用スル」ものとし、強制徴用はじめ人もモノもすべて戦争最優先に国家が取り上げました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/61/64a092194fb871df9941806ab5e23be9.jpg)
雪の中、プラスターを手に「守ろう9条」「生かそう25条」とアピールする人たち=青森市
■戦前の否定
こうした痛苦の歴史のうえに、9条は成立しました。
9条2項の戦力不保持規定は、日本は二度と侵略戦争をしないというアジア諸国への反省の証です。同時に、一切の戦争を否定しなければ国民の生存に加え「個人の尊厳」と自由は保障されない、「戦争は自由の最大の敵」という立場に立っています。9条は自由の基礎でもあります。
元来、近代立憲主義は、国家主権のもと「国家の自衛権」を前提とするものでした。しかし、国民生活を総犠牲にする長く続く総力戦を経て、国家の武装を否定してこそ「個人の尊厳」を中核とする人権保障が全うされるという発展が生まれたのです。9条2項は立憲主義の強化形態であり、日本国憲法の根本的特長です。
9条は、こうして「戦前の否定」を原点とします。これに対し安倍政権は「戦後レジームからの脱却」として9条を否定するもので、戦前の「復活」を志向するもの。9条否定の安倍政権打倒のたたかいは、まさに立憲主義回復への新しい「市民革命」です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年1月11日付掲載
国民生活を総犠牲にする長く続く総力戦を経て、国家の武装を否定してこそ「個人の尊厳」を中核とする人権保障が全うされるという発展が生まれた。
それが憲法9条であり、憲法13条なのです。