立憲主義考⑤ 条約を超える日米同盟 異常な従属性=主権放棄
昨年4月27日に日米間で合意された新ガイドライン(軍事協力の指針)は、「日米同盟のグローバルな性質」を強調。「アジア太平洋地域及びそれを超えた地域」という文字通りの「地球規模」で、平時から緊急時までの「切れ目のない」軍事協力を約束しました。安倍晋三首相は同30日、米上下両院議会での演説で「必要な法案の成立を夏までに」と「公約」しました。戦争法案が「閣議決定」されたのは、その2週間後の5月14日でした。
■軍事指針法
戦争法案審議中に日本共産党の小池晃参院議員が暴露(8月11日)した自衛隊内部文書は、新ガイドラインと戦争法の関係について「既存の法制で実施可能なものと、…法案の成立を待つ必要があるものがある」と指摘し、詳細に対処項目を示していました。戦争法は新ガイドライン実行のための法律なのです。昨年11月には同ガイドラインに示された、日米統合司令部となる「同盟調整メカニズム」も始動しました。
戦争法による立憲主義破壊の根源に「日米同盟」があります。
日米安保条約6条は、「極東」の平和と安全のために米軍施設・区域の使用を認めるとしています。しかし、新ガイドラインが全世界での日米軍事協力を約束したことは、「条約の範囲」をはるかに超えることは明白です。
条約上の根拠のない政治合意―。ガイドラインには「いずれの政府にも法的権利又は義務を生じさせるものではない」とわざわざ明記されています。ところが、実際には国家運営の最高の指針とされ、憲法9条に反する軍事協力を推進する「根拠」となっているのです。
記者会見で自衛隊内部文書を示す小池晃議員(右)と井上哲士議員=昨年8月11日、国会内
■軍部の独走
小池氏が暴露した内部文書は、法案が審議入りした昨年5月26日に自衛隊主要幹部のビデオ会議での意思統一に使われました。法案成立を前提に、南スーダンPKO(国連平和維持活動)への派兵計画の具体的日程まで示すなど、日米同盟最優先で軍部が独走しています。
「日米安保体制という場合に、日米安保条約及びその関連取り決め並びにこれら以外の安全保障面における日米間の協力に関連するもろもろの取り決め、並びにこれらに基づく協力の実態を総称したもの」。1997年11月13日の参院内閣委員会で高野紀元外務省北米局長はこのように答弁しています。政府はすでに、「日米同盟」が条約より広い概念だと公然と認めています。
条約上の根拠がなく法的義務のない「合意」の実行に血道をあげる異常な従属性11主権放棄という実態に、立憲主義崩壊の底知れぬ淵源(えんげん)があります。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年1月14日付掲載
日米同盟のためと言えば何でも出来るのでしょうか?
それも憲法はおろか、安保条約の枠を超えて広がる。
どこまでアメリカに奉仕すればいいのか?
昨年4月27日に日米間で合意された新ガイドライン(軍事協力の指針)は、「日米同盟のグローバルな性質」を強調。「アジア太平洋地域及びそれを超えた地域」という文字通りの「地球規模」で、平時から緊急時までの「切れ目のない」軍事協力を約束しました。安倍晋三首相は同30日、米上下両院議会での演説で「必要な法案の成立を夏までに」と「公約」しました。戦争法案が「閣議決定」されたのは、その2週間後の5月14日でした。
■軍事指針法
戦争法案審議中に日本共産党の小池晃参院議員が暴露(8月11日)した自衛隊内部文書は、新ガイドラインと戦争法の関係について「既存の法制で実施可能なものと、…法案の成立を待つ必要があるものがある」と指摘し、詳細に対処項目を示していました。戦争法は新ガイドライン実行のための法律なのです。昨年11月には同ガイドラインに示された、日米統合司令部となる「同盟調整メカニズム」も始動しました。
戦争法による立憲主義破壊の根源に「日米同盟」があります。
日米安保条約6条は、「極東」の平和と安全のために米軍施設・区域の使用を認めるとしています。しかし、新ガイドラインが全世界での日米軍事協力を約束したことは、「条約の範囲」をはるかに超えることは明白です。
条約上の根拠のない政治合意―。ガイドラインには「いずれの政府にも法的権利又は義務を生じさせるものではない」とわざわざ明記されています。ところが、実際には国家運営の最高の指針とされ、憲法9条に反する軍事協力を推進する「根拠」となっているのです。
記者会見で自衛隊内部文書を示す小池晃議員(右)と井上哲士議員=昨年8月11日、国会内
■軍部の独走
小池氏が暴露した内部文書は、法案が審議入りした昨年5月26日に自衛隊主要幹部のビデオ会議での意思統一に使われました。法案成立を前提に、南スーダンPKO(国連平和維持活動)への派兵計画の具体的日程まで示すなど、日米同盟最優先で軍部が独走しています。
「日米安保体制という場合に、日米安保条約及びその関連取り決め並びにこれら以外の安全保障面における日米間の協力に関連するもろもろの取り決め、並びにこれらに基づく協力の実態を総称したもの」。1997年11月13日の参院内閣委員会で高野紀元外務省北米局長はこのように答弁しています。政府はすでに、「日米同盟」が条約より広い概念だと公然と認めています。
条約上の根拠がなく法的義務のない「合意」の実行に血道をあげる異常な従属性11主権放棄という実態に、立憲主義崩壊の底知れぬ淵源(えんげん)があります。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年1月14日付掲載
日米同盟のためと言えば何でも出来るのでしょうか?
それも憲法はおろか、安保条約の枠を超えて広がる。
どこまでアメリカに奉仕すればいいのか?