尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「神戸」を映画で考える

2012年01月17日 23時58分09秒 | 映画 (新作日本映画)
 東京・大森に「キネカ大森」という映画館があって、3スクリーンがあるうちの一つで昨年から「名画座」を始めた。(2本立てで様々な映画を上映する。)そこで今、「劇場版・その街のこども」と「実写版・火垂るの墓」を上映中。金曜まで。

 これは、阪神淡路大震災と神戸大空襲を描いた映画の組み合わせで、一本だけなら見なかったかもしれないけど、2本重なると見たくなり今日行ってきた。企画の勝利。もちろん、阪神淡路大震災に合わせての企画だろう。

 「劇場版・その街のこども」は、2010年、大震災から15年たった神戸の夜の街を歩く二人の若者を追う映画。それは俳優が演じていて、森山未來佐藤江梨子が偶然神戸で出会って、朝の公園での追悼行事に向けて歩く。森山未來は実際に大震災を経験していて、その体験なども織り込まれているという。森山の演じる男は、震災時は小学4年生。その後、東京に出て神戸は15年ぶり。佐藤の演じる女は、震災時は中学1年生。3年生までいて東京に出た。13年ぶり。親友を地震で亡くして、一度追悼に来たいと思いつつ、今まで来ることができなかった。と言う設定で、夜中歩き回る中で、二人の思いが交錯し、理解したり反発したり。当時の風景も出てくる。風景を見ると「復興」しているように見えるが、神戸を離れた人の中の心にまだ傷が残り続けている。2010年にテレビで作られたものを劇場用に再編集したもの。「3.11」前に作られているので、現在見ると、その点を見た側で補足して見ることになる。

 「火垂るの墓」は、野坂昭如の直木賞受賞作品で高畑勲のすぐれたアニメ版があるが、これは日向寺太郎監督の実写版。母親を松田聖子、親戚の女性を松坂恵子、神戸と西宮の町内会長を原田芳雄、長門裕之が「ちょい役」で出演するなど、なかなか大物が出ている。しかし、主役の中学生の男子と妹は知らない。「その街のこども」はオール・ロケだが、有名俳優が演じていることへの意識が抜けない。一方この作品は、主役の兄妹を知らないので、かなり同化して見られる。空襲終了後から始まるので、空襲そのものは出てこない。その後の人間関係の方が中心的に描かれている。静かな映画だったが、戦争と人間をじっくり描いて感銘深い。

 一度に大量の人名が失われるという出来事は、日本では戦争と震災だということを改めて考えさせられた。一人死んでも重大だけど、やはり「大量死」という問題は現代を生きるときに抜かせられない。「核時代」の本質に関することだから。まさに、1月17日に見た映画の記録
コメント
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