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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

沖縄復帰45年 自衛隊配備に揺れる宮古・石垣 戦場の島にさせない

2017-05-24 14:45:22 | 平和・憲法・歴史問題について
沖縄復帰45年 自衛隊配備に揺れる宮古・石垣 戦場の島にさせない

本土復帰45年を迎えた沖縄は、もう一つの「基地問題」で揺れています。沖縄本島から数百キロ離れた南西諸島への自衛隊基地建設計画です。旧日本軍の配備が多大な犠牲を招いた沖縄戦の教訓を胸に、住民たちは「戦場の島にはさせない」と訴えます。重大な岐路を迎える宮古島と石垣島を訪ねました。(吉本博美)

2015年5月、防衛省は宮古島に陸上自衛隊の警備・地対空・地対艦ミサイル部隊を約800人配備すると表明しました。尖閣諸島など「島しよ防衛」を口実に、中国を念頭に置いた「南西諸島シフト」の一環です。
「時間がゆっくり流れていて、静かでいいところでしょ。この平和な島に基地と軍隊がやってくる。軍事衝突が起こる前に、日常の景色が変わってしまうことが何よりも怖い」。関東から宮古島に移住し、伝統工芸の仕事に就くAさん。危機感を強め、市民団体「南西諸島ピースネット」の一員として自衛隊配備問題を発信しています。



宮古島の陸自配備予定地(左奥)と空自基地(右)


米海兵隊と自衛隊の「日米共同方面隊指揮所演習」の様子=2016年11月30日

昨年11月30日、在日米海兵隊が公開した「日米共同方面隊指揮所演習」での“戦闘予行”の写真が大きな波紋を呼びました。米兵と自衛隊員に囲まれた指揮官。南西諸島を示した地図を踏みつけながら、宮古島の各所に印を付けて伊良部島を棒で指しています。
「オール沖縄」の伊波洋一参院議員は、中国の軍事的台頭に対抗する米国の「エアシーバトル戦略」が背景にあると分析しています。
「アメリカは中国を軍、事的に潜在的脅威と位置づけており、中国海軍の太平洋への進出を防ぐために、南西諸島に陸自ミサイル部隊を配置することが目的です。日米は頻繁に『離島奪還訓練』を繰り返していますが、住民保護のためじゃない。島全体で住民を巻き込んだゲリラ戦を想定しています」
「止めよう自衛隊配備宮古郡民の会」事務局長の上里清美さん(62)は涙をこぼしながら話しました。「国のあり方が変わるときは水面下から、辺境からです。沖縄の基地問題は辺野古と高江だけではないことを多くの人に知ってほしい。私たちは、いつまで犠牲にならないといけないんですか」



沖縄戦の歴史「軍隊は住民を守らない」
宮古=自衛隊配備「命の水」に危機
宮古島の自衛隊配備候補地は赤字経営のゴルフ場「千代田カントリークラブ」。近隣には最新鋭の巨大レーダーと通信傍受施設を備えた航空自衛隊の宮古分屯基地があります。

二つの基地挟まれ
周辺地区の上野野原の住民は、二つの自衛隊基地に挟まれて生活することになりかねません。すでに空自の大型ヘリの騒音や振動被害が出ており、「陸自基地もできたら出ていくしかない」との声があがっています。
近隣2地区(千代田、上野野原)は反対決議をあげています。当時、上野野原の区長だった塩川鉄矢さん。「当初は、隊庁舎を建てるぐらいだと聞いていました。しかし、区長会で那覇の自衛隊基地を訪れた際には宮古の新基地にヘリポートなども造るといわれて、だまされたと思いました。もう防衛省は信用できない」

環境評価を行わず
土壌・水質汚染の懸念もあります。宮古島はサンゴが浄化した地下水が唯一の水源です。地下水ダムは島の全体でつながっており、住民の「命の水」が汚される危険があります。しかし、防衛省は環境アセスメントすら行っていません。
宮古島市役所前では毎週水曜日午後5時から世代や立場を超えてスタンディング行動が行われています。参加者の一人、医師の岸本邦弘さん(55)は訴えます。「基地ができればここは軍事目標になる。壊れた環境は二度と戻らない。命を守る医者として自衛隊配備計画に反対します」



石垣=友好・共存考える国境の島
石垣の配備予定候補地は、中心部の平得大俣(ひらえおおまた)にある於茂登(おもと)岳のふもとです。防衛省は宮古島市に加え、石垣市に約600人の陸上自衛隊部隊を配備する計画を提示しました。現在、石垣には自衛隊・米軍を含め軍事基地は一切ありません。
宮古・石垣に配備予定のミサイルは、車両に搭載できる12式地対艦誘導弾と03式中距離地対空誘導弾。発射と移動をくりかえす戦術をとるため、住民が巻き添えになる危険があります。「有事」の際の避難計画は策定されていません。
戦争体験者の八重洋一郎さん(75)は、「小さな島で戦争が起これば住民は取り残されるしかない。軍隊は住民を守らないことは沖縄戦で証明された。なぜ歴史から学ばないのか」と怒りで声を震わせます。



石垣島の陸自配備予定地の於茂登岳



住民意思関係なし
「防衛省側はこれまでほとんど住民説明会を開いていません。防衛省からは『地域の民意は関係ない』とはっきり言われました」
近隣の開南、嵩田(たけだ)、於茂登、川原の4地区は反対決議を上げています。川原公民館長の具志堅正さん(55)は憤ります。4月14日の朝8時、具志堅さんは沖縄防衛局から用地調査に入るとの電話を受けました。「突然でした。時間帯を聞くと、まだ決まっていないと。でももうその時点で調査は終わってたんです。住民をどこまでばかにしているのか」
パイナップル農家の上原政一さん(67)。「基地配備は農業を阻害します。推進派の現職市長は『自衛隊がくれば地元に恩恵がくる』というが、第1次産業を振興すれば環境も雇用も平和も守られる。こういうことを考えるのが政治じゃないのか」



石垣島への陸自自衛隊配備に反対する上原秀政さん

移民とともに振興
中国・台湾との「国境の島」とも呼ばれる石垣島。配備推進派は、中国脅威論と尖閣諸島問題をもちだして、自衛隊基地の必要性を訴えています。一方、漁業組合の役員は「中国との衝突はほとんどありません。石垣から尖閣までは船で7時間はかかる。日中両国の警察が毎日監視する中で、普通は誰も行きませんよ」と証言します。
石垣は沖縄本島と台湾、中国本土からの移民の島。皆が共存したおかげで振興したー。地元民が共通して語る島の歴史です。
「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」の共同代表で、医師の上原秀政さん(63)は、「保守の人間ですが、この問題は党派を超えて取り組まなければ止められない」と強調しました。
隣国とどう付き合うか。
「石垣は豊かな自然環境をもつ生物多様性の島です。アジアからフィールドワークで来る学者や研究機関もあります。例えば、各国とそうした学術交流を増やす。武力ではなく外交。平和友好の共存を考えていきたい」

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月23日付掲載


沖縄戦の歴史「軍隊は住民を守らない」
国境の島だから、防衛の前線基地にするって発想は古い。対話と友好の島へ。
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