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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

多国籍企業と人権① 条約づくりへ国連動く

2017-05-25 15:26:33 | 国際政治
多国籍企業と人権① 条約づくりへ国連動く

国際社会は今日、企業行動が人権に及ぼす悪影響をますます懸念するようになっています。「企業は社会の一員である」との見地に立って、ビジネス分野における人権尊重の取り組みを強めています。舞台の中心は国連です。
(日本共産党国民運動委員会 筒井晴彦)

国連は2000年代に入ってから、企業に人権尊重を求める国際文書を相次いで採択しています。先駆けとなったのが国連「グローバル・コンパクト」(07年)です。4分野(人権、労働、環境、腐敗防止)において10の原則を定めています。人権にかかわっては、①企業は国際的に宣言されている人権の保護を支持、尊重する②企業はその事業が人権侵害に加担しないよう確保する―と明記しています。



三菱自動車の生産ラインで作業する労働者=4月25日、インドネシア西ジャワ州(ロイター)

企業責任を明記
国連はその後、人権原則順守の取り組みを具体化するために、国連「保護、尊重および救済・ビジネスと人権のための枠組み」(08年)と、国連「ビジネスと人権にかんする指導原則」(11年)を採択しました。二つの文書の柱は次の三つです。①国家は人権侵害を救済する義務がある、②企業は人権を尊重する責任がある、③企業活動によって人権侵害を受けた人の救済措置を拡大する。
国連の取り組みは、他の国際機関に大きな影響を与えています。国際労働機関(ILO)が「多国籍企業および社会政策に関する原則の三者宣言」を改定し、経済協力開発機構(OECD)が「多国籍企業行動指針」を改定しました。いずれも、人権に対する企業の責任を強める方向での改定でした。
国連を含めた国際機関の諸文書は、企業による自発的な人権順守を奨励・促進するものであり、企業を法的に拘束するものではありません。しかし、世界の労働組合とNGO(非政府組織)団体は、これら諸文書を積極的に活用しています。とりわけ労働組合は、人権尊重を求めて、主としてヨーロッパの多国籍企業との間で、次々と「国際枠組み協約」(労働協約)と「欧州枠組み協約」(同)を締結しています。

政府間部会開き
国連の文書づくりに中心的役割を果たしてきたジョン・ラギー国連事務総長特別代表(当時)はその後、拘束力のない自発的な文書では多国籍企業の横暴を規制しきれないと判断し、法的拘束力をもった条約づくりに着手することになります。
そのための第1回政府間作業部会が15年7月に開催されました。多国籍企業本社が集中する「先進国」の多くが条約つくりに反対するなか、条約賛成の論陣をはったのは、85力国を超える発展途上国であり、600を超えるNGO団体(労働組合を含む)でした。NGO団体は「人権原則は国際法とりわけ商業ルールの上位に位置する」と主張し、論戦において積極的役割を果たしました。
ジョン・ラギー氏は「ビジネスと人権にかんする議論を前進させる中心は市民社会である。国家間で分断が生じているとき、NGO団体のリーダーシップが求められる」と話しています。
翌16年10月には、第2回政府間作業部会が開催され、第1回会合に欠席した欧州連合(EU)主要国政府と日本政府が参加しました。米国政府は引き続き欠席です。今年、第3回政府間作業部会が開催されます。
(つづく)(2回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月24日付掲載


多国籍企業に人権を守らせるためには、やはり法的拘束力のある制度が必要。