憲法施行70年 先駆性を考える 第2部 基本的人権掲げて⑭ 内心の自由への挑戦
戦争法体制支える共謀罪
国民の思想・内心を処罰する「共謀罪」法案が衆院法務委員会で審議される中、米ネットメディア「インターセプト」が、日米が協力して秘密裏に行ってきた情報収集活動の一端を暴露しました。
地球規模であらゆる情報を傍受・監視している米国家安全保障局(NSA)が、財政支援などの見返りに、インターネット上の情報を大量収集できる監視システムを日本に提供していたというのです。

共謀罪法案に反対する研究団体・法律家団体の記者会見=4月13日、国会内
収集した情報を米国側に提供か
村井敏邦一橋大学名誉教授(刑法)は「安倍首相が過去に3度も廃案になった『共謀罪』法案を押し通そうとするのは、米国と何らかの約束があるからかもしれません。盗聴やスパイ、密告によって収集した情報を米側に提供する仕組みができている可能性がある」と指摘します。
村井氏は、「共謀罪」の本質を見抜くためには、戦前の治安維持法による思想弾圧と人権侵害の上に侵略戦争への道を開いた歴史を直視する必要があると言います。
憲法は、21条の表現の自由、23条の学問の自由、20条の信教の自由のほかに、19条で思想・良心の自由を規定しています。ここには、国民の内心を弾圧・統制した戦前への反省が反映しています。さらに31条から40条まで、諸外国にも類を見ないほど詳細な刑事手続きを保障しています。
この憲法のもとで、刑法は、国民の自由な行動を保障するため、内心を処罰しないことを大原則としています。約300にも上る犯罪について「共謀罪」をつくることは、国民の内心領域を国家が統制することにつながるもので、刑法原則の大転換です。
安倍首相は「共謀罪」を制定する口実に「テロ対策」を言い立てます。
これに対して、村井氏は「共謀罪でテロはなくならないし、防げない。NSAはテロリストを追跡するため膨大な情報を収集していますが、米国の"テロとのたたかい〟、暴力の連鎖は果てなく続いています。政治や経済など土壌にある問題の解決なしに、テロがなくなることはない」と反論します。
一方、安倍首相は、北朝鮮への圧力として、米原子力空母カール・ビンソンと海上自衛隊護衛艦による共同訓練を行いました。戦争状態につながりかねず、憲法9条を実質的に破壊する危険をはらむ事態です。さらに海自のヘリ空母に「米艦防護」を命じ、北朝鮮情勢を口実に戦争法を発動しています。
日米同盟のもと軍事化を下支え
村井氏は警告します。
「共謀罪は、日米同盟のもとで日本の軍事化を進める下支えとして設けられようとしています。軍国主義が強まれば公益や秩序が優先され、自由と人権が保障されなくなってしまう。9条に反し、戦争体制をつくる動きを阻止するため警鐘を鳴らし続けなければいけない」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月4日付掲載
「共謀罪」ができれば、内心を調べるために、メールやSNSなどもしらみつぶしに調べられる。
それを米軍に提供されるかもって許されない。
戦争法体制支える共謀罪
国民の思想・内心を処罰する「共謀罪」法案が衆院法務委員会で審議される中、米ネットメディア「インターセプト」が、日米が協力して秘密裏に行ってきた情報収集活動の一端を暴露しました。
地球規模であらゆる情報を傍受・監視している米国家安全保障局(NSA)が、財政支援などの見返りに、インターネット上の情報を大量収集できる監視システムを日本に提供していたというのです。

共謀罪法案に反対する研究団体・法律家団体の記者会見=4月13日、国会内
収集した情報を米国側に提供か
村井敏邦一橋大学名誉教授(刑法)は「安倍首相が過去に3度も廃案になった『共謀罪』法案を押し通そうとするのは、米国と何らかの約束があるからかもしれません。盗聴やスパイ、密告によって収集した情報を米側に提供する仕組みができている可能性がある」と指摘します。
村井氏は、「共謀罪」の本質を見抜くためには、戦前の治安維持法による思想弾圧と人権侵害の上に侵略戦争への道を開いた歴史を直視する必要があると言います。
憲法は、21条の表現の自由、23条の学問の自由、20条の信教の自由のほかに、19条で思想・良心の自由を規定しています。ここには、国民の内心を弾圧・統制した戦前への反省が反映しています。さらに31条から40条まで、諸外国にも類を見ないほど詳細な刑事手続きを保障しています。
この憲法のもとで、刑法は、国民の自由な行動を保障するため、内心を処罰しないことを大原則としています。約300にも上る犯罪について「共謀罪」をつくることは、国民の内心領域を国家が統制することにつながるもので、刑法原則の大転換です。
安倍首相は「共謀罪」を制定する口実に「テロ対策」を言い立てます。
これに対して、村井氏は「共謀罪でテロはなくならないし、防げない。NSAはテロリストを追跡するため膨大な情報を収集していますが、米国の"テロとのたたかい〟、暴力の連鎖は果てなく続いています。政治や経済など土壌にある問題の解決なしに、テロがなくなることはない」と反論します。
一方、安倍首相は、北朝鮮への圧力として、米原子力空母カール・ビンソンと海上自衛隊護衛艦による共同訓練を行いました。戦争状態につながりかねず、憲法9条を実質的に破壊する危険をはらむ事態です。さらに海自のヘリ空母に「米艦防護」を命じ、北朝鮮情勢を口実に戦争法を発動しています。
日米同盟のもと軍事化を下支え
村井氏は警告します。
「共謀罪は、日米同盟のもとで日本の軍事化を進める下支えとして設けられようとしています。軍国主義が強まれば公益や秩序が優先され、自由と人権が保障されなくなってしまう。9条に反し、戦争体制をつくる動きを阻止するため警鐘を鳴らし続けなければいけない」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月4日付掲載
「共謀罪」ができれば、内心を調べるために、メールやSNSなどもしらみつぶしに調べられる。
それを米軍に提供されるかもって許されない。