きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「パナマ文書」の衝撃① 大銀行と一体の税逃れ

2016-04-24 13:44:50 | 予算・税金・消費税・社会保障など
「パナマ文書」の衝撃① 大銀行と一体の税逃れ

タックスヘイブン(租税回避地)に関する秘密ファイル「パナマ文書」が多国籍企業による税逃れの一端を暴いています。これまでに何が明らかになったか、タックスヘイブン問題を追及している政治経済研究所理事の合田寛(ごうだ・ひろし)さんに聞きました。
(聞き手山田俊英)

政治経済研究所理事 合田寛さんに聞く

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)はこれまでも何回かタックスヘイブンについて暴露してきましたが、「パナマ文書」は分量、内容とも桁違いです。モサック・フォンセカという法律事務所が主役です。法律事務所が単独でペーパーカンパニーをつくったというのではなく、巨大銀行などと一体となって税逃れの仕組みをつくり出していることが明らかになりました。
多くの国の現旧首脳の関与が注目されています。アイスランドで首相が辞任し、英国のキャメロン首相は窮地に追い込まれています。しかし問題はそれだけではありません。政治家や企業、富裕層による脱税だけでなく、犯罪資金の洗浄やテロ資金の通り道にもなっていたのです。全体の構図に目を向ける必要があります。



モサック・フォンセカ法律事務所が入居するビル=4月5日、パナマ市(ロイター)

国際的ネット
文書全体は今後公表されますが、今まで出てきた事実だけでも、多国籍企業や富裕層による税逃れの構造を明らかにしています。モサック・フォンセカがペーパーカンパニーを顧客に提供する。会社所有者の名前を適当に与える。名目社長、名目株主なども与える。タックスヘイブンの法律事務所が顧客の素性をまったく隠す役割を果たしていました。しかもロンドンに本拠を置くHSBC、スイスのUBSを含め、多くのメガバンクが関与して税逃れの国際的ネットワークが形成されていたーその一端が明るみに出ました。
キャメロン首相はかねてタックスヘイブンの弊害を口にしていました。タックスヘイブンは英国の旧植民地に多く、英国がその気になればかなり退治できます。問題になっているパナマなどは出先であって、タックスヘイブンの大本はロンドンの金融街シティーや米国です。パナマだけをたたいても、もぐらたたきで、何の解決にもなりません。
モサック・フォンセカは氷山の一角です。同じような法律事務所は世界にたくさんあります。モサック・フォンセカは21のタックスヘイブンにペーパーカンパニーをつくっています。そういう重層的なネットワークを持っているのです。各国の税務当局が調べようにも、ペーパーカンパニーの実体は匿名なので調べようがありません。

意図的で違法
タックスヘイブンを使って税逃れをしている者たちは、違法ではないと言いますが、やっていることは意図的な租税回避です。法の抜け穴を利用しています。広い意味では違法です。
タックスヘイブン問題に取り組んでいる経済協力開発機構(OECD)がまとめた「税源浸食と利益移転」(BEPS)対策の考え方は経済活動が行われた所で課税するというものです。経済の実体がないタックスヘイブンに利益を移して課税を逃れるのは完全にBEPS対策の精神に反しています。
欧州には一般的反租税回避ルールがすでに法律に取り入れられています。故意に税逃れのために行った経済取引は否認するという考えです。日本にはその考え方がまったくなく、法律を狭くとらえて法律の条文に反していなければ課税できないという考え方です。日本でも意図的な税逃れは違法だということを明確にしなければなりません。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月22日付掲載


「経済活動が行われた所で課税する」という原則で、課税されなければなりません。
そうでなければ、税収の空洞化につながります。
それにしても、「タックスヘイブン」の提供をビジネスにしてるってひどいものです。




「自己責任」論脱し 新しい可能性

2016-04-23 21:50:56 | 政治・社会問題について
「自己責任」論脱し 新しい可能性

戦争法廃止をはじめ、待機児童の解消、奨学金問題の改善、最低賃金1500円の実現など、国民・市民が声をあげ、政治を大きく動かしつつあります。かつてまん延した「自己責任」論との対比も含めて、新たな国民のたたかいの意義について、神戸女学院大学の石川康宏教授に聞きました。(聞き手行沢寛史)


神戸女学院大学教授 石川康宏さん
いしかわ・やすひろ 1957年札幌市生まれ。京都大学大学院博士課程修了後、現職。著書に『社会のしくみのかじり方』(新日本出版社)など多数


権利の保障 攻勢的に迫る

―新たな広がりをみせる市民の運動の特徴をどう見ていますか。
戦争法反対から始まった「市民革命的」なたたかいが、国民の基本的人権の保障にまで運動の幅を広げています。「戦争か平和か」を入り口とした立憲主義の回復・実現という要求が、憲法の全面的な実施に広がりつつあると見ています。日本史上画期的なことです。

根本問題見抜く
「保育園落ちた日本死ね」というブログをきっかけに「保育園落ちたの私だ」という行動が瞬く間に広がりました。いまや「学生ローン」となった奨学金制度の改善を求める学生らの声が各地で上がり、最低賃金1500円を求める運動も発展しています。
これらは現実の深刻さに余儀なくされた怒りの表出だけでなく、憲法で保障された権利の実現を国に求める国民の主権者意識の高まりをもつという特徴をもっています。
「主権者はわれわれだ」という声は、個々の政策の妥当性だけでなく、政策づくりのプロセスを問題にしています。
昨年末に発足した「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)は、安全保障関連法(戦争法)の廃止、立憲主義の回復に加えて、個人の尊厳を擁護する政治の実現を課題に掲げました。
憲法は個人の尊厳を守る国家の役割として、国民の「~する自由/されない自由」(自由権)だけでなく、生活の最低保障を国家に求める権利(社会権)を定めています。
たとえば憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活」を送る権利が「すべての国民」にあるとして、「すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」義務が「国」にあるとします。26条は国民の「教育を受ける権利」を国家が保障する。27条は「勤労の権利、義務」にくわえて「勤労条件の法定化」、つまり人たるに値する労働条件を国家が守ることを明らかにしています。日本国憲法における社会権の核心です。
しかし、日本社会の実態はこれとかけ離れています。個人の尊厳を守る責任を負った政府がそれを放棄し、問題を国民の「自己責任」に解消する姿勢をもっているからです。いま急速に広がっている市民の運動は、ここに最大の問題があることを見抜いています。問題の根本を見抜く目を深めさせるところに、立憲主義を守れという運動の格別に大きな意義があると思います。



「保育園落ちたの私だ」と抗議する人たち=3月5日、国会正門前

人権の内容学ぶ
―社会権を国民生活の各分野で実現するうえで、どんな課題があるでしょうか。
戦争法をめぐって9条の内容や意義が広く学ばれたように、国家が国民に保障する基本的人権の内容を深く学ぶことが必要です。
18世紀に生まれた近代憲法は、多くの自由を国民に保障しました。それが「人権」の歴史上最初の姿です。しかし、人びとはそれだけで十分な幸福を得ることはできませんでした。経済活動や雇用の自由は、多くの労働者に貧困にあえぐ自由をもたらし、そこで19世紀には、資本主義の修正や資本主義からの脱却を求める労働者運動が発展します。
社会権の実現をはじめて宣言したのも労働者たちの取り組みでした。1871年のパリ・コミューンです。「労働者は自由だけでは食えない」「最低限の生活と教育を保障する国家をつくろう」という宣言が行われます。その後、1919年にはワイマール共和国が、これをはじめて憲法に明記します。生存権と教育権、労働権。日本国憲法と基本的には変わらない内容です。20世紀後半には、これらが世界に広まります。
しかし、社会権を自らの運動で勝ち取ったヨーロッパと、そのための国民的な運動を経験しなかった日本では、権利を実現する市民の力量に格差がありました。その差が社会保障の水準、学費や奨学金を含む教育の保障、労働時間や賃金・休暇をふくむ労働条件の保障における両者の格差を生んでいます。
日本の政府や財界が90年代から「勝ち組・負け組」論や「自己責任」論の大キャンペーンを開始した時に、「社会権を忘れるな」「国家には国民の生活を守る義務がある」と正面からの反撃がただちに広がらなかったのは、権利としての生活・教育・労働保障に対する国民の理解が不十分だったからです。
立憲主義の回復を求める現在の運動は、その制約を超える歴史的な意義をもっていると思います。それは憲法を楯に悪政から生活を守るという受動的な運動ではなく、憲法の本格的で全面的な実施をめざす攻勢的な社会改革、社会建設の運動の端緒となっています。そこに「市民革命的」
といわれることの根本的な理由があると思っています。

攻守ところ代え
―一方で、自民党から、待機児童の解消を求める声に“行政の責任をいう前に産んだあなたの責任はどうなのか”という暴言がでてきました。
70年代までは「憲法をくらしの中にいかそう」という運動が日本社会の一定の改良を進めました。それが80年代に逆転し、90年前後からの「構造改革」路線が社会権保障制度の本格的な破壊を進めます。今日の待機児童問題や高学費・奨学金問題、ブラック企業・バイトのまん延はこうした自民党政治自身の産物です。
「待機児童がいるのは最初からわかっていたこと」「奨学金を借りたら返すのは当たり前」という新手のバッシングは、これまでの公務員や生活保護などへのバッシングが、政府や財界、メディアによる「自己責任」論まん延に向けた先制攻撃であったのに対し、国民生活を守る国家責任の放棄を見抜かれたことへの受動的な焦りの反撃でしかありません。攻守はところを代えています。
もはや「自己責任」を繰り返しさえすれば国民・市民の運動を封じることができるという状況ではありません。
「立憲主義を守れ」「アベ政治を許さない」というスローガンは、平和主義の堅持を核心にすえながら、そこにとどまらず、さらに憲法の全面的な実施に向けた取り組みを進めさせるものへと内実を広め、深めています。大きな進歩を勝ち取りたいですね。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月22日付掲載


「保育園落ちた日本死ね」というブログをきっかけに…。
最低賃金1500円を求める運動も。
憲法の全面的な実施に向けた取り組みを進めさせるものへと内実を広め、深めています。


2016年米大統領選 バニー・サンダース氏が語る「民主的社会主義」

2016-04-21 11:41:40 | 国際政治
2016年米大統領選 バニー・サンダース氏が語る「民主的社会主義」

巨大な富と所得の不平等と権力構造がある
富裕層だけでなく全ての人に役に立つ経済を


米大統領選挙の候補指名争いは大詰めに近づいています。19日にはニューヨーク州などで予備選挙が実施されます。民主党の予備選挙・党員投票では、バーニー・サンダース氏がヒラリー・クリントン氏と指名を争っています。みずからを「民主的社会主義者」と称しているサンダース氏。「民主的社会主義」をテーマにしたワシントンのジョージタウン大学での演説(昨年11月19日)の大要を紹介します。



労働組合の応援を受けて、演説するサンダース上院議員=4月13日、ニューヨーク(ロイター)

大恐慌の真っただ中の1937年1月の就任演説で、フランクリン・ルーズベルト大統領は米国を見渡し、目にしたものを語った。
数千万の市民が基礎的な生活必需品を手に入れられていない。
数百万の家族が、あまりに不十分な収入で生活しようとして、日ごとに家族の破滅という暗い影に覆われている。
数百万の人々に教育や余暇がなく、自分たちや子どもたちがよりよい状態に向かうことを否定されている。
国民の3分の1が劣悪な衣食住環境にある。
ルーズベルトは行動した。自身が経済反動主義と呼んだ当時の支配階級による激しい反対にもかかわらず、数百万人を職場にもどし、貧困から救い、政府への信頼を確立した。
それが今日、われわれのやらねばならないことだ。
一方、ルーズベルトが提案したことのほとんどが「社会主義的」と呼ばれた。社会保障年金はこの国の高齢者の生活を変えたが、「社会主義的」だった。「最低賃金」という概念は市場への過激な介入とみなされ、「社会主義的」と称された。失業保険や児童労働の廃止、週40時間労働、団体交渉、強力な金融規制、預金保証、数百万人を働かせる就労事業、これらはすべて何らかの上で「社会主義的」と称された。しかしこうした事業は米国を形作るものとなり、中産階級の基礎となった。

支配階級に挑み打破する運動を
2015年の今、08年のウォール街の暴落がこの国を大恐慌以来最悪の経済不況に陥れたにもかかわらず、米国民が1937年よりも経済的に潤っていることは明らかだ。
しかし、非常に深刻な事実を私たちは認識し、それに対処せねばならない。技術や生産性が大規模に拡大したにもかかわらず、米国経済や世界経済が大幅に成長しているにもかかわらず、数千万の米国の家族は引き続き、基本的な生活必需品が不足し、数百万人が最低限の生活水準を家族に提供しようと毎日、苦労している。現実は、過去40年間に米国の偉大な中産階級は没落し、政治制度への信頼は今や極めて低い。
米国を本気で変えようと思うなら、政治運動を生み出す必要がある。私たちの国を破壊する負欲さを備えた支配階級に挑み、打ち負かす覚悟のある運動だ。
今日、米国は世界史上最も裕福な国だが、ほとんどの国民はそのことを知らない。新たに生み出される所得や富のほとんどが、トップにいる人たちのところに行くからだ。事実、過去30年間に巨大な富の移転があった。数兆ドルという富が中産階級から上位1%のさらに10分の1の人に移った。
今日、米国では、数百万の国民が二つないし三つの仕事をかけもちしてようやく生活ができている。米国の中産階級が信じられないほど勤勉に長時間働いているのに、今日新たに生み出される総所得の58%が上位1%のものになっている。
今日、米国では、2900万人の国民に健康保険がなく、さらに多くの人が一部保険をかけているが、掛け金と自己負担額は驚くほど高い。
肝心なことは、今日、米国には巨大な富と所得の不平等だけでなく、その不平等を維持する権力構造があるということだ。一握りのずば抜けて裕福な政治献金者には政治プロセスに対する大きな影響力がある。彼らのロビイストが議会で起きることのほとんどを決定している。
家族を食べさせられないなら、人は本当に自由ではない。
尊厳をもって退職できないなら、人は本当に自由ではない。
失業していたり、十分に給与が支払われなかったり、長時間労働で疲弊したりするなら、人は本当に自由ではない。
医療が受けられないなら、人は本当に自由ではない。

医療と公教育は全ての人の権利
民主的社会主義が意味するのは、私たちは富裕者だけではなく、全ての人の役に立つ経済を生み出さねばならないということだ。
民主的社会主義が意味するのは、全体として不公平なだけでなく、多くの面で腐敗している今日の米国の政治制度を改革せねばならないということだ。
私の考えでは、ウォール街や億万長者、大企業だけでなく、労働者世帯のために民主的社会主義を実現すべき時だ。労働者が雇用を失う一方で企業の利潤が拡大するような通商政策を実施したりすべきではない。
医療は特権ではなくすべての人の権利であるべきだ。これは過激な考え方ではない。他の主要国のどこにでもある。
民主的社会主義とは、公教育はこの国の全ての人、その能力と資格、希望のある人に、公立大学に無償で通う権利を認めることだ。
民主的社会主義とは、週40時間働く人が貧困な生活をしてはならないということだ。今後数年で最低賃金を生活できる賃金、時給15ドルに引き上げねばならない。
民主的社会主義とは、化石燃料産業の負欲さや不当な利益を許さず、環境や地球を破壊させないという政策である。
主要な企業が自分たちの利益をケイマン諸島など海外の租税回避地に隠し、毎年1000億ドルの税金の支払いを逃れているのは許せない。ヘッジファンド経営者が看護師やトラック運転手よりも低い実効税率で税金を支払っているのは許せない。
次に私が社会主義者だと攻撃されるのを聞いたら、以下のことを思い出してほしい。
私は政府が生産手段を所有すべきだとは考えていないが、米国の富を生み出す中産階級と労働者世帯には相応の配分があってしかるべきだ。
私は雇用を海外に移出し、利益を上げるのではなく、米国内で努力し、投資し、成長するような私企業を信じる。
私が大統領に立候補しているのは、自分の番だからではない。一部の人でも少数の人でもなく、全ての人に希望とチャンスがある国に住む私たちすべての番だからだ。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月19日付掲載


大恐慌の真っただ中の1937年1月、フランクリン・ルーズベルト大統領の就任演説を想起。
バニー・サンダース氏の言う「民主的社会主義」は、特別なものではなく、いわゆる所得の再分配。
欧州では当たり前の社会保障や教育予算の事だ。

韓国総選挙 変革求める人々(下) 青年の一票 政治動かす

2016-04-20 15:28:42 | 国際政治
韓国総選挙 変革求める人々(下) 青年の一票 政治動かす

「私の一票が効いてよかった」(22歳女子大生)「青年が変わったから、与党が敗北した」(24歳女性)―。選挙後、こんな声が青年たちから聞かれました。

政府・与党に反感
韓国メディアによると、今回20代の投票率は49・4%で、30代は49・5。全体の投票率58%よりは低いものの、それぞれ2012年の総選挙を4・4ポイント、7・7ポイント上回りました。
ソウルに住む多くの青年が、小選挙区で野党第1党の「共に民主党」に、比例は「国民の党」に入れたとも伝えられており、議席数で与野党を逆転させる力になりました。
韓国青年ユニオンの鄭俊永(チョン・ジュンヨン)政策局長(28)は投票率が上がった要因として、「人命より利益を優先したセウォル号沈没事故への対応や国定教科書の押しつけ、就職難や家賃の高騰など、悪政をつづけたために政府と与党は反感を買った」「『国民の党』の出現で、二大政党に入れたくないと棄権してきた人も投票行動に出たのではないか」と分析します。
「国民のみなさんが落胆していたほど、青年はあきらめていません。セヌリ党は前回の公約より後退した政策を出した。労働問題や生活に基づく公約を破ったり、後退させたりすると、どういう評価を受けるのか身にしみたと思う」と語ります。



韓国青年ユニオンの鄭俊永政策局長(栗原千鶴撮影)


「総選挙青年ネットワーク」が企画した投票を呼び掛ける行動(同ネットワークのフェイスブックから)


ソウル労働権益センターの金星煕所長(栗原千鶴撮影)

青年雇用の悪化
韓国での青年失業率(15~29歳)は今年2月、過去最悪の12・5%を記録しました。ソウル労働権益センターの金星煕(キム・ソンヒ)所長(53)は、「潜在的な若者の失業率として37%まで把握できると考えている」といいます。統計の取り方としてアルバイトや派遣社員は含まれていないためです。
金所長は、仁川国際空港を例に挙げて話します。「シャトルバスの運転や機内清掃など、空港で働く87・3%の労働者が非正規職です。パイロットなどを除いて、目に見えている労働者はすべて非正規職です」
同センターは、こうした非正規職が労働人口の約45%を占め、850万人に上るとみています。その数は増加傾向だといいます。
若者たちは就職ができない、就職ができても上司からのいじめや性差別などにも苦しんでいます。青年ユニオンに寄せられる労働相談件数は増加傾向だと鄭さんはいいます。
今回の選挙で、青年ユニオンをはじめ、学生自治会など約20の青年団体が「総選挙青年ネットワーク」を結成しました。労働分野や生活問題に関して各党政策を比較する資料を提供したり、街頭で投票を促したりする活動を展開しました。
鄭さんはいいます。
「今回の選挙で、青年のネットワークが発展しました。今後の選挙でも手を結んで運動ができる契機になったと思います。来年の大統領選挙でも、若者の声を反映できるように頑張りたい」(ソウル=栗原千鶴)(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月19日付掲載


「青年が動くとき、すでに光あり」と、よく言われるもの。
日本でも、安保法制に反対して、シールズやママの会などが立ち上がっています。
韓国と日本の青年も連帯したいものですね。


韓国総選挙 変革求める人々(中) 地域主義から新時代

2016-04-19 19:48:21 | 国際政治
韓国総選挙 変革求める人々(中) 地域主義から新時代

韓国は、選挙で地域主義が色濃く表れます。ところが今回の総選挙では、これまで保守一色だった南東部の慶尚道で、野党「共に民主党」が議席を獲得。政界に衝撃を与えました。
「慶尚道は、保守以外の政党は受け付けないという雰囲気がありましたが、今回の選挙で感じたのは、変化を望む声の強さです」
こう話すのは、李南信(イ・ナムシン)さん(51)です。慶尚北道慶州市から無所属で立候補した人権弁護士、権英国(クォン・ヨングク)氏の選挙対策本部責任者を務めました。
「大統領の一方的なやり方にあきれていた人、生活苦を訴える人、選挙自体を拒否する反応もあった。そんな中で権弁護士は、与党が打ち出せない偏差値重視の学校運営の改善や脱原発、非正規雇用問題の解決などを訴えました」



李南信さん

変化生む契機に
地域住民に話し合いを呼び掛けると、若者や学校に子どもを通わせる親の世代が集まってきました。「民心が揺れていると感じた」といいます。
若者、女性、都心部で票を集め、得票率は約16%。「議席獲得には届きませんでしたが、与党が十数年議席を独占してきた地域で、変化を生み出す契機にはなったのではないか」と語ります。
一方、「共に民主党」の地盤、南西部の湖南地域(光州市、全羅道)でも変化が起きました。同党は光州出身の金大中(キム・デジュン)、廬武鉉(ノ・ムヒョン)両元大統領が発展させた「民主党」の流れをくむ政党で、つねに議席を確保してきました。
しかし今回、同地域で第1党となったのは「国民の党」です。「共に民主党」を離党した議員らが結成した同党が、28議席中23議席を獲得。与党セヌリ党も2議席を獲得し、「共に民主党」は3議席にとどまりました。
この間、地元では党をまとめきれず、分裂状態になったことなどに批判があがっていました。
慶北大学法学部の金昌禄(キム・チャンロク)教授(55)は「野党第1党に対する警告だ」と分析します。国民の党についても「湖南以外の小選挙区では2議席の確保に終わった。与党も野党も全羅道の意志をどう受け止め、どのような政治をしていくのか、国民は見守っている」と強調します。



選挙期間中の10日、ソウル市内で「国民の党」が行った街頭宣伝



地域対立に亀裂
今回の選挙で、1987年の民主化以来続く“保守の慶尚道”と“進歩の全羅道”という「地域対立に亀裂が生じた」と金教授は指摘します。
「時代の変化を感じさせる事態です。その変化を生んだのが20代、30代であるという分析がある。今回の選挙で一番重要なのは、積極的に政治参加するという国民の躍動性が復活し、若い世代の政治意識が成長し、国民の手で政治が変えられるという確信を得たことだといえるでしょう」(ソウル=栗原千鶴写真も)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月18日付掲載


韓国でも、保守の地域、革新の地域に関係なく悪政にに対しては批判の声があがり、投票行動に結びついている。
日本でも軌を一にして、野党の共闘が始まっている。